君の体を預かりたい。

永遠の消しゴム

前編:変わり始める世界

1機目

誰もが一度は願うことだろう。自分が世界を救う存在になれることを。

だが、その世界を救える力の実現の代償に多くの犠牲があったとしたとしても、君はそれでもまだその力を求めるだろうか。世界は未だに理不尽で不平等だ。

この混迷した世界の未来は誰にも予測することはできない。

いつどこで誰が何をしたかが予想もしなかったところに影響を与える。

いい方にも悪い方にも。




まだ残暑が厳しい9月某日朝のとある町の河川敷。

一人の少年、神楽琉翔かぐらるかが道を歩きながら考え事をしていた。

そんな時、たまたまふと空を見上げると、かなり遠くの方で何か輝く光が見えた。


「な、なんだ。あれ?UFOか?」


一瞬の出来事だったため、何かの見間違いだと思い、そのまま学校を目指すことにした。しかし、再び今度は複数の光が見えた。

今度はさっきよりも見えた位置が近い。こちらに迫ってきているように感じた。

立ち止まって眺めていると、ついに肉眼でも光の正体が鮮明にわかるようになる。


「メカ?ロボ?いや、あれが、そうなのか?」


上空から飛来、いや落下してきている謎の白い人型の機械がその後ろから来る別の二機のほぼ同じ見た目をした白い機械に攻撃されていた。

その機械たちは機体色と同じ色の大きな羽型のバインダーを背面に備えていた。

その姿はまるで天使と形容できる。だが、頭部に輪はない。

代わりに両耳に相当するところにアンテナがそれぞれついて、なぜか悪魔の角を思わせるデザインだった。

後ろの二機の銃口が光り、黄色い光線が二つ、先行する機械に向けて放たれる。

しかし、これはその機械に当たることなく、琉翔の近くの民家に着弾する。

民家が吹き飛び、火の手と砂煙が上がる。今日まで平和だった日々が突然終わりを迎えることになる。

たった2射とはいえ、町を混乱させるに十分だった。

近くの壊された家々の残骸の近くから、泣き叫ぶ声、焦り怒り狂う声、さまざまな声が聞こえてくる。琉翔の方にも、今まで受けたことのないほどの強い突風が襲った。琉翔は吹き飛ばされそうになるのを耐える。

しかし、そんな彼をまるで吹き飛ばすためかのように、再び天から光が降り注ぐ。

間一髪自分には当たらなかったとはいえ、また町が壊される。

人々の絶叫の量も増し、近くで騒いでいるかのように聞こえる。


「こんなとこ何してるんだよ!戦わないでくれよ!」


腰が抜けて立ち上がれないのが、せめて空を見上げて、未だに攻撃をやめない二機を睨みながら吐き捨てるように琉翔は叫ぶ。もう何回地上にビーム攻撃が当たったかは分からない。ただ、この一連の攻撃で多くの人が死に、傷ついたことは確かだ。

そんな中、ついに逃げ回って落下してきた機械に攻撃が当たってしまい、勢いよく落ちてきた。少し離れているがここから遠くない。

大きな土煙を上げ、落下地点の住宅街を破壊しつくしたのだろう。

「おい!あっちって僕の家の方角じゃないか!やっべ!家にはまたあいついたはず…。いやでも、あいつも逃げているか。あーでも待て、生き埋めの可能性もある。」


無防備にもほどがある格好で、無謀にも琉翔は落ちてきた謎の人型の機械の近くまで行こうと決意した。





土煙の中に入るとその中は地獄絵図。破壊と混乱の渦の中、逃げ惑う人々。

炎と煙に包まれた建物の近くには血を流し倒れている人、誰かの名を呼び叫ぶ人々。そんな人々の動きに逆流するように琉翔は進んでいく。


「すまねぇ。あとで戻るから、まずは落下地点まで行かせてくれ。」


本当なら助に行くべきなのだろうが、今はそれどころではなかった。気になることを解消したい気持ちに心が支配されていた。

そして、ついに大きく町の道路がへこんだ地点にたどり着いた。確かにそこには大きな機械が落下したようにクレーターが出来上がっていたが、肝心のさっき空中で逃げ惑っていたあの謎の機械が見当たらない。

(ちなみに、家は無事だった。ギリギリクレーターの外にあった。)


「どういうことだ?もしかしてまた、飛んだのか?落下してたよな?まだ動けるとは思えないぞ。」


琉翔は恐る恐るクレーターの中に下りていく。さっきまで気にしていたこととは別だが、こちらも気になるので、それを確認するために琉翔は進んでいく。

目の前を覆う砂煙をかき分けるかのように進んで生き、ついにクレーターの中心近くまで来た。

そこには白い肌にそれほど長くない白い髪、全身近未来さを感じる白い服を着た人が倒れていた。あまりにも異質でこの世のモノとは思えない雰囲気を纏っている。琉翔は近づき、覚悟を決めて声をかける。


「お、おい。大丈夫か?い、生きているか?」


琉翔の声に気づいた謎の少女は顔だけこちらに向けてくる。そこには黄金に輝く冷たい二つの瞳がこちらを射抜くように見つめてくる。だが、僕はその瞳に吸い寄せられるように彼女を見つめていた。


「ねぇ、私にかかわらない方がいいよ。死にたいの?もうすぐあいつらが来るわよ。あぁそういえば私がナニモノか知らないわよね。知られていないから仕方ないけど。まぁ、私を見たという事は本来死以外の道はないらしいけど、今はいいわ。私も殺されるし。ところで、あなた?どうしてここに来たの?でも今はそんなこともどうでもいいわね。不躾で悪いけど一ついいかしら?もし死ぬのがお望みじゃないなら手を貸して。私はこんなところで死ぬわけにはいかないの!」

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