🌕 月夜のコラム帳

ミエリン

月夜のコラム帳・第一夜

「月読の初夢」


一年の最初の夜、月は静かに空を渡る。

誰の願いも語らず、ただ銀の光で世界を包み込む。

それは、神々の夢が地上に降りてくる夜。




🖋 睦月の話


睦月の夜は、どこか特別な匂いがする。

冷たい空気の中に、まだ誰にも踏まれていない雪のような、まっさらな時間の気配が漂っている。


昔、ある村では「初夢は月読命(つくよみのみこと)が見せるもの」と信じられていた。

月の神が、眠る者の枕元にそっと降りてきて、その人の一年を夢に映すのだという。


ある年の初夢で、ひとりの少女が見たのは、夜の湖に浮かぶ銀の舟だった。

舟には誰も乗っていない。けれど、月の光だけが静かに揺れていた。

目覚めた少女は、その夢を「月読さまからの贈り物」と信じて、大切に日記に書き留めた。


その年、少女は大切な人との別れを経験した。

けれど、夢の中の舟のように、彼女の心は静かに揺れながらも沈まなかった。

「きっと、あの舟が私の心を運んでくれたのだ」と、彼女は後に語っている。




🌌 結びの言葉


あなたの初夢には、どんな光が差していましたか?

それがたとえ儚いものであっても、月読の舟は、あなたの心をそっと運んでくれるかもしれません。

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