第3話 完全解呪(パーフェクトクリア)
「なんじゃ! その程度じゃ魔物すら殺せんぞクソガキャァッ!!」
「うるせっ! クソジジイ! てめえっ、なんでそんなに力がつええんだよ!!」
互いに持った木刀――それを使って俺に剣の稽古をつけていたのは、俺を拾ってくれた老夫婦の旦那――オウジ・ミレイスターだった。
オウジは七十歳を超える白い髭を蓄えた老人。そのくせに鋼のような筋肉の持ち主。
今だって、俺は両手で木刀を握っているのに対してオウジは片手のみ。力量の差は圧倒的だった。
「<エアブースト>」
「てめっ! ズルいぞっ!」
「ヌハハハッ! ならばワシに一度でも勝ってみせよ!」
「俺は……プリースト、だっ……てのっ!!」
数秒後、俺は土の地面の上に大の字になって天を仰いでいた。
――クソめんどくせージジイに拾われた。
プリーストだってわかっているくせに、なぜか剣術を教えてくるし、しかも魔法まで使いやがる。まだ十二歳の俺に対して容赦がない。
この世界にはスキルの他に魔法があるらしく、それは火・水・土・風・光・闇の六つの属性があるそうだ。ただ、これはメインの六属性で、他にも例外的なものがあるのだとか。例えば錬金術だったり、呪術だったり。
先ほどオウジが使ったのは風属性の魔法。<エアブースト>は体に風を纏わせて素早く動く補助的魔法だ。
連続で振り下ろされる木刀の対処に間に合わず、俺はボコボコにされたというわけだった。
ちなみに俺は魔法が使えない。ただ、代わりにスキルが使えた。
俺が死んだ瞬間に聞こえた謎の声。
自分の中にスキルを授かったという感覚があった。
俺が授かったのは、<
これは、どんな状態異常も完全に治してしまうというスキルだった。
試しに俺を拾ってくれたジジイとババアに使ってみた。
すると二人は腰が悪いとのことだったので、意識して使うと『腰痛』が完全に治ってしまい、以前より二倍元気になってしまった。正直、治さなきゃ良かったと今でも思っている。
状態異常なら何でも治せるとのことだが、どこからどこまでが状態異常なのかわからない。ただ、『腰痛』が治ったことからも、小さな健康被害まで治してしまうのだと理解している。
老夫婦に拾われてからの俺は、謎の声に従って十二歳にしてプリーストとしての活動をはじめることにした。
イアシスの村には小さな教会があり、そこには光魔法を使えるシスターがいた。
それがうちのババア――ミゼット・ミレイスター。
ジジイと同じく白髪の長い髪を持つ七十歳超えの老人。怪我をした人は皆教会に行って光魔法に分類される回復魔法で傷を癒やしてもらうそうだ。
俺はその教会の小部屋を使わせてもらい、治療室として仕事をさせてもらうことになった。
しかし大きな問題があった。
それは治療する相手ごとに、触れる箇所や治療方法が違っていたことだ。
一人は肩を揉み、一人は尻を揉み、一人は胸を揉み……。
俺にもまったくわからないが、そういったハレンチ行為をしなければいけない相手は全員美人で若い女性だった。
治療をしていくうちに、俺の性別が問題ではないかと思ってきた。
内なる変態性が表に出た結果が、あのような指示になっていたのではないかと。
だとしたら俺は本当に変態クソプリーストということになる。
ちなみにうちのババアの『腰痛』の治療は触れずに済んだ。
ふう、本当に良かったぜ。
上記の通り、実はこのスキルは脳内の指示に従わずとも発動可能だ。
つまり、相手に触れなくてもスキルを発動できるのだ。
しかし、その場合は内容によるが回復に時間がかかることがわかっている。
まとめると、<
効果:状態異常の完全回復
非接触型:触れずに済むが、回復に時間がかかる
接触型:相手の性別や状態異常の内容により、触れる箇所と治療方法が変わる
使い勝手が良いのか悪いのか、よくわからないスキルだ。
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