君の名を
凛子
第1話
隙間風が吹いていた。
築五年の自宅が欠陥住宅で建て付けが悪い、というわけではない。
町内会の集会に参加した帰り道に、町内会長の
「
不意に近付いてきた町田に尋ねられた。
「いえ……違いますけど」
質問の意図が掴めず、瀬川
「ひまわり幼稚園の近くにあるブルーの屋根のお宅はご存じ?」
「いえ」
「昼間に瀬川さんのご主人が出入りしてるのを何度か見掛けたの」
よりによって、一番知られてはいけない人物に知られてしまった。ゴシップ好きでお喋りな彼女のことだから、もう既にご近所に吹聴して回っているのではないか、と気掛かりで仕方がなかった。
「余計なお節介かもしれないけど、瀬川さんのお宅はお子さんもまだ小さいし、小さな芽のうちに摘んでおくほうがいいんじゃないかと思ってね」
「そうですよね。知らせていただいてありがとうございます」
ありがた迷惑とはこのことだと思ったが、そう返すよりほかなかった。町田を敵に回すと、しっぺ返しが恐ろしい。以前、彼女に歯向かったご近所さんは、引っ越しを余儀なくされた。
けれども、今回のことに関しては、彼女の言うことがあながち間違いではないようにも思えた。ここ数ヶ月、夫の
次第に瑛斗への不信感が募り、その様子が本人に伝わったのか、なんとなくぎくしゃくし、いつしか二人の間に隙間風が吹き始めた。
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