第3話 君と僕の、好きなもの

「今日も暑いね。僕は頭がクラクラするよ。

 こんな日には、ソーダ味のアイスが、頭にツンとくるけど美味しい」


「そうね。私は、真っ黒い日傘が無いと、外に出られない。

 私はフルーツゼリーが好き。

 みずみずしい味が全身に染み渡って、火照った身体を冷ましてくれる」


「真っ黒い日傘、僕も使ってみようかな。

 フルーツゼリー食べてみたい。家には、そういうゼリーが無いんだ」


「ゼリーを持ってきてあげたいけれど、冷たくなきゃダメね。

 私、夏に聴きたくなる特別な音楽があるの。

 それはね、ピアノとギターが奏でるジャズ」


「ゼリーは食べられないけど、君の言葉で、ちょっと涼んだ気がするよ。

 ジャズって、どんなのか、僕には分からない」


「ジャズはね、私と君の言葉みたいな音楽。

 噛み合いそうで、噛み合わない。でも、それがいい音なの」


「不思議な音楽だね。いつか聴いてみたい。

 僕は、盆踊りで聴く和太鼓の音が好きだよ。

 夏って感じがして、毎年楽しみなんだ」


「賑やかで、楽しそう。

 私、夏祭りには行ったことがないの。

 可愛らしい浴衣、着てみたいな」


「今年も、夏祭りの季節だね。

 近くの神社でもやるみたいだよ。

 なんとなく、君には、淡い藤色の浴衣が似合うと思う」



 僕は勝手に「淡い藤色」を纏った君を思い浮かべる。

 そんな君が、僕のほうを見てそっと微笑む。


 あるはずもないシーンが、僕のページにはいくつも刻まれていく。

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