僕のワクワク大作戦③ セミ大作戦〈前編〉〜再び空を目指して〜

@takapapa0716

第3話

「人はなぜ、空を飛びたがるのか?」


前回の【蜻蛉大作戦】で盛大に失敗した僕は、

顔を腫らしながらも、まだ諦めきれずにいた。


寝ても覚めても飛行のことばかり考える毎日。

あの失敗のあと、僕の中には――すでに新しい作戦の完成形が浮かんでいた。


* * *


「マメの川流れ事件」から一週間。

僕は熱まで出して布団に寝込んでいたが、頭の中では飛行構想がグルグル回っていた。


「失敗は成功の母である」


……って、誰の言葉だったか知らないけど、当時の僕にとってはそれがすべてだった。


ゲームもYouTubeもない時代。

退屈な日常に、僕は常に“刺激”を求めていた。


だからこそ、僕は仲間たちにこう呼びかけた。


「お菓子やるから、お見舞いに来い!」


そして、集まった友人たちを前に言った。


「新しい作戦、発表します!」


乗り気な子、やや引き気味の子、

「親に“あいつとは遊ぶな”って言われた」と露骨に言う子。

いろんな反応があった。


でも僕は、熱弁した。


「前回と比べて、今回がどれだけ進化してるか、説明させてくれ!」


その熱量にあてられて、皆の警戒心は徐々に薄れていった。


「今回が最後な!」という条件付きで、チームは再結成された。


* * *


最大の難関は、マメの説得だった。


小柄で軽いマメは、飛行ユニットの要(かなめ)だ。


「いやだよ! また流されるのはごめんだ!」


そう拒否するマメに、僕はこう持ちかけた。


「ホームランバー、毎日1本、1週間おごる!」


「……ほんと?」


マメは即答でうなずいた。


(……なんてチョロいんだ)と思ったけれど、僕はそれを顔に出さずに大絶賛した。


よし、これで全ての準備が整った。


いよいよ、飛行計画第二弾――作戦決行の日がやってきた。


今回の改良案、それは……

「動力を“蜻蛉”から“セミ”に変更する」というものである!


「セミ? 本当に蜻蛉より飛ぶのかよ?」


そう訝しむ仲間たちに、僕は胸を張ってこう言った。


「あのパワーを見ろ! 地面であれだけ暴れるセミだぞ!?

あれこそ、空を切り裂くための“本物のエンジン”なんだよ!」


説得(?)は成功。

満場一致で、動力は“セミ”に決定した。


* * *


さっそく準備に取りかかる。


山の中の夏。セミなんて腐るほどいる。

1時間も経たずに、大量の“動力源”が確保された。


捕獲したセミたちは、箱の中で耳をつんざくように鳴きわめいていた。


「これ、超音波兵器になるんじゃね?」


そんな妄想を抱きつつ、僕は淡々と作業を進めた。


取り付け方法は、前回とまったく同じ。


ミシン糸でセミの体をくくりつけ、それを安全ピンでシャツに固定していく。


──あれだけの騒動を起こしておいて、構造は一切変わっていない。


「そこは進化しろよ」と言われそうだが、僕たちには道具も技術もなかった。


* * *


そしてついに完成した。

仮称・フワフワ大作戦2号!


再び空を目指す少年たち。

果たしてその結末は――?


(※後編へつづく)



あとがき


飛べなかった過去を背負って、セミという新たな希望とともに再挑戦!


次回、ついにその飛行実験が実施されます。

はたして、空は彼らを受け入れてくれるのか――!?

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