第5話 魔力が無いから……
🟥🟥🟥【商人】🟥🟥🟥
そこから僕は、カカシの手伝いをしながら商売について勉強すると……
イーストポートでも、なかなか顔が広がり有名になっていた。
*
「今日もなかなか繁盛したんじゃないのか?」
「そうだな。それもこれも、お前のお陰だよ! クロウ。ありがとうな」
「何言ってんだ! あの時、カカシが誘ってくれたから今の俺があるんだよ。お礼を言うのは、こちだよ!」
そう、あの頃の僕達は、互いに困っていた。
僕は、ギルドに居るのが気まずくなり冒険者を続けるのが難しくなっり。
カカシは、商品を馬車で運搬する際に——毎度の事の様に盗賊に襲われると、全く利益が出ずに困っていた。
そこで、僕達は互いに協力する事にした。
「それにしても、魔力が無く。ゴブリンにも勝てないと言われていたクロウが、あんなに強いなんて思ってもいなかったよ……」
「ふざけるなよ! ゴブリンには——勝てるし……僕だって努力はしているんだ。
盗賊くらい追い払える」
そう、これにはカラクリがあった。
実は、魔力がない為に魔物には——めっぽう弱いが、それに属しない。獣や人などとは、普通に戦えた。
そして、子供の頃から訓練し続けた剣の腕前は——自分でも気づいてはいないが、今や達人の域に達する程であった。
*
時を
僕とカカシが組んで初仕事の日、仕入れた商品を馬車で運んでいる最中に僕達は、当たり前の様に盗賊に襲われると——。
僕は、カカシと商品を盗賊から守る為に馬車から飛び出して行った。
「おいおい、良いカモだと思って生かしてやっていたのに護衛なんて付けやがったかコイツ——ッ!」
そう叫ぶ盗賊達だが、1人の盗賊が気づく。
「いや……待ってくれ! お頭、もしかしたらコイツは街で有名な冒険者の……」
「有名……」
「有名? クロウ。お前、そんなに有名だったのか?」
「いや、有名なんて事は無いと思うんだが……」
「何だ!? もったいつけるな。早く言え!」
せっかちなおかしらが、怒ってそう言うと配下の盗賊は……
「有名なゴブリンにも勝てない。最弱の冒険者です!」
そう配下の者が、おかしらに伝えると……
少し沈黙の後に、大爆笑へと変わった。
「ゴブリンにも勝てない……ぶッ……ァハーハーハッハーハハッ……」
そう言って、大声で笑い出すと——周りの盗賊達もつられて笑い出した。
「アハハハッ……笑いが止まらない……涙が出でくるぜ! に、しても……
おいおい……コイツ……ゴブリンにも勝てないのかよ! ありえないだろ……イヒヒヒヒッ…………」
「確かに、ゴブリンなんて10歳の子供でも倒せる最弱なモンスターだって言うのに……」
「まぁ……この、カモネギ商人には、お似合いの護衛なんじゃねーのか!」
そう言って、笑い続ける盗賊達に——僕は、本当の真実を伝える。
「ちょっと、待ってください! その噂には、誤解があります。
僕は、ゴブリンを倒せなくありません。
ちゃんと、ゴブリンは倒せます!」
すると、1人の盗賊が……
「なら、ゴブリン以上の魔物は——?」
「倒せません……」
すると、それを聞いた盗賊達は——さっきにも増して大声で笑い出した。
「おいおい……待ってくれよ…………ゴブリンは、倒せます! って、当たり前だよ!
ブーーーハッハッハッハッハッ!!!」
「もう、やめてくれ——ッ!!! 笑い過ぎて、本当に死んじまうよ」
すると、1人の盗賊が……
「いや、でも、お前……本当に強いよ。
だって、笑いだけで俺達を倒しちまうんだから!」
すると、またもや大爆笑が起こり。盗賊達は、地面を転げ回った。
それから数分後……盗賊達が落ち着くと——。
「まあ良い。冗談はこのくらいにしておいて、お前達——命は助けてやる。
だから、荷物を全て置いていけ!」
そう言われたので、僕は剣を鞘から抜くと……心配するカカシを横目に戦闘体制に入る。
「断る!」
そう言うと、盗賊のかしらは部下達に
「死なない程度に、教育をしてやれ!」
と、言うと部下の盗賊達はニヤけながら。
「「「「へいッ……」」」」
と、そう答える。
そして、僕と盗賊達との戦闘が始まる——。
僕は、すぐさま油断している2人の盗賊を斬り伏せると——続いて3人目を剣技で体制を崩すとテンプルへの蹴りで失神させる。
その辺りから盗賊達も僕を警戒し始めたが、時すでに遅し……
僕は、残った2人を流れる様な剣捌きで仕留めると——盗賊のおかしらと一騎打ちとなる。
すると、盗賊のおかしらが叫ぶ——ッ!
「ふざけるな! お前……お前は、ゴブリンにも勝てないと言っていたじゃないか……」
「ゴブリンに勝てない。なんて、言ってない!
それに僕は、魔物には勝てないけど……獣や人となら普通に戦える」
そう言って、盗賊のおかしらの懐に飛び込むと一瞬で——おかしらの剣を跳ね上げる。
そして、首元に剣を突きつけると……おかしらは、持っていた剣を手放すと降参をした。
なので、僕とカカシは盗賊達を縛り上げると荷馬車に乗せて商品と一緒に街に運んだ。
そして、盗賊達を兵士に渡すと——今までに見た事ない報奨金が貰えた。
「え、っ……こんなに貰えるんですか……!?」
「ええ、盗賊は人を襲いますから基本的に下っ端でも懸賞金が掛かっている事が多く。
しかも、今回は盗賊のリーダーまで捕まえていますから金額は、格段に跳ね上がります」
「……そうなんですね」
そうして、報奨金を受け取った僕は——その日の夜はカカシと豪華な食事をとる事にした。
いつもより良い店に入ると、僕とカカシはテーブルいっぱいの食事を注文した。
2人では、食べきれない程の量の料理に舌鼓をしながらお酒を飲むと、気分も良くなり。
その時の僕は、少しだけ……冒険者や商人なんて辞めて【盗賊狩りのクロウ】にでもなろうかと考えた。
しかし、そんな事をカカシに話すと酔っていたカカシは——。
「やめてくれ〜、僕を見捨てないでくれ〜……」
と、僕にせがんで来たので僕は「どうしようかな〜……」などと言ってカカシをからかった。
それから、お腹いっぱいになった僕達は宿を取ると、その日の疲れを取る為にゆっくりと休む事にした。
それからカカシの方のお店(露店)を手伝うと、こちらも中々の売り上げを出せる様になって来た。
それから運搬の際に盗賊からカカシを何度か守ると、もともとカカシは商人としては優秀なので普通に物を売り出すと僕達はイーストポートでも、そこそこ有名になっていった。
そして、カカシの方も中々資金が集まって来たので露店から貸家を借りて本格的に店を構えようと移転を考えていた。
そん時に、
その老人は、他の店で無下に扱われて来たのか……僕達の店に来た時も申し訳無さそうに話しかけて来た。
「こちらの商品……手に取ってみても宜しいか……?」
そう言われたので、僕は笑顔で——。
「もちろんですよ」
そう答えると、カカシが少し心配そうに見ていたので、僕はカカシにある言葉を投げかけた。
それは、僕がカカシから言われた言葉で——それを聞いたカカシは……
「商人とは、目に見えるものだけを信じてはいけない。
その物の本質を見抜いてこそ一流の商人である」
「それは、僕が君に教えた言葉……
確かに、そう言われてみれば……着ている服も汚れてはいるが素材はかなり良い物を使っている」
すると、老人が……
「ここで言う本質とは、私の事かね。
私は、至って普通のスラム出身の老人だが……」
「見た目だけなら、そうですね。
しかし、貴方からは悪臭はしない。それよかいい匂いすらする」
「……それは盲点であった。
君は、若いのに鋭いね。
一つ聞いてもいいかい? 君は、いつから気がついていたのか教えてくれるか……」
「色々言いましたが、実は初めから気づいていました!」
「初めから……理由を聞いてもいいかな?」
「はい、実は——貴方から発せられる雰囲気が今まで見た誰よりも不思議な感じがしていました」
そう僕は、この老人を初めて見た時から老人の周りを取り巻く風が気になっていた。
その為に、老人を注意深く観察すると——わざと衣服を汚している事に気がついた。
そして、その事を老人に話すと……
「そうだったんだね。
実はね、私も君に不思議な風が取り巻いているのが見えて少し気になって話しかけたんだよ。実は……」
老人が、突然そう言って来たので僕は少し驚いた。
(この人は、僕と同じ物が見えているのか?)
まあ、ここは魔法大国だ! 中には、そんな人も居るだろうと——驚きはしたが、それ以上の追求はしなかった。
そして、その老人と僕は楽しげに沢山話をしていると……突然カカシが変な事を口にした。
「何だか仲の良い親子が会話していみたい……
それに、こうして見ていると何処となく似ている気がする」
カカシが、そんな事を口走ると……
「……すまないね。
私には、娘しか居ないから親と子言うのは、ありえんよ。
でも、まあ。孫なら…………いや、すまない、ありえない話だ。忘れてくれ……」
そう言って、少し落ち込むと……老人は店を後にすると僕達の前から居なくなった。
*
【そして、この時——出会った老人が、僕の祖父と知るのは、ずっと、ず〜っと後の話である】
*
それから数日が経った。
ある日の事、カカシはイーストポートを納める領主に呼ばれる事となると不安に思ったカカシは、僕に一緒について来てくれ! と頼まれたので、僕はカカシと共に領主屋敷へとやって来た。
そして、そこで領主から伝えられた言葉とは——先日出会った老人が元国王で、僕達を気に入ったを領主に伝えられたので、僕達は呼び出されると領主から手厚いもてなしを受けると共に、カカシの悲願であった店を用意してくれる事になった。
そして、提示された店の立地は普通では——ありえないくらい良い条件でカカシも速決めすると——。
この日は、カカシ商会の新たな門出となった。
それからは、領主の紹介もあり教会の物資の運搬も専属で任される様になると、その事が信用と繋がり。
貴族達からの依頼も殺到する様になった。
そして、2人で手が回らなくなったカカシ商会は人手を増やすと、瞬く間に大きな商会へと上り詰めて行った。
そして、カカシは全体の管理を僕は現場の指揮を取る様になった。
そんなある日、僕とカカシは教会の仕事で久しぶりに会うと牧師様と3人で、楽しい会話に弾んでいた。
しかし、そんな雰囲気はカカシのある一言がきっかけでぶち壊れると……
僕は、カカシ商会と——このイーストポートを去る事となってしまった。
事の発端は、他愛も無い会話からであった。
僕達が、出会った経緯や出来事などを牧師様に話していると——カカシの口から僕が魔力持ちでは無い事を告げると、牧師様の表情は、一変した。
そして、カカシ商会から僕を排除する事を牧師は勧めた。
理由を聞くと、教会が崇める月の神【ルーナ】。
その教えであるルーナ教によると……
魔力を持たない者は、前世で許されない大罪を犯した者だと言う言い伝えがあった。
その為に、月の神であるルーナ様を崇める教会は——僕が居るカカシ商会との今後いっさいの取り引きを取り止める事を告げられた。
しかし、この場で僕をカカシ商会から追放するのであれば——今後もカカシ商会との関係は続けて行くと伝えられた。
そして、カカシは悩んでいた。
初めは、2人で立ち上げた商会だが……
今は、沢山の従業員を抱える大商会となった。その為に教会との取り引きが無くなると、その従業員をクビにするしか無い。
しかも、教会からの仕事がなくなる事で貴族の信用が無くなると商会自体も続ける事が厳しくなり。
潰れる可能性も拭えない……
方や僕をクビにすれば、今後も取り引きを行ってくれる為に、もともと護衛として雇われた身の僕は、今の商会に取って邪魔以外の何者でもなくなってしまった。
そして、カカシは悩んだ。結果……
僕に、今後いっさいのカカシ商会への出入りを禁じた。
そして、僕はクビの宣告をされて街からも追放される事になった。
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