作者様は普段、SF作品を多く手掛けておりますが、本作の掌編集はSFとは一味違う傑作の粒ぞろいです!
純文学的かつ、幻想的、はたまた逃避行ものなど……「夏」という季節の中に描かれる、バラエティーに富んだ作品ばかり!
個人的に気に入りましたのが、「7月2日 うるさい東京」です!
店先で風鈴の音に魅せられた少年と、少年を避けて道を往く人々のすれ違いを、店内にいた「あたし」の視点で描いた作品です。
情緒ある心を感じながらも、都会の人間としての在り方の狭間に揺れる主人公の視点……とても素晴らしいものでした!
他にも、水泳部女子の悩める心を描く「7月3日 わからない」や、男女逃避行ものの白眉たる「7月7日 走れ逆メロス」など、心に深く刻まれました!
どれも1000字前後で、読みやすいところも素晴らしいです!