リーガルライⅡ―悪徳銀行員に負けるな!
永田永太郎
プロローグ
第1話 日本の司法は穴だらけ
「先輩。わざわざ、来てもらって申し訳ないですね」
青年は、目の前の焼うどん―450円―に手を付けず、礼儀を守った。
「いいよ、いいよ。
オレも懐かしいし。
今泉くんも元気そうでよかった」
懐かしいには2つの意味があった。
1つは今泉くんが懐かしい。
1つはK大学の学食が懐かしい―卒業以来のK大学キャンパスだから
「さぁ、食べようか。で、どうしたの?」
「グチなんですけどね…オレ、彼女に振られちゃったんですよ」
「どうして?」
「デート中に、彼女、いきなり怒っちゃって」
今泉君の主張は簡単だ。
―Sプラザレストランがすべて悪い―
「こんなニセモノ、よく平気で口にできるわね!」
こう言い放ち、ナプキンをテーブルに叩きつけ、彼女はスタスタ帰ってしまった。
後で話を聞いたら…エビはニセモノ、鮮魚は冷凍…メニューがほとんどデタラメ!
「だってSプラザレストランって、高級レストランですよね?
天下のSグループでしょ?
そんなことあります?」
(つまり…)
「元彼女さんは
―デタラメを見抜けない今泉君もデタラメ。そんな男とは付き合えない―
ということ?」
「よくわかりましたね。さすが名探偵!」
―くだらねぇ女だ。別れた方がいいだろう―
だが、それを口にするのは野暮というもの。
自分だって…
大学時代に付き合っていた彼女の顔を思い浮かべてしまった。
たった数年前のことだ。
「やっぱり、許せないんですよ!
こんな悪徳企業、天誅を下すべきですよ。
で、本題なんですけど…」
「本題?」
「先輩、ボコっちゃってくださいよ!」
「え?なんでオレが?」
「だって先輩、新興企業の社長様でしょう?」
その社長様が食べているのは、メニューに焼と書いてない、ただのうどん―250円―である。
今泉君、ちょっと気が利かない。
「資本金1円、従業員ゼロの株式会社。
零細とすら呼べない企業だよ」
「でも、探偵業なんですよね?
探偵の技を駆使し、Sプラザホテルに正義の
「探偵業も届出しているだけ。探偵業だけの会社じゃないよ」
「え?そうなんですか?」
「でも、機会があれば天誅とやらお見舞いするよ」
「本当ですか?
ぶっちゃけ、違法な手段でもいいですよ!
あっちが悪いんですから」
先輩は苦笑いし
「あれ?
後輩は
「ああ、ヤバイ。お呼び立てしておいて、すいません」
と言い、あわててトレーを持ち去って行った。
(違法な手段か…
Sプラザホテル、たしかにカネの匂いがする)
先輩は少しキャンパスを歩くことにした。
卒業してから自然と足が遠のいたK大学キャンパス。
学生向けの掲示板。
4月なので新入生向けの注意喚起が多い。
マルチに注意!―勧誘すると罰せられます―
イッキ飲みはダメ!―煽ってしまうと民事・刑事で責任を問われます―
ビールジョッキ片手に両目が×になった女性がポスターに描かれている。
(一気飲みって、そんなカワイイもんじゃないだろうに)
気分が萎えた。
(法的責任を問うだと?
あんなポスター、抑止になっているのか?)
正門に向かって歩き出す。
(日本の司法は穴だらけだ)
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