戦国城廻り

斐川帙

一、山中に眠る城跡

(一)

 浦和から飯能はんのう方面に行くには、同じ埼玉県内とは言え、結構、面倒であった。

 まず、大宮に向かう。それから、川越線で川越に向かう。しかし、この路線は大宮と川越という大きな都市を結んでいるにも関わらず、未だに単線で、そのため、意外に列車本数が少ない。大体、十五分程度は待たされる。

 川越からは八高線に乗り換える。大宮での接続の悪さに比較して、川越での接続はいい。大抵、八高線の列車が、川越線の列車の向かい側で乗り継ぎ乗車を待っている。ここから、高麗川こまがわまで乗車する。たまに八王子方面まで向かう列車があるが、大抵は高麗川止まりなので、高麗川で八王子方面行きの列車に乗り換えて、東飯能まで乗車する。ところが、同じ八高線であるにも関わらず、ここ高麗川駅での接続は非常に悪い。三十分近く待たされることもざらだ。ちなみに、さらにひどいのは、高崎方面の列車である。平均、一時間に一本の割合なので、下手すると一時間以上待たされることもある。

 東飯能で西武秩父線に乗り換える。

 今回の下車駅、東吾野あがの駅は、東飯能から三つ目の駅だった。


 今回のルートは、東吾野駅から高麗川上流にちょっと行ったところから、沢伝いに山中に入り、大高山おおたかやま天覚山てんらんざんの尾根を越えて、さらに周助山しゅうずけやまの尾根を越えて、天神峠まで向かい、そこから山中に入り、南下して尾根伝いにりょうがい山に向かうというものだった。天神峠からりょうがい山までは、地形図に道の記載はない。地形図の等高線を頼りに歩くしかない。

 ちなみに今回の目的地、りょうがい山は、標高三百メートルくらいの無名の山である。恐らく、地元住民でも、知らない人がいるかもしれない。それくらいの何の特色もない地味な低山である。登山家はもちろん中高年ハイカーでもまず訪れるどころか興味さえ持たないところだろう。そんなところに、なぜ、向かうのかといえば、そこに中世の城郭跡が眠っているからである。

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