第3話 ログアウトできない!


BLっぽいキャラが出てきますが、全くその展開になりませんのでレイディングはつけていません。

よろしくお願いいたします。

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 たいくつな入学式がやっと終わった。

 スキップしたかったけど出来なかった。全然操作パネルが現れないからだ。

 これは強制ログアウト一直線だな。


 腹が減ったから式で近くに座った生徒たちと一緒に学食に入る。

 本当に腹が膨れるわけではないが、VR内の料理はどれも美味しいので食す。

 彼らは明らかなモブキャラだ。みんな平凡でパッとしない容姿をしている。でも本当の俺もこっちなので、親近感が湧く。

 それに一時的なログインとはいえ、周りとケンカなんかしない方がいい。



 すると俺の前に取り巻きを連れた一人の男子生徒が座った。

 割とハンサムだ。ただのモブではないってことか。

 貴族だなと思ったら、俺の周りにいた奴らが急に用事がと言いながら立ち上がって行ってしまった。

 おい! ちょっと、待てよ!

 一体、何が起きたんだ?



「君、名前はなんていうんだい?」

 自分から名乗れやと言ってやりたかったが、VRはアカウントでログが残るのでソフトを変えても行動は引き継いでしまうかもしれない。

 NPCへの態度が悪いのは元々論外だし、相手は貴族なので逆らうのをやめにした。


「リアン・マクドナルドです」

「リアン・マックダーナル君ね。私はユーリス・テンペスト、伯爵家子息だ」

 妙に発音よく返された。ちょっとキモい。


「えっと、よろしくお願いします?」

 そう言うとテンペスト伯爵令息は急に立ち上がって俺の隣に座り、テーブルの上にあった俺の手に自分の手を重ねた。

「もちろん、よろしくしてあげるよ」

 そういって俺の手にキスしようとするので、俺は慌てて立ち上がった。


「すみません、用事思い出しましたぁ」


 トレイを持って、ダッシュで逃げた。


 なんなんだよ、男の娘用のイベントキャラか?

 もしかしてこれを助けてもらって、カイルと仲良くなるとか?

 いや、この時間のカイルはプラムちゃんのお手製弁当だから校庭で食べているはずだ。


 ああ、もう嫌だ!

 早くログアウトしたい‼


 そう願ったがゲーム内で1週間たっても、10日たっても俺はログアウトできなかった。



 どんなにログアウトしたくても全然できないため、俺はリアンとして生きるしかなかった。

 まさか死んでゲーム内に転生あるいは憑依したのか?

 ラノベでよくそういう話あるよな。


 でもやったことといったら新作ソフトにログインしただけだし。

 社畜やゲームのし過ぎで過労死でもない。

 3月でまだ肌寒かったけどエアコンもつけてたから凍死もないし、水分も食事も補給してた。

 起きた時、頭が痛かったから脳梗塞とかかな? 筋肉痛もひどかったし。

 そんなの、おっさんになってからの話だと思っていた。


 本当に死んだかどうかもわかんねぇし、今は生きることを考えないとダメだ。

 目下の問題はレベル上げのためにダンジョン攻略のパーティーに入ることだ。

 と言っても自分のステータスが見られないけど。



 この学園、基本的に貴族が通うものなのだが王家や公爵、侯爵家なんかは自宅で学習していることが多い。

 16歳で社交界に参加していれば自分たちと同等の人間と付き合いもあるし、勉強だって戦闘だって実地で学ぶこともできる。

 学園に来てから初めて魔法を使うようなレベルの低い生徒に合わせなくてもいい。


 それが何を意味しているかというと、学園を牛耳っているのは伯爵家の人間だってこと。

 そんな学園で俺はカワイ過ぎるがゆえにテンペスト伯爵令息に眼をつけられているのだ。


 逆に言えば生徒会長のリリー・ペンシルトン公爵令嬢が特別なのだ。

 父の公爵は元伯爵家の人間で、あまりの優秀さに公爵家に婿入りし宰相になったそうだ。

 その彼が学園で生涯の友を見つけたとやらで、ペンシルトン公爵家の子どもたちだけが有力な上位貴族なのに学園に通わされ、今は末っ子のリリーだけが在籍している。

 俺はこの設定はカイルを邪魔する貴族の量を減らすためだと思っている。


 カイルは生徒会入りし、今年の生徒会長選挙でリリーを手伝うことで親しくなる。それで王女(ローズ)と親交を持つことができる。それから物語は王宮に移ってくっころ女騎士(デイジー)とか、王宮に潜む女暗殺者(ダリア)とかを攻略できるようになる。



 話は逸れたが、問題はクラスメイトが俺とパーティーを組むのを断ってきたことだ。

 俺はコミュ障でもないし、話をする奴らもいてそれなりに上手くやっていると思っていたのに。


 それは例のユーリス・テンペスト伯爵令息のせいだ。


「リアンと仲良くしたら俺もテンペスト様の取り巻き(という名の男だけのハーレム)に入れられるかもしれない。ごめん」


 俺だってそんなものに入る気、1ミリもないんだけど!

 っていうか、誰か仲間に入れてくれ~!!!!!


 とはいえ俺の周りは平民ばかりで無理も言えない。



 それで俺は主人公であるカイルに声をかけた。

 カイルはすでにアイリスと親しくなっており、パーティーメンバーにしていた。同じ学年ならばクラスが違ってもいいのだ。

 本来なら彼女と同じ騎士科であるリアンの紹介で仲良くなるはずなんだけど、どうやったんだろ?

 カイルは平民で高等部からの入学なので適性を見るため、初めは普通科なのだ。

 とにかくアイリスは伯爵令嬢で、彼女と一緒のパーティーならテンペストも文句は言うまい。


 俺は騎士爵家出身で剣も魔法も得意だし、攻略ヒロインでもあるので序盤から結構ステータスがいい(自分のステータスを見れないけど)から役にたつ。

 ドジっ子魔女のチェリーはもう少し後で彼女が最初のパーティーから追放されてから仲間になるし、リリーは年上なのでまだ仲間になれない。

 だからメンバーに空きがあるはずだ。



 そう思って声をかけたのに、カイルの返事はきつかった。


「悪いけどもうパーティーメンバーは決まってるんだ。それにお前魔法剣士だろ。俺と被ってんだよね。だいたい男の娘なんてキモいし」


 お前、魔力が強いけど平民だからまだ魔法使えないんじゃなかったのかよ!

 たしかチェリーを助けるときに使えるようになったはずだ。

 それにリアンは、好感度が上がらねーと女装しないからな。

 今の段階では好感度なんかほとんどないし。ってか底辺以下だわ。

 だいたい俺は絶対男なんかに好感度なんか上がらねーぞ。


 だけど俺は食い下がった。

 主人公は正義の心を持つ優しいキャラだ。

 俺の貞操の危機について訴えれば、助けてくれるはずだ。

 それで事情を説明して、最初の数ヶ月だけでいいからとさらにお願いしてみた。


「アンタがどうなろうとオレに関係ないから。キモいからあっちいけよ!

 次はボコボコにしてやるからな!」


 そう言って唾を吐き捨てて、プラムちゃんとアイリスを連れて行ってしまった。

 女の子2人が哀れむような目でこっちを見ていた。

 いや哀れむならパーティーに入れてくれ!


 それにしてもアイツ何なんだよ。どこか正義の心を持つ優しいキャラなんだ?

 これから何があってもサポートも当て馬もしてやらないからな!

 女の子たちもあんな奴でいいのか?

 むしろ心配すぎる。



 って言うか、さっき男の娘って言ったよな。

 この世界にそう言う言葉はないはずだ。

 つまりカイルはプレイヤー、またはシナリオについて知っているんだ。

 クソっ! だからすでに魔法が使えるのか?


 いったいどういうことなんだ。

 俺は俺以外がプレイするゲームの中に入り込んでしまったのか?




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