第7話

「いいよ、分かった」




180の男、もとい、自称プロデューサーが何かを言い始める前に遮った。




思い出しても仕方ないし、鑑賞に浸った所でどうにかなる事でもないなら、今は捨てておこう。




「これってスカウトだよね?」


『はい』


「1つ条件つけてもいいかな」




こな条件を飲んでくれないとなると非常に今後が苦しくなる。なるべく平坦な声、平常心を意識する。




「助けてくれる?」


『……どういう事ですか?』


「あー、全部言わないと駄目かな」


『………いえ、助けます』




長い沈黙の後に、理由を聞かずに強い声で言い切った。




私は目をパチクリさせて逆に不安になる。




向こうにも向こうなりに思うところはあるだろうし、問題を抱えてそうだと察したはず。




アイドルと言うからには真っさらな純白が良いはずだろうに、既にインクがしみてしまったと気付いた筈なのに、助けると言い切ってくれた。




だから、信じてみようと思えた。




「いや、言うよ。ありのままを。でも電話越しじゃない」


『はい、事務所で待っています』


「分かった」




自称プロデューサーも落ち着いた声でわがままを承諾してくれた。




迷いはある。怖さもある。心細さなんてもっとある。恨みもある。憎しみもある。




(ああ、私にはこんなにもいっぱいある。負の感情だけどね!)




でも、全て乗り越えてやる。そう決めた瞬間だった。




『あ、何日の何時頃になりますか?』




締まらないなーと苦笑いを浮かべた。

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