孤独なカラス

国語力 漫点

第1話 始まり

🟥🟥🟥【プロローグ】🟥🟥🟥


 僕は、幼い頃に両親に捨てられた。


 そんな価値の無い僕は死ぬばすだったが……優しい夫婦が僕を拾うと育ててくれた。


 だから、生きる価値の無い僕は——その人達の為に恩を返す為に、その人達の宝である娘を……

 僕が、世界でもっとも大切に思う妹を助ける為に命を使う事を決めた。



 ここは、塔と呼ばれる建造物で——人から魔力を抽出して送り出す国が管理する極秘の施設である。

 僕は、そこに侵入すると——ある部屋へと辿り着く……

 そこは、鉄くさい臭いが漂う薄暗い部屋で……


 僕は、そこに全身血だらけで立っていた。


 周りには、沢山の死体が転がる。

 そんな状況だが、僕の鋭い眼光は1人の人物だけを捉えていた。


 血だらけの僕に抱き付き泣きじゃくる少女。


「大丈夫……

 お前の事は、世界を敵に回しても僕が命に変えても守るから……」


 僕は、少女にそう言って微笑んだ。



 この物語は、勇者がお姫様を助ける。

 そんな物語ではない……


 この物語は、何の価値もない。

 主人公になど、なれるはずの無い。

 そんな僕が連れ去られた妹を助けるだけの物語である。





 ここは、マァゾーン魔法王国——。


 ここに住む人々は、全ての者が魔力を保有している為に——この国では魔力こそが絶対で、魔法こそがゆいつ無二の力だと思われている。

 

 そんな世界でも魔道士が最も多いマァゾーン王国は、全てに置いて魔法が使われていた。

 一般市民のインフラから軍事、軍事設備、都市開拓に至るまで、すべての事業で魔法が使われてる国で、世界でも最も最新技術により発展した最も優れた国家で、それだけでは止まらずに魔法により最強の軍事力を保持していた。


 しかし、それを妬み良しとしない隣国の国々は——。

 競い合う様に、マァゾーン国のその技術を盗み出そうと必死になって攻め入って来た。


 その為に、マァゾーン王国は常に周りの国から狙われ。王国は、いつも戦火にみまわれていた。


 そして、今もまさに隣国に責められて戦火の真っ只中……

 その為、長きに渡る戦争で国の兵士や国民は疲弊していた。

 

 苦しみ嘆く、兵士や国民……

 

 そんな状況や国民の声に、心を痛めた。

 第15代国王【ホーク・ウィングロード】は国中の貴族や実力者達を招集すると——。

 貧困や悲しみに苦しむ国民を救う為に国王は宣言する。


「この戦争で、最も功績を上げ! 戦争を終わらせた者には、我が娘と婚約し国王の座を譲る事を約束する」


 この時の国王は……

 いや、国王だけではなく。国中の人々が、この事がきっかけで世界が戦乱の渦になるとは夢にも思ってもいなかった。


 

 そして、この時——平和の代償として結婚する事を告げられた。


 現国王、ホーク・ウィングロードが娘——。


【ルキビタキ・ウィングロード】


 深海の様に、深い青い髪と瞳を持つ美しい女性である彼女だが、その可憐で清楚な見た目とは裏腹に王族の責務として覚悟は決まっていた。



 現在、王族であるウィングロード家は、国王である【ホーク】と、その娘である【ルキビタキ】だけであった。


 そんなウィングロード家は、代々名前に鳥の名を付けるのが慣わしとなっていた。


 それは、初代国王【アルバトロス】が自由に空を飛び民を率いた事から鳥を崇め鳥の名前が使われる様になったと言われている。


 そして、【ルキビタキ】とは——幸せの青い鳥から名前を取ってつけられた。


 そんな【ルキビタキ・ウィングロード】は、通称【ルキ様】と呼ばれ。

 深海のように深い青髪と光によって青く輝く黒褐色の瞳を持つ絶世の美女で、そんな彼女は世の男達を魅了した。



 そして、国王の宣言により【ルキ】を手に入れる為に、国中の男達は立ち上がると——。

 王女の【ルキ】と【王座】の地位を狙って、競い合う様に戦果を上げた。


 そして、戦争も終結に向かい始めた頃——。

 1人の名家の魔法貴族が王座を我が物とする為に、とある天才魔法学者と共に禁術に手を染めた。



 その禁術は、絶大な効力を発揮すると瞬く間に敵の布陣は滅ぶと——その事が決めとなり戦争は終焉を迎えた。

 そして【ルキビタキ・ウィングロード】は、その魔法貴族の妻となる事に……


 それによって、その男は新たな国王となった。



 新たな国王となった彼の名は——。


【コブラス・パイソン】


 彼は、銀色の長い髪に金色に光る目を持つ。野心多き伯爵貴族【パイソン家】の現当主である。


 彼は、今回の戦争において禁忌の力を使い。

 最も功績を上げると、王女である【ルキ】を妻に迎え王座に上り詰めた。


 しかし、この男【コブラス・パイソン】は、国王となった後も己が地域に満足する事が出来ずに更なる禁忌を犯そうとしていた。



 そこは、貴族パイソン家の屋敷の地下室——。

 そこに集められたのは、まだ幼き赤ん坊が100人ほど……


「本当に、この赤ん坊を使えば——我は、より強く莫大な魔力を手に入れる事が出来るのだな!」


「勿論です! コブラス様——。」


「その為に、我が息子【レイヴン】も差し出しているのだ。失敗など、許されぬぞ!」


「それは、従順に承知しております!」


 そう言って、首を垂れるザガワは——この国ずいいちの錬金術師であり。

 戦争の時にコブラスと共に禁忌を犯した。

 天才魔法学者でもある。


 そして、2人は赤ん坊である僕を見つめるが……その眼差しは冷たく——。

 コブラスは、息子の命を差し出しているから失敗は許されない! と、ザガワには言ったが……実際は、息子である僕の命などどうでも良いと思っていた。

 コブラスは、自分の魔力を上げるだけの道具として母であるルキに僕を産ませた。

 しかも、僕は母親に似て黒髪で生まれた為に——自分と同じ白髪で生まれて来なかった僕の事を醜いと思っていた為に……

 コブラスは、僕の事を疎ましくさえ思っていた。

 なので、僕は生まれる前からとして作られた。



 何故、コブラスがこんな行動をとったかと言う事を説明すると……

 人は皆、生まれながらに魔力総量と言うのが決まっており。


 一般的な平民は【1000〜5000】程度で、さほど多くはなく。

 しかし、普通に生活する分には困る物でもなかった。


 しかし、貴族の魔力量は【1万前後】と言うのが一般的で、比較てに多く保有している。

 個人差はあるが貴族は基本的に少ない者でも5000以上と言うのが絶対で、大体【5000〜3万】程度と一般市民と比べると比較にならないくらいに魔力を保有しているのが普通であった。

 まあ、この魔力量は努力次第で覆るものでもなく。

 その為に、特に貴族では魔力量が多い者が優れていると言う考えの者も少なくはなかった。


 まあ、一応は訓練や鍛錬によって少しは上昇するものの……

 平民が貴族の魔力量に近づける者は、才能があり死ぬほどの努力をした者だけであった。


 そして、コブラスが生まれながらに保有していた魔力総量は【5000】と貴族にしては最も低い魔力量で、魔道士貴族の家系に生まれ。低い魔力量に高いコンプレックスを抱いており。

 

 その為、国王の宣言を聞いたコブラスは、何が何でも王座につく事を決めると——ありとあらゆる禁術を使い王座に上り詰めた。


 そして、コブラスは国王と言う特権と権力をフルに使い。

 己が魔力総量上げると言う目的の為だけに、大量の赤ん坊を犠牲とした歴史上最も残酷な過去最大規模の禁忌を実行した。

 その中には、自分の息子である僕も含まれていた。



 僕は、【レイヴン】名付けられた。

 母は、王族の血を引く【ルキビタキ・ウィングロード】そして、父コブラスと母ルキとの間に生まれた。

 僕は、母と同じ深海の様な綺麗な黒髪を持つ男の子として生まれた。

 しかし、父であるコブラスは僕が生まれて来た瞬間に自分とは異なる黒い髪を持つ。その子に嫌悪感からカラスに因んで【レイヴン】と名付けた。


 王族であるウィングロード家は、代々——鳥から名前をとって付けるのが慣わしとなっている為にコブラスも、その掟には逆らう事なく従ったが……最大級の悪意を込めた名前をつける事した。


 王族ウィングロード家は、鳥を崇める一族に対して、父コブラスのパイソン家は——蛇を崇める一族であった。


 そんなコブラスは、パイソンと言う魔道士貴族の名家の生まれたのだが——もともと王族と比べると、貴族の魔力量は遥かに劣る。     

 野心多きコブラスは、それに昔から納得がいっていなかった。

 しかも、自分は貴族の中でも格別に魔力総量が少なく。

 それでも、一般人と比べると比較にならないくらいの魔力は保有しているのだが本人は、その状況に納得していない。


 その為、密かに他の者からの魔力の抽出する禁忌の研究を魔法学者のザガワと共に行っていた。


 しかも、自分が国王となった事で止める者が居なくなると共に王族の莫大な魔力を我が物とする為に、歪んだ野心は狂気へと変貌していた。


 そして、禁忌を使い莫大な魔力を手に入れる事でコブラスは、この世で最も偉大な王となる事を決意した。


 その為に、コブラスはザガワに命令をすると魔力が高い者なら平民や貴族を問わず。

 あたかも自分自身の子供でさえ——魔力量の高い子達を集めさせると、コブラスの魔力量を上げる為の道具として使われる事となった。

 しかも、ここで集められた赤ん坊達のほとんどはマナコアを抽出されると体に互いな負担がかかる為に、赤ん坊のほとんどが犠牲になる事は明らかであった。

 しかし、魔力の定着には相性もあるので——絶対に成功する保証は何処にも無い。

 そして、定着しないのにマナコアを抜かれた赤ん坊は無駄に死ぬ事になる。

 だが、この時の2人には——そんな事どうでもいい事であった。


 そして、コブラスがザガワに命令をすると……1人目の赤ん坊よりマナコアの抽出が取り行われた。

 すると、マナコアを抽出された1人目の赤ん坊は——苦しみだすと……目や耳、鼻から血を流すと死んでしまった。


 そして、取り出されたマナコアはコブラス取り込まれる……しかし……

 1つ目のマナコアは、定着される事なく消えて無くなってしまった。


「くそッ……失敗だ! 次だ次——ッ!!!」


 そして、また……1人……また……1人と、赤ん坊のマナコアが取り出されると、罪の無い命が失われていく、その中でマナコアを抜かれても生きている赤ん坊が数人。

 血を流し瀕死ではあるが、かろうじて生きている。

 その中の1人に、僕も含まれていたのだが、放っておけば間違いなく死ぬ。

 その赤ん坊達は、死んだ者達と同じ場所に投げ入れられた。


 そして、赤ん坊の事など気にも止めないコブラスとザガワは——コブラスの体に3つのマナコアを定着させると……

 コブラスは、この世で最も魔力総量の多い人間へと生まれ変わった。


 そして、王位を継いだコブラス・ウィングロードは——。

 後に、その力を使って——この国も含めて隣国をも支配し納める皇帝となるのであった。


「ああ……なんて、素晴らしい力だ!

 これで、私は——歴代で最も優れた王となる。いや、皇帝となる!」



 そして、禁術を終え魔力を増やしたコブラスとは正反対に、マナコアを抜かれても生き残った赤ん坊達は——コブラスの命令によって処分される事が言い渡された。


「コブラス様、実子であるレイヴン様が——まだ生きておりますが如何なさいますか?

 今なら助ける事も可能ですが……」


「助ける……!? 

 魔力も持たない。そんなゴミをか……?

 何を言っているのだザガワよ! そんな魔力を持たないゴミなど、我が息子では無い。

 ザガワ、生き残った赤ん坊達と共に処分しておけ」


「かしこまりました。

 しかし、コブラス様に一つ頼みが有るのですが宜しいでしょうか……?」


「何だ!? 言ってみろ」


「はい……実は、実験の材料として魔力の無い赤ん坊を数体ほど、欲しいのですが宜しいでしょうか?」


「そうだな。お前も良くやってくれたし。良かろう!

 しかし、レイヴンや貴族の子供は処分しておけ。そいつらの親にバレでもしたら国が傾く恐れがある。

 だから、身元の分からない子供ならいくら使っても構わん。好きにしろ!」

 

「有り難き幸せ……」


 そうして、話が終わると2人が一緒にいた事がバレない様にコブラスが先に屋敷を出ると、ザガワは適当に身元の分からない赤ん坊を見繕った後で——面倒な他の赤ん坊の処分は自分でやらずに使用人の侍女に任せると、その場を去った。


 すると、その侍女は血だらけで瀕死だが懸命に生きる赤ん坊達を不憫に思い。

 回復魔法で傷を癒すと綺麗な布に包みカゴに入れると殺さずに川に流した。

 そして、侍女は僕を目を見ると……


「私には、分かる。

 この目は王女様と同じ褐色の青い目……

 この子は、きっと……数日前に攫われて居なくなったと噂になっている。

 王子のレイヴン様に違いない……

 

 この事を知った私も、いずれは——この子達と同じでゴミの様に捨てらるのだろう。

 だけど、今この子達を助けられるのは私だけ……ならば王女であるルキビタキ様に変わって、私が王子であるレイヴン様を助ける。

 絶対にとは言えない……

 しかし、それでも……貴方様は、この国の王子様。いずれ王となられるお方……だから、だから……今バレてしまっては真っ先に殺されてしまうから。

 だから、どうか見つからない様に——でも、いずれ自分が王族である事を気づける様に……この名前を入れておきます。

 あなた様に、星の導きがあらんことを……」


 そして、僕は川に流された。


_________________________________________

あとがき


今日は、2話投稿します✌︎('ω')✌︎

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