俺の名は、君の名は?

彼はベッドの上で目覚めた。よくは覚えてないけど、懐かしい天井なことはわかった。かつての我が家だ。しかしなぜ眠ってたのかは謎である。


『やっと起きたか…』


ベッドの脇には見知らぬ男性が…

ベッドを背もたれにし座りながらタバコをふかしながらそう言った。

タバコの匂い…それすらも懐かしい香りだ。


彼は起き上がると辺りを見渡す。家具は違うが、子供の時過ごした間取りのままだ…


「僕の…お家…」


彼の呟きに男はタバコをぐしゃっと乱暴に灰皿に押し付けて、怒ったように立ち上がる。


『何言ってんだよテメェ⁉︎今何時だと思ってんだよバカが⁉︎さっきの騒ぎはなんなんだ…今は俺が住んでんだよここ。お前の母ちゃんなんかしらねぇよ…一瞬キレ散らかした元カノでも来たかと思って居留守してたのに…』


男はまたタバコに火をつけると吸い始めた。


「僕…どうしたの⁇」


彼が言うと


『騒いで取り乱してたから、家引き摺り込んだら気を失ったんだよ。だからそこ寝かしといた。もしかして…俺が金目当てで付き合ってやってたシンママのババアの息子かなんか⁇こんなデカかったっけなぁ…おめぇ名前は⁇あっ…悪りぃけど金は返さねぇからな。あのババアが勝手にくれたんだ。俺に非はねぇ…恨むなら親を恨めよ。』


男は笑顔で彼の肩を叩く。


「違うよ…お母さん、もう死んでる…この部屋で…僕は、“はじめ”…初めての子供だから“一”‼︎おじさんは⁇」


彼はまるで子供のように無邪気な笑顔でニコニコと答えた。


『おっ…おじさん…って待てよ⁉︎お前の母親ここで死んだだと⁇うっわこっわ‼︎だから安かったんだ…事故物件じゃねぇかキッショ…』


顔は強面のくせに、男はそう言うのは怖いようですごく怯えている。


「なんて言うのおじさんは⁉︎」


はじめは続ける。


『おじさん言うなよ…つぅの…“ヒロ”…広いって書いてひろ…“ヒロさん”って言えよ。おっさん言うな‼︎』


おじさんと言われるのは少し抵抗があるようででも優しく答えてくれた。


「僕に優しくしてくれた…“ヒーローさん”だね!」


『そんな柄じゃねぇよ…』


それが彼らの“出会い”である。

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