狐依コンの異世界大冒険

みちづきシモン(狐依コン)

第一章

第1話「ワシ死んだはずじゃったのに……」

 ワシは確かに老衰で死んだはずじゃった。なのに何故か魂が、プカプカと浮かぶように空中に漂っておったのじゃ。

 性別は変わっとらんようじゃ、ワシは爺さんじゃから男じゃ。

 声が出ないのじゃ。一体どうなっとるのじゃ? そう思ったら首を下に動かせたのじゃ。足がない、幽霊じゃからかと思ったが次第に作られておるようじゃった。

 よく見るとワシの後ろ側に何かが振っておるのじゃ。狐の尻尾に見えるのう。


 足が作られると声が出るようになったのじゃ。

「ん、んんー? アーアー。ふむ。これは一体何なのかのう?」

 しばらく待っておると空が光り輝き出したのじゃ。

「よくぞ来た、彼の国の者よ」

 荘厳な顔の光り輝く者が現れて大きな声で言ったのじゃ。

「お前は生まれ変わり、狐依こいコンとなった!」

「こいコン? 何なのじゃ?」


 そやつはこの世界の神様らしい。この世界とはどうやらワシのおった日本のある世界とは違うらしいのじゃ。

 ワシのおった2080年の世界では色々悲しい出来事が世界中で起こっていて、解決策に政府が追われておったのう。

「お前にはこの世界の神様の一人になって欲しい」

「神じゃと? 恐れ多いのじゃ。じゃがもしその神にワシがならんかったらワシはどうなるのじゃ?」


「断るのか?」

「断ることは出来んのかのう?」

「出来るがお前にメリットがない」

「では神になるメリットは何じゃ?」

 神様は下を指差す。ワシはもう一度下を見るのじゃ。そこには地面が続いておったわい。

「この世界の人々を救うことが出来る」


 何じゃそれは? と思ったのじゃがワシにとっては好条件じゃった。ワシは了承して説明を聞くのじゃ。

「了承したな? よろしい、では頑張れ!」

「ん? せ、説明は……」

 問答無用で下に落とされたのじゃ。

「ぎゃあああ! 落ちるのじゃあ!」

 どんどん落下していくワシは世界の広さを見たのじゃ。空から見えるのは山々、海の端や川、そして森も見えたのじゃ。

 ビル等があったワシの元の世界とは違う。田舎のような世界じゃった。

 地面に衝突したワシは何回かバウンドして地面に転がったのじゃ。

 生きとるのが不思議じゃったが、神様じゃからかもしれんのう。


 クレーターもできとらんし安心したワシはとにかく街を探したのじゃ。

 ワシは人助けをするために神を引き受けたのじゃからそれは当然じゃろう?

 しばらく歩くと町があったのじゃ。文字は読めないのじゃが、町に入ると活気があってどうでも良くなったのじゃ。

 じゃがこれではワシのいる意味がなさそうじゃ。オマケにワシの姿は見えとらんようじゃ。


 ワシはどうしたらいいのか途方に暮れたのじゃ。誰にも触れられないし、誰に喋りかけても反応ないから聞こえとらんのじゃ。

 困り果てておると教会に着いたのじゃ。中に入ろうとして、どうやってドアを開けようか迷ったのじゃ。

 じゃがすり抜けられたのじゃ。

「ごめんくださいなのじゃ」

 中におった者に声をかけたつもりじゃったがやはり届かない……そう思ったのじゃ。


「ああ! ようやく来てくださったのですね!」

 奥から女子が走り寄ってきたのじゃ。

「どうしたのですか? ルナ」

 ルナと呼ばれた女子はワシのところにやってきて膝をついて祈るのじゃ。

「お主、ワシが見えるのか?」

「はい。私は神様を導くために産み落とされた聖なる巫女、ルナです。お名前を伺ってもよろしいですか?」

「狐依コンじゃ。コンと呼ぶが良いのじゃ」

「コン様ですね。お困りのようですが」

 ワシはよっぽど困った顔をしとったらしい。それがルナに伝わったのじゃ。


「ワシ、何をしたら良いのかわからんのじゃ。何かこの世界には困り事はないかのう?」

「たくさんありますよ」

 ワシが尋ねるとルナは悲しそうな顔をしたのじゃ。

「どうしたの? ルナ。さっきから独り言を言って」

 シスターらしき人が心配そうにルナに尋ねるのじゃ。

「コン様という神様が降臨なされたのです」


 正直信じられん事じゃろうと思ったのじゃが、シスターは驚いた後、人を集めてワシがおる辺りで祈ったのじゃ。

「信用されとるのう」

「聖なる巫女ですから。それよりコン様のやりたい事は人助けでいいですね?」

 ワシは頷いたのじゃ。するとルナはワシに触れて手を引っ張ったのじゃ。ワシは触れられる事に驚いたのじゃが、ルナはワシに干渉できる唯一の存在のようじゃった。

 ワシは引っ張られて外に出て、何が何だかわからん状態で、ある場所まで連れてこられたのじゃ。

 銀髪長髪の女の子、ルナは……この世界でワシにとってとても重要な役割を持っているのじゃ。

 聖なる巫女という職業の事を知りながら、ワシはこの先不安に襲われそうなままに、旅を始める決意をしたのじゃ。

 この人生はどんなものか、いや……この神生はどんなものなのかのう? それを楽しみにするワシがいたのじゃった。

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