第7話
「いいよ、分かった」
180の男、もとい、自称プロデューサーが何かを言い始める前に遮った。
思い出しても仕方ないし、鑑賞に浸った所でどうにかなる事でもないなら、今は捨てておこう。
「これってスカウトだよね?」
『はい』
「1つ条件つけてもいいかな」
こな条件を飲んでくれないとなると非常に今後が苦しくなる。なるべく平坦な声、平常心を意識する。
「助けてくれる?」
『……どういう事ですか?』
「あー、全部言わないと駄目かな」
『………いえ、助けます』
長い沈黙の後に、理由を聞かずに強い声で言い切った。
私は目をパチクリさせて逆に不安になる。
向こうにも向こうなりに思うところはあるだろうし、問題を抱えてそうだと察したはず。
アイドルと言うからには真っさらな純白が良いはずだろうに、既にインクがしみてしまったと気付いた筈なのに、助けると言い切ってくれた。
だから、信じてみようと思えた。
「いや、言うよ。ありのままを。でも電話越しじゃない」
『はい、事務所で待っています』
「分かった」
自称プロデューサーも落ち着いた声でわがままを承諾してくれた。
迷いはある。怖さもある。心細さなんてもっとある。恨みもある。憎しみもある。
(ああ、私にはこんなにもいっぱいある。負の感情だけどね!)
でも、全て乗り越えてやる。そう決めた瞬間だった。
『あ、何日の何時頃になりますか?』
締まらないなーと苦笑いを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます