第5話 共鳴心

理科室3階、出恋みのりは来た。

「理科室閉まってるし前でいいのかな。」

(出恋さん。こんにちは、貴方の恋を叶えましょう。)

頭の中に言葉が流れ込んでくる。

発した言葉ではなく、耳からではないだが確実な情報。

「私の恋?貴方は何者、私に何の用ですか?」

(私は貴方の恋を応援したいんです。私は知っていますよ。貴方がいつも喋っている赤ノ原くんに向けていた熱い眼差しを!)

「えっ、ちょっと違う気がする。私はまだそんなに好きじゃないんですけど。」

(あれ?可笑しいな?多分興味とか気になるとかちょっと感情があるはずなんだけど...)

「まあ、あれほど目立つ人に注目惹かれるのは当たり前でしょ。」

(んー、でもこれから好きになります。なので貴方の恋を応援...)

「私の恋がどうとかどうでもいいんです。私は貴方の正体を掴む為に来ました。

精神掌握。」

(私は...なんですか?なんとおっしゃいま...)

出恋の精神掌握は現状目の前にいる人間の精神を操作する能力。

上手くターゲットができなければ、相手を操作出来なかった。

しかし、違和感がまだある事に出恋は気付いた。

「消えた。感づかれたのかな。でも私の注目を分かりやすいとはいえ当てたならクラスの同級生?でも購買の男子は別クラス。そして恋に執着。何かもっと根本の問題を解き明かせば分かるはず...」

告白を確実に成功させて、頭の中に喋りかける能力。

出恋はこの能力に一つの仮定がはまった。

(もしもし、聞こえますか?恋の話をしてくださいよ恋の話。)

仮定が当てはまる、そしてその憶測を実行する。

「頭の声さん、貴方が好きです。」

(えっ!?違う違う私は女だから!多分殆ど違うよお!)

「女なんですね。」

(あっ、ダメダメそんな風に考えちゃダメ!私の正体の事を考えちゃダメ!)

「頭の声って怖いです。だから貴方も同じく怖い目に合わせます。」

(怖い目!ダメだ!この人に絶対に朝倉凛ある事がバレちゃダメだ!)

「朝倉凛。それが貴方の正体。今迎えに行きます。」

(怖い!やめて、私のクラスに来ないでえ!)

朝倉凛。それは隣のクラスの女子。

出恋は隣の1-Bへと向かう。

因みに出恋は1-A。

「貴方の本当の能力は恐らく、同じ感情の人と頭の中で会話できる能力。

(こないでぇ!)

そして1-B教室に着く。

教室の扉を開けるとそこには廊下ですれ違って名前の聞いたことのある朝倉凛が

他の女子生徒達の会話の輪の中にいるが、一人浮いて会話をしていなかった。

「朝倉さん!」

「はあいい!」

「ちょっと用事があるからこっち来てもらっていい?」

「はあい...」

出恋は勝ち誇った思いで朝倉に告げ、周りの女子は不思議そうに見つめながらも朝倉を校舎裏に連れ出した。

「いてっ」

「貴方の髪の毛を採取すれば3万だから、本当にありがとう。」

「私のこの特殊な力、詳しく知っているんですかあ?」

「赤ノ原くんがよく知ってるの。私も持ってます。動機とか色々教えてもらえますか?」

「私は、幻のリンゴパンを食べてから周りの共感している感情をとらえて話しかける事が出来る様になっていました。そして自分の恋心を利用して気付いたんです。

自分の頭の中に恋愛相関図が完成されている事に。それを利用してお金稼ぎ出来ないか考えたんです。」

「赤ノ原くんもだけど、なんで能力者はみんな発想が飛んでいるでしょうか?」

「ただ元々両想いの人間に手を加えて成功報酬としてお金を貰う。ハリボテの恋愛成就サービスを完成させました。」

「それを使えば依頼も自分から押し売り出来るっていうことだったんですね。」

「まあ、悪く言えばというか...そうですう。貴方は恋していなんですか?少しあるような気がしたんですけど。」

「えっ、そうなの?まだちょっと赤ノ原くん苦手なんですけど。」

「まあ、人間の恋愛感情は読み切れませんね。」

「それより、貴方は共感しないと能力が発動しないんだから、貴方の恋の話をして欲しいんだけど。」

「帰りながら話しましょう。」

そして二人は恋バナしながら帰っていった。




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