ウンム、飾り窓を見て

あまるん

飾り窓

 春の砂嵐の中でベールを被ったあの子を見たときあなたの目が変わった。舗装が崩れた下町の道路から、ジャンバーにバイクの男みたいな格好をしてた時には目もくれなかったのに。

 あなたはジャスミンとバラの混ざったオイルを買っていたのに私にはくれなかった。私は代わりにこのガラスの瓶を買う。

 投げつけたらこの液体が肌を焼き焦がし太陽に下に黒い影が残るだろう、あの子がママになんてなれる訳がない。

 気温が50度を超したら、昼にはみんな夢の中。彷徨うのは私と鳩と猫だけ。貧しい日干しレンガの一階建ての今にも崩れそうな飾り窓。ドアだってちゃんと閉まってない。

 頭に巻きつけた黒いベール、敬虔な祈りの言葉を叩きつけて、まるであいつは野良犬よ、と。

 女を隠す飾り窓の中にいたって何の意味もない?香るのは花がそうしようと思うから、……ああ、違うわけない。

 中学の時にもうこれ以上学校には通わせられないと言われて、年上の男が私の家に来た。

 おじさんの友達なんて知らない。私は従兄弟とだって引き離される。


 従兄弟はきっとあのこと一緒になる。本当なら私と暮らすはずだったのに。

 絨毯の上にごろ寝して、お菓子を食べて、好きなように歩いて、男兄弟と同じような口を聞いて、キラキラ光る目、その全部。

 見えない赤い傷が肌に這うこともない。 

 --みんな言うのよ、結婚したら楽しいって。一緒にパーティで盛り上がればいいじゃないって。


 でも階段の下でもう従兄弟に会うこともない。好きなものを見て、好きな音楽を聴いて、同級生と喋って、夜通し踊る。家事も手伝わないわけじゃない、勉強だってしたい。


 みんなそうだって言っても、ガラスの瓶が違うと言う。誰にこれをかけるべきだったの。

 取り残されるよりは混ざりたいから、もしかして、あなたもそう思うの?私は私を焼く瓶に話しかけた。

 踊るのは音楽がなくても私の心が震えるから、火が燃え上がるの恋をするからではなくても。楽しい時も、悲しい時も私の目は私を見てくれた。一枚の影になったとしてもナイルは包み込んでくれる。

 ガラス瓶を陽に翳した。

 太陽が、そのたくさんの光が私を突き刺し……私の肌を焼いた。

 一つの松明として私は叫びながらバハル、あの愛しの腕に飛び込む。叫び声を聞いたのね、家から出た彼女の驚いた顔を見ながら手を振る。

 お願いあの人のママにならないで?私のママ、ウンンム……。水音、泡、ああ、海の娘よ……。

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