9機目

(島外海上)

2機のヴァーニマエが敵ヴァーニマエの迎撃に当たっていた。

今はまだ通常兵器の有効射程外という事で、他の援護は望めない。というか、あの通常の兵器が役に立っているのを見たことがない。


160ひろ087はな、そっちに敵機が行った。すまねぇ、頼んだ。」

「しゃーないね。283つばさ210ふうとが撃ち漏らした奴はこっちで何とかするから、前は任せるよ。」


機体製造番号VA-160。遠距離支援型として作られた。ピンク色を基調とし、ところどころに差し色の黄色が輝く一機だ。メイン武装はヴァーニマエ用長距離射撃銃。意外と連射性と威力ともに申し分ない。GN―077。番号通り77人目の適合するヴァーニマエを見つけた少女。髪を染め、見た目を変えているが、実は物静かな性格をしている。

そんな160ひろ087はなは襲来する敵機の体を撃ち抜いていた。しかし、前で戦う仲間への誤射を気にしていて、なかなか敵機のコアに当たらない。


「うーん。四肢には当たるけど、ここからだと2人にもあたりそうだよ。」

「分かった。なら、160ひろ087はな。あとは俺たちがやる。その間に一機強そうなやつの牽制だけ頼む。」


機体製造番号VA-283。全身が澄んだ青色に輝く近接戦闘特価型だが、剣の武装ではなく、両手のサブマシンガンで戦う。近距離での破壊力は高い反面、少し距離が離れると、役に立たない欠点もある。そして、283つばさの相棒のGN-210。琉翔が来るまで、クラス唯一の男子だったが、彼は283つばさ一筋である。物腰柔らかそうに見えて、結構好戦的。

そんな283つばさ210ふうとは先ほどの二人に代わって、5機のヴァーニマエを1機で相手にしていた。しかし、彼らにとって、これは造作もないことだった。5機の内1機に近づき、すれ違いながら胸部装甲の中のコア目掛けて、弾を打ち込む。そのまま反転し、別の機体に近づく。背面からの攻撃になすすべなしの敵機は背中の推力をなくし、海中に沈んだ。


そんな様子を地上で琉翔と柚は眺めていた。サブマシンガンを持つ機体によって、敵機がどんどん片付けられていく。


「あれ?これ僕らの出番なくないか?」


そう呟いた瞬間、一機、別次元の動きをする敵機が長距離銃を持つ機体の銃を切り落とし。サブマシンガンを持つ機体も一蹴りで来たいを海中に沈めてしまった。


「ヤバい。このままだとここが持たない。僕らも行こう!」

「言われなくても行くわよ!ほら、手を貸して!」


柚があの時と同じように詠唱する。


「グベルニーター承認。モードチェンジ。ヴァーニマエ起動。コード、ヴァ―チューズ!」


再び僕は柚の中(コクピット)にいた。僕らの変形に敵が気付いたらしい。こっちに向かってくるのがモニターから見える。敵は剣を大きく振りかぶっている。


「もう気づいたのかよ!」


僕は操縦桿を操作し左に避けようするが、なぜか機体が重い。避けること自体はできたが、最初に乗ったときとは感覚が違うのだ。


「ちょっと!今のは右でしょ!なんで左に避けるのよ!」

「え?いや。だって…」


僕が困惑していると、急に敵機が話しかけてきた。


「おいおいこの前の動きはまぐれかよ。期待外れだなぁ。」

「何を言っているんだ?」

「なんだ?覚えていないのかよ。ひどいなぁ。この前君と戦ったじゃないか!」


え?あの時の機体…。まだ、生きていたのか!


「せっかく再会できたんだ。ラウンド2と行こうぜ!今度はヘマしない!」


なんで敵機と通信会話できるんだよ!あぁいや、元々この子、敵側の子だったわ。



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君の体を預かりたい。 永遠の消しゴム @Sukld

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