第二部・世界創造の巨大ロボット群

第2話・ナミ爆転生……裸のエヴァ?

 心地よい風が裸体を撫でいく感覚に、イザナミことナミは目覚めた。

「んんっ……ここどこ? あたし確かに旧約聖書の創造世界に負けて消滅したはずじゃ?」


 エデンの動物たちが取り囲む涅槃図ねはんずのような中……平らな岩の上で仰向けで横たわっていた、ナミは上体を起こして自分の体を見て声をあげる。

「な、この体は……旧約聖書のエヴァの?」

 ナミは盛っている自分の胸を、金属手甲の手で触る。


「やっぱり、胸大きい」

 甲冑のような足甲、額の金属防具、傍らに置かれた剣帯の鞘に入った聖剣。

 すべてが、自分の日本神話創造世界を消滅させた。

 旧約聖書の原祖女性の体だった。

「あ、大切な箇所は無毛だ……ふ~ん、これがいいんだ、無毛が好みなんだ」

 その時──エデンの茂みを掻き分けて、果物をカゴ入れて持ってきた。

 裸のアダムが現れた、アダムの姿はナミと同じ防具と剣を提げた格好だ。


 アダムは、ナミの近くに座って、果物カゴを差し出して言った。

「ナミ、気がついたんだ……食べて、大丈夫『禁断の果実』じゃないから」

 ナミはカゴの中から、大きなバナナを取り出すと皮を剥いて口にする。


 バナナを食べながらナミが、アダムに訊ねる。

「あなた、この旧約聖書世界を造った創造主クラスメイトでしょう……自分が創造した男体に意識を移したの」

「ナミの近くにいたくてね……ダイブする前の名前は消滅したから、アダムでいいよ……オレもナミって呼ぶから」


 バナナを食べ終わったナミは、イチジクとアケビを食べはじめた。

「教えて、何がどうなっているの?」


「オレが説明するよりも、ナビ狐で担任の狐目先生に聞いた方が早い……狐目先生、ナミに説明お願いします」

 アダムの声に、天から女神のような天女のような格好をした、女性がゆっくりと降りてきた。


 キツネの耳と尻尾を生やした、インテリア眼鏡の担任教師──ナビゲーター役の狐目きつねめ先生が着地して言った。

「説明しよう……クラス全員がフルダイブVRした、メタバースゲーム『天地創造ワールド』はゲームである限り、どうしても外せない部分がある……」


 ダイブ前にアラサー年齢が間近かだった狐目先生の説明は、ナミも最初から知っていて、クラス全員が承諾している事柄だった。


「【生き残る創造世界は一つだけ】……このシステムは変えられない……この縛りで、最後に残った二つの世界が戦って、旧約聖書世界が勝者して日本神話世界は消滅した」


「それは知っています……あたしが知りたいのは、どうして消滅したはずの、あたしが存在しているのかってコトです」


 アラサーの誕生日前に、クラスの引率を口実にフルダイブVRして、ナビゲーター役の永遠の女神──〈アディティA d i t i〉と呼ばれる存在になった狐目が、頭を掻きながら言った。

「いやぁ、これはあたしも知らなかったコトなんだけれどね……ゲームを一巡クリアーすると、プレーヤーにボーナスで三つの願いを叶えてくれる、サプライズが存在していたみたいなの」


 ナミの日本神話世界を滅ぼした、旧約聖書世界の創造主生徒は、滅んだクラスメイトの創造世界を全て復活させて、自分の旧約聖書世界と融合した新世界を創造した。


 永遠の若さを手に入れた狐目先生が、涙目で言った。

「やっぱり、このクラスは最高ね……なんだかんだ言っても、全員の創造世界を一つにまとめちゃったんだから……ダイブ前の生徒名は消滅しちゃったけれど……アダムえらい!」

「でも、わからないコトが一つあります……あたし、なんで旧約聖書世界の、裸のエヴァになっているんですか?」

「それは、アダムくんの二つ目の願い……ナミをエヴァにして、裸を近くで眺めていたかったんだってさ……裸でも『禁断の果実』食べていないから、ぜんぜん恥ずかしくないでしょう」

「確かに……裸でも羞恥心が起きない……まるで、銭湯の浴室か入浴施設の脱衣場にいるような変な感じ」


 アダムが言った。

「三つ目の願いは、咄嗟に思いつかなかったから保留……願いの有効期限はないみたいだから」


 ついでにナミは、フルダイブVR世界の外部現実世界について、狐目に聞いてみた。

「先生は知っているんですか? あたしたちがクラスごとフルダイブした後の、現実世界がどうなったのか?」


 狐目はナミから、目をそらして言った。

「それ聞く……世の中には知らない方がいいコトもあるのよ……心配しなくても大丈夫、ゲームシステムは人間がいなくてもAIに電気が自動配給されている限りは、永遠に続くから……プレーヤーの肉体が滅んでいても」

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