資格と証。

崔 梨遙(再)

1話完結1000字

 ご無沙汰しております。


 久しぶりに、少しだけ書きます。




 いろいろな方々から、聞いてきた言葉がある。


 “俺は(私は)生きてきた証が欲しい!”


 その言葉を聞く度に思っていた。


 “羨ましい”


 僕はそのレベルまで達していない。僕は生きていく資格が欲しい。


 僕は兄姉とは腹違いだ。


 父と母が再婚同士、母に子は無く、兄姉は父の連れ子だ。そして僕が生まれた。


 兄姉からすれば、僕が妬ましかったのだろう。


 自分達は血の繋がらない母親に気を遣っているのに、僕だけ本当の両親に育てられている。


 結果、幼少期など、兄姉と留守番をしている時に僕はいじめられ続けた。


 「お前なんか、いなければ良かったのに!」


 「お前がいるからアカンねん!」


 「お前なんかいなくなったらええねん!」


 「お前なんか、生まれてこなければよかったんや!」


 やがて僕は思うようになった。


 “僕は生きていていいのだろうか?”


 “僕は生きていたらダメなのではないか?”


 誰かに言ってほしかった。


 「生きていてもいいよ」


 ちなみに


 僕は留守番の時にいじめられても、両親には何も言わなかった。


 首から下を、姉には爪でつねられまくっていたけれど。


 なんとなく、兄も姉もツライのだろうなぁと思っていたから。


 なんとなく、“僕が言わなければ丸く収まる”と思っていたから。


 何故だろう?


 僕の我慢で憎しみの連鎖が止まればいいと思っていた。


 まだ子供だったのに。そう思えた。


 不思議と、兄姉を恨むことは無かった。


 でも、幼少期の体験は僕の心の根っこの部分に影響を及ぼし続けている。


 “僕は生きていてもいいのだろうか?”


 だから、僕は人の役に立つことが好きだ。


 人助けをしていると、


 “僕はこの人を助けているから、生きていてもいいよね?”


 と思えるから。


 だから、こんな人生になったのかもしれないけれど。


 それは、僕の恋愛にも影響を及ぼし続けている。恋愛以外にも。


 “俺(私)は生きてきた証が欲しい!”


 素晴らしい!


 そう言う人達は、既に“自分は生きていてもいい”と思うことが出来ている。


 既に生きていく資格、生きる資格を持っている人達だ。


 僕は証を求める手前の段階で止まっている。


 まず、生きる資格が欲しい。生きていく資格が欲しい。


 ずっとそれを求め続けている。


 誰に願えば与えてくれるのだろうか?


 

 “僕は生きていてもいいのだろうか? 


 僕は生きることを許されているのだろうか?”



 誰が答えてくれるのだろう? 誰が資格を与えてくれるのだろう?


 その疑問は今も常に心の奥に。







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資格と証。 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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