第9話 思惑

🟥🟥🟥【数週間前……】🟥🟥🟥


 吾輩は絶望していた。

 成長の無い、このクソ雑魚に……


「数週間かけて魔力量【8】って、お前……どうなってるんだよ。ありえにゃい!」


 吾輩は、泣きながら暴れた。

 そして、後悔した……

 

 こんな事なら……こんな事なら……塔に捕まってる人柱にでも移れば良かった……。

 アイツらなら少なくても【5000】以上の魔力を保有している為に、こんな事にはにゃらなかったにゃー……

 その後で、ちゃんとした変えの体を探すべきであった。

 でも、もう……後悔しても遅い。

 だって、吾輩はコヤツに呪印を施してしまったから……だから、塔の人柱には……

 ……いや、待てよ……塔のシステムを使い。人柱を数人犠牲にすれば……もしかしたら、コヤツの体に乗り移れるかも知れない。

 しかも、その後は同じ様にして塔の人柱に乗り移れば……魔力量は確保出来る。

 これを考えついた吾輩は、やはり天才である。

 

 そうして、吾輩はクロウに塔に行く事を提案すると——なんとコヤツの目的も塔に行く事だった。なんて、なんと好都合! 

 そして、吾輩はクロウを連れて吾輩が保有していた塔へと向かった。 

 戦場の跡地……そのから少し隠れた山肌に隠れる様に建てられた塔へと向かって……


 そして、目的の場所に着いた吾輩とクロウほ驚愕の表情を浮かべた。

 にゃんと、そこには——在るべき塔の姿は無かったのだ。

 それに肩を落とすクロウと吾輩……


 すると、あの温厚なクロウが怒り出した。


「場所を間違えたのか、塔なんて何処にも無いじゃないか——ッ!!!」


(場所を間違った……?)そんな筈はない。


 ならばと思い、魔力感知を使ってみる。

 これは、大抵の魔物なら誰でも使える技で魔物はこの感覚を武器に敵を見定める。

 強ければ逃げるし、弱ければ襲う。

 言うならば野生の魔物が持つ危機察知能力である。

 しかし、知恵ある吾輩はこれを目に応用すると魔眼として扱う。

 能力は単純で、目で見た物の魔力量や残留思念などといった魔力を肉眼で見る事が出来る能力だ。

 そして、吾輩は——その能力を使って塔があった場所を見てみると……

 そこには、ちゃんと——かつて使われていた魔力の残滓が大量に魔素となって残っていた。


「間違いなく、ここに塔はあった……」


「クソッ……あったじゃ意味がないんだ!」


 そんな事をお前に言われなくても百も承知だ。

 しかし、クロウの言葉に怒りを覚えた吾輩は——ならば知ってる奴に聞けば良いだけの事と、思い。

 クロウに魔法学園に行く事を勧めた。


 あそこなら他の賢者の出入りもある上に、吾輩の研究所も残っている。(多分……)

 それにもしかしたら研究所と生徒数人の命を使えば塔でやろうとしていた事も可能かも知れない。


 と、言うわけで——吾輩は、クロウに魔法学園への推薦状を書くと世界で最も優秀な魔法使いが集う。

 王都の魔法学園へと向かった。


🟥🟥🟥【旅の途中】🟥🟥🟥


【鍛治師】


 魔法学園へ向かう途中で僕とヤマトは、ある村へと立ち寄った。


 その村は、鍛治師が有名であるが武器は作れても魔獣とは戦えない。

 と、言う訳で魔獣の被害に困っていた。


 そして、僕が泊めて貰ったお礼をその魔獣の退治を引き受ける事にすると——片腕の村の長から。もし、魔獣を見事に倒す事が出来た際は村で1番の鍛治師が打った名刀をくれると約束してくれた。


 村長である鍛治師は、僕の事を馬鹿にしていたのだろう。

 しかし、僕はやると決めた! だから、必ず魔獣を討伐する。


 そして、まず初めに村で聞き込みをすると西の洞窟に村を荒らす4足歩行の巨大な魔獣がいる事を教えて貰った僕達は、魔獣を倒す為に洞窟へと向かった。

 そして、大きな洞窟を見つけて中に入ると広くなった洞窟内の空間に魔獣を見つけると戦闘となった。

 魔獣の大きさは8メートルはゆうに越す化け物で、その魔獣は鋭い牙と爪を持っていて巨大な体に似つかわしくないスピードで攻撃を繰り出して来た。

 僕は、何とか鋭い牙と爪を交わし。何度も攻撃を当てると少しずつ魔獣の体力を削って行く。

 そして、数時間の激闘の末に何とか魔獣の討伐に成功すると、その魔獣から大きな魔石を手に入れた。


「これほど、大きな魔石は見た事がない。

 これを売ればどれだけの金になるのか……楽しみだ!」


 僕は、そう思ったが……しかし、現実はそんなに甘くは無かった。

 何故か狂った様にお腹が空いたヤマトに、その魔石を食べれてしまった。


「大金が……」

 

 売れば数百万になったその魔石。しかし、今はヤマトの胃袋の中……僕はガッカリしながらも、当初の目的を果たした為に、一度村に戻る事にした。

 そして、村に戻り魔獣の討伐に成功した事を伝えるとお礼に元鍛冶屋の男村長から一本の剣を貰った。

 それは、なかなかの業物で刀身が薄く光っていて……何だか、見ていると吸い込まれそうになるくらい不思議なオーラを放っていた。


 僕は、見事な剣をくれた元鍛治師村長にお礼を言うと、片腕の鍛治師は——。


「正直言って、魔獣を倒すとは思っていなかったよ。

 本当だっら、お前さんに合った剣を……

 もっと完璧な物を打ってあげたかったんだが……

 この通り、片腕になってからは鍛治師の仕事は出来ねーからな。

 俺が最後に打った。この刀で、我慢してくれ!」


 男は、そう言って少し悲しそうに笑った。


 しかし、男の1人息子であるケンタが……


「心配するな。父ちゃん!

 オイラが必ず、父ちゃんみたいな立派な鍛治師になるから」


 そう言う少年の手は、父に近づく為に必死になって刀を打った為に火傷の傷跡が至る所にあった。

 なので僕は、少年の為に自作で開発した【ヒーリングポーション】を2本渡す事にした。


【ヒーリングポーション】とは——。

 僕の魔力1回分のヒールをビンに閉じ込めたポーションである。

 特徴としては、回復速度は遅いが……僕の魔法と同じで持続時間が長い為に、全ての傷を癒した後に消える仕組みとなっていた。


「何これ? なんかビンの中に緑色の光が入っている」


「これは、ヒーリングポーションと言って然程さほど回復力は高くないが、その程度の火傷ならじわじわ回復してくれると思うよ。

 もし、治りが悪かった時の為に2本渡しておくから。良かったら使ってみて——」


 そう言って僕は、ケンタに【ヒーリングポーション】を渡し。

 父親から剣を受け取ると目的である魔法学園を目指して旅に出た。


【少年】


 ある日の事。

 村に、僕より少し年上の冒険者が訪れた。

 冒険者なんて、昔は珍しい事では無かった。

 僕の父が現役の鍛治師の時は……

 

 そして、その冒険者はお金がなく泊まる場所に困っていたので父が家に一泊停めると——お礼に恩返しがしたいと言い出した。

 

 実は、この時村は魔獣の被害に困っていたので父は冗談で冒険者に魔獣の討伐を頼むと——少年の冒険者はそれを引き受けてくれた。

 しかし、父は冗談だと言い冒険者を笑い飛ばしていた。

 そして、その時に父は冗談で父が最後に打った名刀を魔獣を倒したらあげると発言していた。

 すると、何故か——その話にペット喋るの猫がくいついていた。

 僕も無理だと思い笑っていたが……


 冒険者は、僕達の予想を裏切り。

 その日に見事に魔獣を討伐して見せた。

 そして、父は自分の作品である最後の一振りを少年の冒険者に渡した。

 片腕となった父は、もう刀が打てない。為にこの一振りは絶対に手放さないと思っていたが……父は約束通りに冒険者に刀を笑って渡した。

 すると、冒険者はお返しと言って不思議なポーションを渡して来た。 

 それは、中に緑色の光が入ったポーションで見るからに普通のポーションではないのは明らかであった。

 しかし、冒険者の説明によると普通のポーションより。

 効力は落ちるとの事であったので、僕は貰ったポーションをいつもより少しだけ大きな火傷を負った時に使おうと決めていた。

 この時は、まあ……貰い物だし。治らない時は最悪、普通のポーションを使えば良いと考えていた。


 それから数日後。

 少し大きな火傷を負った僕はクロウから貰った【ヒーリングポーション】を使うとゆっくりだが、確実に傷は治って行く……

 すると、不思議な事に子供の頃に怪我した傷跡まで治癒した。

 しかし、効力がゆっくりだった為に——このポーションの凄さに気づく事は出来なかった。

 そして、残った最後の一本は後で使おうと棚にしまうと——ある日の夜に酔っ払った父親が間違ってビンのフタを開けてしまった。

 すると、ゆっくりとだが確実に父の腕が元に戻って行く。

 そのまま、酔っ払った父は寝てしまった。


 次の日。目を覚ますと、父も僕も自分の目を疑った。

 父を見て僕は、夢でも見ているのかと思った。が……

 これは現実で、無くなった父の腕が元に戻った。

 これには、二日酔いの父も驚くと元気になり。


「これで、また鍛治師の仕事が出来る!」


 と、泣いて喜んだ。


 その後、棚な置いてあったヒーリングポーションのビンが空になっているのを見つけると——。親子は状況を何となく察するとクロウに感謝した。

 そして、クロウの為に世界で1番の最高で最強の剣を打つ事を親子は心に誓った。

 


🟥🟥🟥【薬と少女】🟥🟥🟥


 ここは、とある街の貧民街……

 僕は、ここにヤマトの指示で武道の達人に武術を習う為に訪れていた、


 

 それは、魔法学園での生存率を少しでも上げる為だ。

 ここで言う生存率とは、本当の死を意味する言葉では無い。

 あくまでも学園に入学、そして、退学にならない為の強さを身につけると言う意味である。

 そして、僕とヤマトは世界でも指折りの武術家の【ハクボ】と呼ばれる仮面をつけた老婆の元を訪れた。

 そして、武道を教わろうとお願いすると——仮面の老婆は……


「ならば、良い事をせよ!」


 そう一言だけ呟いた。


 僕は(良い事……?)と、少し考えて——良い事をする為に、街へと繰り出した。


 すると、事なくして——5人組の男に襲われている女の子を見つけた。

(さすが貧民街、歩いて5分で——この様な場面に出くわすとは治安が悪い……)

 そして、僕はその女の子を助ける為に男達に話しかけると——。その中の1人が……


「好きでやってるんだ……ほっとけよ!」


 そう言って来た。

 なので、僕は——何の事かと思い女の子に目を向けると……

 女の子は隣の男2人と共に、おかしな表情を浮かべていた。

 すると、ヤマトが……


「コイツらクスリをやってやがるな……」


 そして、僕は3人にヤマトが作った薬を飲ませると……

 3人は、突然苦しみ出すと——そこらじゅうにゲロを撒き散らした。

 すると、それを見たリーダー的存在の男が怒り出すと——僕は、男達と戦闘になってしまった。

 しかし、男達は然程強くなく。難なく男達を圧倒すると男達は少女を置いて逃げ出した。

 なので、僕は放置された少女を安全な所に連れて行く事にした。


 しかし、その道中——。

 僕は、その女の子にずっと絡まれていた。

 女の子は、僕に抱きつきぶら下がると終始……

 僕に「ヤラしてあげようか——ッ……」と、言ってきた。

 僕は、何の事だか分からなかったが……良い事では無いと思い。


「結構です!」


 そう言って、冷たく断った。

 すると、女の子は——よりいっそう絡みつくように抱き付いて来たので——。

 僕は、急いで——その女の子を仮面の老婆に預ける事にした。


 それで、認められた僕は——次の日から仮面の老婆の元での修行が始まる事に……

 そして、何故か助けた少女も修行に参加する事になった。


 彼女の名前は【エリザベス】と言うので、僕は愛称で【エリー】と呼ぶ事にした。

 そして、エリーは武術の才能があった。

 エリーはメキメキと力を付けると僕より先に仮面の老婆が教える武術をマスターすると、僕は——またヤマトに嫌味を言われる羽目になってしまった。


「あんな薬中女に先を越されるなんて、さすが落ちこぼれ……」


 しかし、僕はそんな言葉にもめげずに修行に勤しむと……数ヶ月で基本はマスター出来た。

 そして、老婆より奥義を授けられると免許皆伝が言い渡された。

 そして、それを聞いたヤマトは「奥義を覚えたならこんな所にもう用はにゃい」先を急ぐと言うと、そのまま街を出ると僕達は魔法学園を目指した。


 僕は、最後にエリーに別れを伝えたかったが……老婆のお使いで隣町に買い出しに行っている為に、エリーに別れを告げる事なく旅立つ事になってしまった。


【エリー】


 私は、口減しの為に親に捨てられると生きる事に絶望した。

 そして、空腹で何の希望も持てないまま貧民街に辿り着いた。

 

 貧民街に辿り着いた私は空腹で倒れると、数人の男達が群がって来た。

 すると、男達の1人が私に小瓶に入った液体を手渡した。

 私は、それが何かは分からなかったが……

 その男の「空腹を忘れられるぞ!」と、言う。

 私は、その言葉を信じて——その液体を一口飲むと……


「…………」


 私の体は思う様に力が入らなくなり。

 次第に、何も考えられなくなっていった……


 すると、男達の中の1人が私が持っていたビンを奪い取ると……


「俺にもよこせ!!!」


 そう言って残りを飲み干した。


 そして、何も考えなれなくなって行った私に男達のリーダーの男が私に指示を出す。


「男に抱き付き、こう言え……」


 私は、その言葉を何度も何度も復唱させられた。


 その後、すぐに喧嘩が起きると私は……

 また、見捨てられて置いてかれた。

 しかし、何も分からなくなっている私は——残った男の子に抱き付くと……男達に、何度も擦り込まれた言葉を復唱した。


 そして、男の子は私を知らない場所に運ぶと【リフレクション】と言う技を使い私の中から毒素を全て取り除いてくれた。

 そして、寝て起きた私は——全てを思い出すと顔が真っ赤になった。

 そして、私は助けれくれた。その少年に恩返しをする事を決めると——冒険者だった。

 その子と一緒に旅をして役立つ為に、一緒に武道の修行を行った。


 すると、私には武術の才能があった。

 師匠の元でメキメキと力をつけた私は、クロウより先に基本を全てマスターすると——クロウの修行が終わるまでの間、師匠の手伝いをして待っていた。

 

 そして、私が師匠のお使いで隣町に買い物に出かけてる間にクロウは旅立ってしまった。


 私は、急いでクロウを追いかけたが……

 足取りは掴めずクロウを見つけられなかった私は、師匠の元に戻って来た。

 そして、次に会った時にクロウを力ずくで我が物とする為に——もっと強くなる為に全力で修行に専念した。


🟥🟥🟥【カラス】🟥🟥🟥


 僕とヤマトは無事に魔法学園がある王都へと辿り着こうとしていた。


 しかし、王都の少し手前の森の中で——僕達は、そいつに出会った。


 翼を怪我していた。その子を見つけた僕は、急いで駆けより。

 その子を助けようとするとヤマトに「辞めておけ!」とだけ注意をされた。

 しかし、僕は——その真っ黒な翼を怪我したカラスを助けてあげたかった。

 なので、僕はヤマトの言葉を無視すると——怪我をしたカラスに【ヒール】回復魔法をかけると……

 カラスは、苦しみ出し弱っていった。

 すると、ヤマトが……


「そいつは、闇属性だ! だから、光属性の回復魔法では助けられない。

 まあ、ほっといてもどの道——死ぬことは変わらないがな」


(闇族性……)


 普通のヒールやポーションでは、助けられない。

 それでも僕は、このカラスを助けたいと思ってしまった。

 そして、それが原因でヤマトと喧嘩になると——ヤマトは……


「もう知らん。吾輩は、やる事があるから先に学園に行く——ッ!!!」


 その言葉だけを言い残して、その場から立ち去ってしまった。

 なので、僕は1人で考えた……

 

「ヤマトには、助けられないし。助けなくていい。と言われたが……何か手はないか……」


 そして、少し考えた僕は落ち着く為に水筒に口をつけた。

 すると、水筒の中の水は暑さでぬるくなっており。ほぼ、お湯に近い状態だった。

 その為に僕は水を美味しく飲む為に氷を作り出した。

 そして、水筒の中に入れると冷たくて美味しい水になった。


「冷たい——ッ……

 よく考えると水って不思議だよな……冷やせば氷になるし。

 炎で温めれば、お湯になる。

 お湯なんて、相反する水と炎を組み合わせる事によって出来るんだもんなぁ〜……」


 すると、僕は——少し閃いた!

 僕は、カラスに手を向けると【ヒール】を唱える。

 そして、そのヒールに僕の得意な属性の闇属性を混ぜて行く……

 すると、黒い色のヒール【ダークヒール】が完成した。

 そして、それをカラスに当てると傷が少しずつ回復して行く。

 僕は、数時間【ダークヒール】をからすにかけ続けるとカラスの傷は完全に完治した。

 僕は、完治して静かに眠るカラスを撫でると……


「良かったね」


 そう言った後で、カラスを安全な場所に置き野生戻すとヤマトを追いかけて急いで魔法学園に向かった。


【カラス】


「悪魔の私を助けるとは愚かな人間ですね。

 でも、悪魔として仮は返さなくてはいけませんからね。フフフ……

 どの様な形にしろ必ず仮は返しに行きますよ。人間——。」

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