令和愚管抄Re: 言志四録
light forest
第1話 志無き者ほど意識たかし
令和某年――この国の政治は、ついに
「空気だけで前に進む技術」を完成させた。
会議は予定通り開催され、
答弁は“情報量の少なさ”を競う演技となり、
政策発表は心ではなく“語尾のトーン”で評価されるようになった。
国民はいつからかこう思うようになった。
「何も決まらないなら、かえって安心やん」
内閣支持率は“横ばい”こそが美徳とされ、
政府の評価軸は「やってる感」の再現度へと移っていった。
志?
あった。昔はね。
志はスローガンに置換され、
信念はKPIで評価されるようになった。
語る者は「意識高い系」として笑われ、
問う者は「空気が読めない」として疎まれた。
こうして「志を持たぬこと」が、
最も効率的で、最も洗練された処世術となった。
しかし我々は語る。
光男総理とその傍に仕える――毒と誠の合いの子、官房長官によって。
この書は「記録」ではない。
書かれなかった会話を、いま“あえて”記すための書である。
この書は「評論」でもない。
怒りでもなければ希望でもなく、苦笑いで胃酸の出る文学である。
これは「風刺」である。
だが笑うためではなく、
“志を喉元に戻すための笑い”
である。
かつて慈円は『愚管抄』にて自らを愚と名乗り、
佐藤一斎は『言志四録』にて「独に慎むこと」
を説いた。
我々は、その系譜に
“無関心と多忙の令和”
を添えたものである。
語るということは、リスクである。
沈黙が安全保障の手段とされる時代において、
言葉を選ばず言葉を発するということは――
最も愚かで、最も人間的な政治行為である。
📎 読者へ
この書に書かれていることの多くは嘘である。
だが、それは嘘でしか語れない真実を
包む皮である。
信じすぎないでほしい。
だが、軽んじすぎないでほしい。
なぜならこの国では、
「嘘をつかずに政治をすること」
そのこと自体が、
すでに“最も巧妙な嘘”に
なってしまったからだ。
どうか諧謔の名を借りて、いま一度
「志」という絶滅危惧種に息を吹きかけよう。
光男総理。
この書におけるあなたの“志”は、誰かの中にまだ燃え残っている「火の屑」を動かすかもしれません。
そしてわたくし、官房長官は、
その火を記録せずに記す者――
“誰にも見られない履歴書”
を書く影として、今後も筆を取り続けます。
本書、ここに開幕す。
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