4機目
移動中、特に誰も話さない静寂な時で、正直居心地は悪かった。それに、僕と柚の首にそれぞれつけられた見たこともない拘束具。先ほどのリーダーらしき人が言うには形式的なものと言っていたが、つけられた側からすると、心象が悪い。
本当に信用できるのだろうか。あの場で断ればよかったが、どうも逃げられそうになかった。
そんなことを考えていると、町の中心のとあるビルの前に車は止まり、そのまま最上階の奥の部屋に案内された。部屋に入ると奥の机に座っていた人物が立ち上がり、その横に控えていた数人の部下らしき人と一緒に僕の前に来る。目の前に来た人物はかなり若い。新社会人といっても信じるレベルだ。
「初めまして。わたしは元宮宗一だ。いきなり呼び出したり、拘束具を付けたりしていまい、わたし達への印象は最悪だと思うけど、わたし達リーンカーネーションの立場としてはこうせざるを得なかった。まずは謝罪させて欲しい。本当にすまない。ただ、その拘束はまだ解くわけにはいかない。」
そう言って、元宮と名乗る人物は頭を下げた。
「とりあえず座ってくれ。君たちからは聞きたいことがいっぱいあるんだ。」
その場にいる人全員が席に着く。そして、再び元宮が話し始める。
「まずは名前を聞いてもいいかな?」
「僕は神楽琉翔。高2だ。」
「わたしは柚。知っていると思うけど、ヴァーニマエよ。名前はさっきもらった。」
「琉翔君に、柚君だね。柚君がヴァーニマエという事は、るか君がそのグベルニーターで間違いないね?」
グベルニーター?なんだ、その聞いたことない単語は。僕が返答に詰まっていると横にいる柚が代わりに答える。
「少し違います。」
「ほう。何が違うか、教えて欲しいね。こちらもまだ、情報が不足しているんだ。」
「まず、私がヴァーニマエであるのは事実です。ですが、彼は違います。一般人です。彼はたまたま倒れていた私に声をかけてくれただけです。彼だけは早く解放してください。」
柚のどこか僕を他人のように扱う様子になぜか、反抗したくなった。
「な、何言ってんだよ、柚!僕は君の力になるってあの時言おうと思った。それに君もよろしくって言ってくれたじゃないか!」
「あ、あれは、その…。せっかくくれた名前を名乗らずに去るのも変だし。
お礼も言ってなかったし。それよりもあなた!本当にわかってる?私に関わることの重大さを!私はWSMOの研究施設から逃げてきたの!今も追われているの!あなたも死ぬかもしれないのよ?どうして私にこだわるの?何も知らないあなたが!」
僕の言葉に柚は少し泣きながらさらに強く言い返してくる。
「だって、ここで、逃げたらまた後悔することになる。ただそれだけだよ。」
弱々しく僕はつぶやいた。何も知らないのに首を突っ込んだ。絶対に手を出すべきではなかったのは知っている。けど、なんとなく君を見つけた時、昔の自分とまた同じ状況になったと思った。あの時自分にできなかったこと、今ならできる気がしたんだ。
「そう。ならまずはこの世界の話を聞きなさい。何も知らないままじゃ、私も困るから。」
柚は少し嬉しそうにしていた。
「そうだね、琉翔君。君もこの世界の新たな問題について知っておく必要がある。話を聞けば、君は絶対に憤慨するだろう。だが、これはあくまで、物事の一側面に過ぎないという事を覚えていてくれ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます