第6話 魔力

 そして、イーストポートを追放された僕は——いろんな街を転々とすると、自分が魔力持ちでは無い事に強烈な劣等感を覚えながら彷徨うと、あの日。父や母を魔力が無いせいで危険にさらし。

 妹に助けられた事を思い出すと……自分が惨めになり。

 魔力が無い。自分など、生きる価値など無いと思う程に自分を責める様になっていた。


 そして、僕は無一文となり。

 空腹ので、森の中をフラフラと進むと……

 森の奥の……そのまた奥に……

 一軒の家を見つけた。


 僕は、人気が無い。

 その家に引き寄せらる様に、庭先の鉄格子の門に手をかけると……ゆっくりと扉を開いた。

 すると、そのせいで地面に書かれた魔物除けの魔法陣が消えた事にも気付かずに——草木に覆われた古びた家へと入って行く……と

 その家の中に、ベットに横たわる老人を見つけた。

 僕は、死んでいるかと思い。恐る恐る老人に近づく……すると、老人が僕に気づき話しかけて来た。

 そして、僕がお腹を空いている事を伝え。食べ物を恵んで欲しいと伝えると……

 老人は、ベットにもっと近づく様に指示を出して来た。

 なので空腹の僕は、何も考えずに——その指示に従った。

 すると、老人が僕の手に少し触れると——魔法陣が発動し。僕の手には、魔法の文字が刻まれた。

 そして、老人は何やら呪文を唱え始めると……僕は突然、窓から飛び込んで来た何かにぶつかると、弱っていた事もあり。その何かにぶつかると、よろけて転んてしまった。

 僕は、ゆっくりと立ち上がると——さっきまで生きていた老人はベットの上で眠る様に死んでおり。

 僕は、何が起きたのかが分からずに——次に、僕にぶつかったモノに目を向けると……尾っぽが2つ生えた猫が、慌てふためていた。

 そして、次の瞬間——その尾っぽが2つの猫は、いきなり僕に飛びついて来ると呪文を唱え始めた。

 しかし、何も発動しないと分かると猫は頭を抱えて床をのたうち回った。


「にゃんで——ッ……にゃんで——ッ!!!」


 その後、のたうち回ったり。落ち込んだりを繰り返した猫は——少し落ち着き冷静になると、僕と少し話すと僕は猫に色々と質問をされた後に、魔力がない事を伝えると——。  

 ギルドカードの定時をうながされた。僕は、猫が見たって……と思いながらもギルドカードを猫に見せると……猫は落ち込んだ様に項垂れた。


 しかし、その後。数分間落ち込んだ後で——僕に……


「待っていろにゃ!」


 と、伝えると——急いで何かを取りに? 作る為に? その場から居なくなった。



 時は遡る事、数十分前……


 私は、結界が破られた事でコールドスリープから目を覚ますと——目の前には、まだあどけない少年が立って居た。


 しかし、私は決めた。

 この年で、私の強力な結界を破った。この天才少年の体を乗っ取ろうと——。


 すると、少年は私に何か食べ物をせがんで来たので私は少年に指示を出した。

 すると、少年は簡単に指示に従ってくれた。

(簡単なガキだ……)

 そして、私は少年に触れると体を乗っ取る為の呪印を施す。

(これで、下準備は完成……)

 これは、体を確実に乗っ取る為のモノで——もし失敗した時の為の保険である。

 でも、まあ……満に一つも失敗は無いので説明は不要……早速、少年の体を乗っ取る為に、予めベットの周りに設置して置いた魔法陣に魔力を込めると……


 次の瞬間——ッ……

 私の目の前からは、少年の体が消えて——抜け殻の年老いた老人の姿が目に入って来る。


「成功にゃん!!!」(にゃん……?)


 私は、異常に低くなった自分の視線に疑問を覚え……自分の姿を確認すると——。にゃんと猫の姿になっている事に気づいた。

 しか〜し、私に焦りは無い。

 何故ならば、少年である彼には、呪印を施しているから必ず体を乗っ取る事が出来るからだ。

 そして、私は——またもや少年に飛びつくと呪文を唱える。


 しかし、呪文は発動しない……


「何故……にゃん……? 何故にゃん……何故にゃんにゃん——ッ!!!」


 その後は、私は——ひとしきり取り乱した後で……冷静になると少年から魔力が無いと言う情報を伝えられた。

 ギルドカードを見て確認も行なった……


 それを聞いて、見て、私は——しっかり落ち込んだ。

 この魔法は、魔力を通して魂を移し替える。

 その為に、魔力が無い者には移動する事が出来ないのだ。


(初めに言ってくれよ〜……魔法がにゃいにゃんて……)


 まあ、天才と言われる私だが……この世に魔力を持たない者など、ほとんど存在しない為に——完全に見落として居た。と、言うわけだ。

 しかも、私は彼には呪印を施してしまった為に……

 私は一度、彼の体を経由してからでないと他に移れなくなってしまった。

 安全性を考慮した結果、完全に墓穴を掘ってしまったのだ。


 そう……そして…………私は考えた。

 

 彼は、私の結界を天才魔道士だから破る事が出来たのでは無く。

 魔力を持たないから結界の干渉を受けずに、素通りする事が出来たのだ。

 即座に、この結論に至るとは——やはり私は、天才魔法学者である。


 そして、そんな天才である。私は考えた。

 私なら必ず思いつく……この状況を打破する策を……

 そして、必ずや! この少年の体を手に入れてやる。

 私は、思考を研ぎ澄ました。そうだ! この少年に、魔法を発動させる事が出来れば——この状況は万事解決なのである。


 そして、私は天才【ザガワ】にゃのだ。

 にゃので、その名にハジぬよう。

 長年に渡る人体実験による研究結果や成果をくしすれば……

 それは、魔力を持たない者に魔法を発現させる事もぞうさもない。

 まあ、しかし……薬の代償としては5年も生きられない体にはなってしまうが……5年以内に命を落とす事になるのなら、その前に他の体に乗り移れば良いだけの話し。

 答えは、簡単だったので私は——その薬を調合し少年に飲ませる事にした。


 そして、私は少年を騙し……それを飲ませる事に成功すると——。

 

 少年は、床をのたうち回り……血反吐を撒き散らして動かなくなった。


「……死んだ……? ……失敗にゃん?」





 それから1週間後に、目を覚ました僕は——ここ最近の記憶を全て忘れていた。

 そして、尻尾が2つ生えた喋る猫に——初めは驚いたが……

 言葉が上手な猫に色々と事情を聞くと、色々と思い出して来た。

 一応、彼と話した事をまとめると——。



 初めに、喋る猫の名前は【ヤマト】と言い。

 彼は、僕の魔力を発現させる為に力を貸してくれている協力者みたいだった。


 しかし、記憶をなくしている僕は——にわかには信じられなかったが……

 ギルドカードを確認すると、今まで【0】だった魔力量が【1】と表示されていた。

 

 普通の人からしたら魔力量が【1】なんてあり得ない。

 あっても無くても、どちらにしろ魔法を1発も放つ事が出来ない魔力量なのだから【1】なんてあっても意味が無い。

 しかし、魔力量が【0】だった。僕からしたら自分に魔力が発現したと言う事は、僕にとっては大きな一歩なのだと……


 そして、その後も僕とヤマトは魔力量を増やす為の修行を続けながら、同時に魔力の使い方も教えてもらった。


「クロウ、胸に手を当ててみろ! そして、その辺りに魔力の球があるのを感じるか……?  

 分かったなら、それがマナコアと呼ばれるものだ。

 そして、そこに有る力を全身の血管を通して流し込んで行く……イメージをするんだ」


 僕は、ヤマトに言われた通りのイメージをすると全身の血管が脈をうち熱くなる感覚を覚える。


 それに慣れると次の段階へと進む……


「次は、ギルドカードのステータスを見せてくれ!」


 そう言われたので、ギルドカードのステータス画面を開くと【魔法】と言う欄に、ひとまとめになって——。

【魔法】

炎魔法 水魔法 木魔法 金魔法 土魔法


 と、表示されているだけで——それを見たヤマトが首を傾げたので、僕はヤマトに何かあったのかと聞くと……

 ヤマトの口から驚きの言葉が、聞かされた。


「吾輩は沢山の人のステータスを見て来たが、こんな変なステータスは初めてだ、にゃん!」


 すると、ヤマトは普通のステータスを説明する為に——紙に言葉や数字を書き出した。

(猫なのに器用だな……)

 そして、特におかしいのが【魔法】の欄と説明すると……普通のステータスという物を教えてくれた。



 普通のステータスは——。


 魔法【炎魔法】

 ファイヤーボール

 (焔の精霊よ。我がナマを糧として炎の球となりて相手を焼き尽くせ——ファイヤーボール!)


 ファイヤーアロー 

(焔の精霊よ。我がナマを糧として炎矢で相手を穿て——ファイヤーアロー!)

 

 など……


 水魔法の場合は——。


 魔法【水魔法】

 ウォーターボール

(水の精霊よ。我がナマを糧として全てのものを洗い流せ——ウォーターボール!)


 ウォーターカッター

(水の精霊よ。我がナマを糧として敵を切り裂く刃となれ——ウォーターカッター!)


 ヒール

(この者の傷を癒やしもう一度立ち上がる力を与えん——ヒール!)


 などと、普通は——この様に使える魔法の下に【詠唱】が表示される。

 しかし、僕の場合は——それが見当たらなかった。

 そして、何より不思議なのは多数の魔法を所持している事——。

 基本的に、人は1つの魔法しか扱う事は出来ない為にステータスに表示される魔法は——何か1つとなっている。


 しかし……



 クロウのステータスは——。


 魔法【???】

 炎魔法 水魔法 木魔法 金魔法 土魔法



 と、詠唱が無いうえに……

 普通は、1人1属性しか扱えない魔法を五属性も扱えると言ううえに——自身の本当の属性は、まだ習得していない……? と、言う結果になっていると伝えられた。


 しかし、僕には——そんな常識など、どうでも良かった。

 初めて覚えた魔法に——期待に胸を躍らせながら……試したい気持ちに逆らえなかった。

 そして、試しに手に力を込めて……


「ファイヤーボール!」 と、叫んでみる。と……


 それに対してヤマトは——。


「そんな事をしたって、魔力量【1】じゃ! 魔法は発動しないにゃー。

 いくら魔法伝導率が良いものでも初期魔法でも【10〜20】は、必ず魔力を消費するにゃ!」


 と、バカにして呆れるだけであった。


 魔法伝導率とは、魔力を魔法に変える際に使われる魔力量の事である。

 これが未熟な者は、いくら魔力を保有していても魔力量の少ない者にも負けると言う事が起こるものであった。


 しかし、絶対に無理だとヤマトに言われた僕だが……力を込めた手からはボール状の小さな炎の球体が現れると——死んでしまったお爺さんが割って積み重ねた薪の方へと飛んで行った。

 それに対してヤマトが僕に「おいッ! ふざけんにゃーッ」と騒いでいたが、この時の僕は魔力切れによるマインドアウトにりよ意識を失って倒れていた。

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