2機目
倒れている状態とは裏腹に、決意に満ちた顔を崩さない謎の少女に琉翔は疑問をぶつける。
「き、君は誰なんだ!?そしてまだ、この破壊は終わらないのかよ。それに、あのロボにどうやって生身で対抗するんだよ!」
「そんな心配はいらないわよ!私には考えがあるから。とりあえず死にたいのか、死にたくないのか、はっきりしなさい。」
彼女は名乗らない。あくまでも自分の要求が先らしい。
「倒れた状態で、ずいぶん生意気だな。死にたくないに決まっているだろ!君に手を貸すしかに決まってるだろ!」
僕は謎の少女の手を握り立ち上がらせる。その時、砂煙の中から、周りの建物を壊しながら進んでくる、一機の白い機械が近づいてくるのが見えた。こちらに気づいたのだろう。機械の目と僕の視線がかち合う。
白い機械がこちらに銃口を向けてくる。
「くっ。やはり、来たわね。時間がないわ。私の手のひらにあなたのを合わせて!グベルニーター承認。モードチェンジ。ヴァーニマエ起動。コード、ヴァ―チューズ!」
言われるがまま右手を差し出す。謎の少女は聞いたこともない言葉を並べ始めた。
「ヴァーニマエ?!君がそうなのか?でも、君は人間じゃないか!」
放たれるビーム。しかし、謎の少女と僕は白い光に包まれ、ビームをはじき返す。そして、気が付くと僕はコクピットのような場所の中にいた。
「こ、ここは?」
前を見るとさっきまで見上げるように大きかった謎の機械が同じ目線に見える。
いや、目の前のディスプレイに周りの景色が表示されているから目線が同じに見えるだけだ。僕が大きくなったわけではない。つまり、さっきの少女自身がこの機械になったという事だ。じゃあ、ヴァーニマエの正体はこんな僕と年の変わらない少女なのか?おさまらない疑問を解決したい気持ちが溢れるが、今はそれどころではない。2射目が来る。
僕は攻撃を避けるために跳びあがる。
「もう、これ以上町は破壊させない。聞こえるか?なんか武器ないのか?」
すると、右手側の操縦桿近くにさっきの少女がホログラムで出現した。
「聞こえてるわよ。というか、なんでこれの操縦できるのよ?」
「知るかよ。なんかどこかで、見たことあるんだよ。多分ゲーセンだと思うけど。」
「まぁいいわ。武器は手のひらの衝撃波発生装置だけよ。それ以外は私に搭載されてない。使い方は…」
「大丈夫。多分わかるし、出来る。このまま飛び続けて、近くの海上まで行く。ここで戦えば、さらに町を壊しかねない。町から海が近くて助かったぜ。」
「まぁ、そこら辺はあなたに任せるわ。でも、あなたの体力が切れたら、飛べなくなるし、武装も使えなくなることは忘れないで。」
返事をしようとしたとき、コクピット内にけたたましいアラートが響く。後ろから、さっきの二機の白い機械がビームを連射しながら追いかけてきていた。
「予想通り。これならいける。急制動をかけるぞ!」
足裏の姿勢制御用バーニアを前向きに全力で掛ける。先ほどの加速をなくす勢いで、一気に減速をかける。
分かっていても体が前に行きそうになる。慣れない急激なGの増加で、気を失いそうになるが、耐えきった。おかげで、追いかけていた二機と位置関係が逆転する僕が今度は追う側の立ち位置だ。さらに上を取られないようにするために上空を目指して、スラスターをふかす。
「これで形勢逆転だな!こんな単純な技に引っかかるなよ。」
僕の下側からビームを乱射してきている二機のうちの片方にめがけて、落下していく。
ビームを軽やかに避け、右手の武装を起動する。
「これでもくらえ!」
僕の攻撃は敵の機体の胸部装甲の中心にクリーンヒットした。
そして攻撃が命中した敵機はそのまま勢いよく海に沈んでいった。残ったもう一機はこれを見て、どこかに逃げて行った。その瞬間張り詰めていたものが途切れたのだろう。僕も機体ごと海に落ちて行った。
「町は守れたみたい…だ…。」
僕の意識はここで一度途切れる。
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