第3話 離れ離れ

🟥🟥🟥【13歳】🟥🟥🟥


 平和な日々が続いた。

 ある日の事、僕達は家族で川で水浴びをしていると……

 僕達は、村にやって来る異変を察知した。


「何かが近づいて来る音がする……」


 すると、村には馬や馬車に乗った兵隊が現れた。

 そして、兵隊は人柱となる為の魔力量の高い人間を探している事を説明する。

 実は、国王が変わり一度は落ち着きを見せた戦争だが……今の国王の指示により。

 広範囲の魔法や魔導兵器がなどが開発されると、それを動かす為に魔力を供給する為の魔力量の高い人柱が集められる様になった。

 その甲斐あって戦争では、百戦錬磨の成績をおさめると、軍事貴族達もコブラスに逆らう事が出来なくなり。

 しかし、マァゾーン国は——近隣諸国を次々に平伏させていった。

 そして、新たな戦争の為に——こんな小さな村にも魔力量の高い者を探しに来たと言うわけだった。


 そして、次々に村人達の魔力量が測られていく……

 しかし、基本的に貴族ではない一般市民の魔力量は【1000〜2000】程度で——人柱となる者は滅多に現れない。


 そして、僕達家族の順番になると——まず父さんから魔力量を測られる。


ピピ……


「1000……まあ平民など、こんなもんだろう。つぎ……」


 そして、母さんが次に測られた。


ピピ……


「4000……ここれはッ!!! 4800……一般人としては高いが……柱と、なれるのは魔力量が5000以上の者だけ。なので、柱としては不十分だ! 次——ッ……」


 そして、僕の番になると——何故か!? 機械がルーシーに反応する。


ピピ……


「ん……何だ!? 今、何で機械はこんな娘に反応した?」


 すると、機械の数値が【5000】以上と言う数値が叩き出される。


「こんなへんぴな村に、これほど魔力量の高い者が居るとは驚きだ!

 娘——ッ。お前を人柱に任命する。

 国の為に、しっかりと職務をまっとうせよ!」


 しかし、兵士に——そう言われたルーシーは泣いてしまった。



 基本的に人柱とは、塔に閉じ込められて死ぬまで——兵士や兵器の為に魔力を送り続ける為の生きた道具。



 その為に、両親が兵士を説得する。


「ちょっと待って下さい! うちの抜き娘は、まだ11歳です。

 親元を離れるには、まだ早過ぎます!」


 すると、兵士は国王からの伝令を取り出し読み始める。

 それには、10歳以上の者を柱として認める。そう書いてあった。

 

 その後も、両親と兵士は言い合うが埒があかない。

 そして、兵士が国の為に働き奉仕するのは名誉な事で——逆らうなら重罪になり、罰すると脅しをかけて来た。

 それに、両親が歯向かおうとしたので僕が止めると——。


「ちょっと待って下さい! まだ僕の鑑定が終わってません。

 ですから、もし……僕の魔力量がルーシーより高かった場合は、ルーシーではなく。

 僕を柱として連れて行って下さい!」


 僕が、そう言うと——記載により。

 ひと家族1人だけと言う決まり事がある為に、兵士は納得してくれた。


 そして、皆んなが注目するなか……僕の鑑定が行われる。


ピピ……


「……あれ……おかしいな……もう一度……」


ピピ……



 その後、何度か僕の鑑定が行われたが……

 結果は、全て【0】魔力が全く無いと言う判定結果が出るとルーシーは人柱となる為に、兵士達に連れて行かれる事が決まったが……僕は、それでも諦める事が出来ずに、ルーシーを救う為に何度も何度も兵士に立ち向かっい食い下がる。

 しかし、最後には——。


「魔力を持たない。何の役にも立たないゴミは、黙ってろ!

 言っておくがな! 今の国王は、魔力量の低い者を役に立たないゴミだと思っている。

 ましては、魔力を持たない。お前など、この場で首を切ったとしても褒められる事はあっても罪に問われる事はない。

 この場で、首を切らないのは俺の慈悲じひだ! 感謝しろ」


 そう言って、思いっきり殴られると——。

 僕は、地面に転がり……顔を上げると、口の中がジンワリと鉄の味がしてくる。


 そして、兵士は——僕の両親にも罵声を浴びせた。


「お前達もお前達だ! 魔力を持たないゴミなど産み育てやがって——ッ! 

 この事は、国王に報告させてもらう。

 そしたら、お前達には——何らかの処分が言い渡されるだろう!」


 すると、ルーシーが……


「私が大人しく行きますから……

 だから、両親と兄さんの事は黙っていて下さい……」


 ルーシーが頭を下げて兵士に、そう言うと……


「最初から、黙って従ってれば良いんだよ!」


 そう言って、ルーシーにも手をあげた兵士は——泣いているルーシーを強引に掴むと連行した。

 そして、ルーシーを助ける事で罪になる事を恐れた僕と両親は、その場から一歩も動く事も出来ずに、ただ連れて行かれるルーシー見守る事しか出来なかった。


 僕は、心の中で助けを求める。

 誰か、誰でもいいからルーシー助けてくれと……

 おとぎ話の様に、勇者様かヒーローが現れて妹を助けてくれる事を願った。


 しかし、誰も助けてくれない……


 無情にも幼い妹が無理やり連れて行かれるその残酷な光景を見て、僕は絶望した。


 そんなルーシーの最後に見せた顔は、涙で顔を歪めながら僕にだけ聞こえる小さな声で……


「助けて、お兄ちゃん……」


 そう小さな声で、叫んでいた。

 僕は、そんな妹の声に応える事が出来ずに——地面に崩れ落ち膝をつくと……


 その日、僕は人生で初めてルーシーを守る事が出来なかった。


 ルーシーを守れずに絶望して崩れ落ちた僕だが、絶望して落ち込んだのは僕だけでは無かった。

 ルーシーが連れて行かれた事で、両親は僕以上に落ち込むと放心状態になり。

 その場に立ちすくんで動けなくなってしまった……

 そんな両親を村の人達が数人で、家に連れられて帰ると両親はリビングの椅子に座り込むと頭を抱えてテーブルに突っ伏した。


 僕は放心状態で、部屋のベットに倒れると時間をかけて1人で考えた……

 そして、ルーシーの事が諦めきれない僕は——ルーシーを助ける為に家を出る覚悟を決める。


 覚悟を決めた僕は、ルーシーを助け出す為にルーシーが遠くへ行くその前に、家を旅立つ。その事を両親に伝える為にリビングに向かうと……

 リビングでは、両親の言い争う声が聞こえて来た。


「何で、ルーシーなの……何で、あの子じゃないといけないの?」


「それは、ルーシーの魔力量が高かったから……」


「なんで、なんで、貴方は、そんなに普通にして居られるのッ。悲しくはないのッ!?」


「悲しいに決まってるじゃないかッ! 

 俺だって、ルーシーを助けたいと思っている。

 だから、知り合いにルーシーの場所を見つけてもらっているんだが……」


 僕は、ルーシーの場所と言う情報が出て来たので、詳しく聞く為に両親が話す部屋のドアにゆっくりと近づく……


「そんな事をしたって、無駄よ。

 塔の場所なんて、絶対に見つかりっこないわ!」


「そんな事ない。

 俺が必ず見つける。俺達の唯一の子であるルーシーは、俺が必ず救い出す!」


(唯一の子……? 聞き間違いか……)


 そんな事より僕は、ルーシーの情報を聞く為にさっきより強く聞き耳を立てた。

 すると、母さんの口から信じられない言葉が飛び出した。


「ルーシーじゃなくて……クロウだったら良かったのに……」


「そんな事を言うもんじゃない。クロウに聞かれたらどうするんだ」


「何よ! 貴方だってそうじゃない。

 貴方は、そう思わなかったって言うのッ?

 実の子じゃないクロウじゃなくて、ルーシーが連れて行かれた方が良かったって言うのッ? 何て人なの……それじゃルーシーがあんまりだわ……」


「そんな事は言ってない。

 俺だって、ルーシーじゃなくてクロウが連れて行かれた方が…………クロウ……」


 僕が両親の言葉を聞いて固まると部屋の扉が風に押されて開いてしまった。

 そして、動揺した僕は2人の前で固まり。目を大きく見開き2人の事を見た。


「クロウ、今の話し聞こえて……」


 母さんが動揺しながらも僕に 話しかけてくるが……僕は、母から発せられる。

 その後の言葉を聞くのが怖くなると、その場から走って逃げ出した。


——ッ……」


 母さんが僕を呼び止める声が聞こえたが、僕は振り返る事なく……家を飛び出した。


 そして、僕は村を抜けて魔物の出る森を走り抜ける。

 それでも、気持ちの収まりがつかない僕は一晩中走り続けると、疲れ果て道端に倒れ込んだ。


(くそ……ッ……ここが、僕の限界か……)

 

 しかし、こんな所で寝たら馬車にひかれるか、魔物の餌になる。

 だが、今の僕には——そんな事は、どうでもいいと投げやりな気持ちになっており。

 ゆっくりと目を瞑ると深い眠りについた。



 クロウが走り去った家で、私はルーパーと共にドアに手を伸ばし固まる。


 そして、私は泣きながら叫けんだ!


「な……なんて事を言ってしまったの……私は……クロウまで居なくなったら、もう私は……私は…………」


 私が言ってしまった事は、ルーシーが居なくなった寂しさから口走ってしまった事で本心ではなかった。

 しかし、後悔しても遅い……ルーシーに続きクロウまで家から居なくなってしまった。

 

「君が悪訳ではない……

 とりあえず、クロウを追いかけよう」


 ルーパーの、その言葉に私は立ち上がるとクロウを追って走り出した。


 しかし、魔物の森に入ると瞬く間に魔物に囲まれて思う様に進む事が出来ずに……

 襲われた魔物を何とかまくと命からがら家へと戻って来る事となってしまった。

 そして、魔物の攻撃を受けて傷ついた私はルーパーに抱き抱えられてベットに寝かされると、薄れゆく意識の中で……最後に見たのは、武器を持ち1人で森へと向かうルーパーの後ろ姿——。

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