カレの謎に迫る
斗花
第1話
私が働くファミレスにはイケメンで優しい、一つ年上の先輩がいます。
「そらー!これ、三番に持ってってー」
「はーい」
彼の名前は
その名前の通り爽やかな笑顔と、その笑顔からは考えにくい色っぽい声がなんとも魅力的なのです。
「……おい、ウメ。
ボーッとしてないで、真面目に働け」
私の後ろにいた颯太さんがそう言いながら膝裏をける。
「な、なにするんですか?!」
「空に見とれてるお前が悪い」
颯太さんは何かと意地悪です。
「こら、そうちゃん。
あまり九条さんイジめないの」
そう言って清田さんが私を庇ってくれた。
「黙れ、がり勉。
こっちはヤニ切れてイライラしてんだ」
「それ完全に八つ当たりじゃん」
そして清田さんは優しく笑いかける。
「空のこと見たって何も進展なんてないから、真面目に働こうね」
……清田さんは天然で人を傷付けます。
一番、悲しいタイプ。
「おい、ギン。進展ないってそんな、ハッキリ言ってやんなよ」
「あ、そうか、ごめん九条さん」
二人の言葉を適当に無視して、私は仕事に戻る。
そして空さんにはいくつか謎があるのです。
例えば。
「お疲れ様でしたー」
「おー、お疲れー。あ、なぁ、空。
俺とギン、これからラーメン食いに行くんだけどお前も一緒に行かね?」
颯太さんの誘いに少し悩み手を合わせる空さん。
「ごめん、そうちゃん。
俺、これからちょっと買い物があってさ」
「買い物?どこに?」
「ドレス屋」
私はその言葉に思わず顔を上げた。
しかし、颯太さんも清田さんもあぁー、と納得してる。
「そっかぁ。お前も相変わらず大変だな。じゃ、ギン、行くか」
「うん。空、頑張ってね」
空さんはこんな感じで意味不明な買い物が多い。
この間だって箱に入ったハイヒール、店に持ってきてたし。
またあるときは。
「ねぇ、そうちゃん。
申し訳ないんだけどさ、そうちゃんのバイク貸してくれない?」
「なんで?」
「いや……、急いで迎えに行かないとキレられるからさ」
颯太さんはいつもならそんなお願い許さないのに。
「良いよ、良いよ!乗れ、乗れ!」
大歓迎で貸し出した。
「ホントごめん!」
「良いんだって!気にすんなよ!」
迎えに行くって、しかもそんな時間厳守って、一体なんなのだろうか。
他にも春先には女子の制服をクリーニングに出したり、スーパーの特売チエックしたり、清田さんに家庭教師頼んだり、正直意味不明。
「あの、颯太さん、」
私は空さんの持ってきたビニールからはみ出す新品の上履き袋を見て勇気を出して聞く。
「空さんって、何者なんですか?」
すると颯太さんはタバコを消して真剣な顔をする。
「知りたいか?」
「はい」
その神妙な面持ちに胸がドキドキした。
「あいつにはな……。女がいるんだよ」
ガーン、と私に衝撃が走る。
「おんな……?!」
その時「おはよう」と、清田さんも入ってくる。
「お、丁度良かった。
なぁ、ギン。空、女いるよな」
颯太さんの言葉に苦笑する清田さん。
「あぁー、まぁ……。女ってゆうか……、女王様?」
……女王様……?!
「しかも俺と同じ高校の不良と一緒に暮らしてる」
「ふ、不良と暮らしてる?!」
颯太さんの工業高校はこの辺でも屈指の不良学校である。
「なぁ、ギン。ホントだよな?」
「え??まぁ、うん。
つーか、暮らしてるってゆうか、」
「とにかくだ、ウメ!
あいつを救えるのはもうお前しかいないっ!」
清田さんの言葉を遮り颯太さんはそう叫ぶ。
「わ、わたし……?!」
「そーだ、ウメ!あいつがあの魔の手から抜け出すには彼女を作るしかない!」
「で、でも、空さんには女王様な彼女が……」
「あ、九条さん、それは、」
訂正しかけた清田さんを颯太さんが手で制す。
「その彼女と別れるには新しい女が必要だろ?」
「そうですかね……?」
「そーだ、ウメ!
そうと分かれば明日から徹底的に、アプローチしてけ!」
なんか分からないけど私は思わず頷いていた。
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