第27話 オークスの援軍

連携訓練を始めてからあっという間に一週間が経過した。


この一週間は非常に充実感に満ちていたと思う。

冒険者の皆はいつも以上に血気盛んに取り組んでおり、本気度が伺えた。

それもすべて騎士団長ジーク・パトライアへの反骨心だと言うのだから驚きだ。

実際私も冒険者の皆の本気具合を目の当たりにして非常に驚いたものだ。

ちょっと癪に触る物言いをされただけで一週間もマジになったのだから。

ギルドマスターも向上心の強いやつは大好きだと言っていたので、もともとは頑張り屋なのだろう。

日を跨ぐごとにその言葉が多くなっていったので、そろそろ口癖になるのでは?と感じている。


ここで一週間の進捗を伝えておく。


まず初日。

この日は連携訓練初日ということもありボロボロであった。

各パーティの特徴も分からず、バラバラの戦い方をしていたのであった。


二日目。

初日と違い騎士団の協力を経て連携訓練は再開された。

この日から冒険者の顔付きが変わった。

騎士団長ジーク・パトライア。

気に食わない人だけど、人を乗せるのが上手いのかも?とすら感じてしまう。

そして、"深紅の刃"と"黒王戦艦"の模擬戦。

これを目の当たりにして、冒険者の目にさらに火がついたように感じた。


三日目。

冒険者の士気は異常であった。

と言うか皆ピリピリしていた。

結果は散々。

昨日より酷かった。

模擬戦は怒りのぶつけ合いといった感じ。

アドバイスも耳に入っていないようだ。

仕切り直しといったところか・・・・・・。


四日目。

皆落ち着いたのか、一気に動きが変わった。

昨日の無茶苦茶ぶりから何かを学んだのかもしれない。

魔物狩りも模擬戦もなかなかに上達していた。


五日目。

この日から複数パーティ対複数パーティの模擬戦を本格的に始めた。

リーダーはもちろんあの三人だ。

やはり人数が増えると大変になる。

しかし、付け焼き刃にしては悪くないように感じる。


六日目。

今日も複数パーティでの模擬戦が中心であった。

昨日より連携が上手くいっている気がする。

しかし、やはり連携が一番上手かったのは深紅のカノンであった。

彼だけはすんなりとこなせていた。

レアードとルーファスはあと一息?


七日目。

付け焼き刃だが、騎士団の兵から及第点を貰った。

付け焼き刃だが、と強調されたが。

そう言えば、この日密かに騎士団長が様子を見に来ていたのに気づいてしまった。

ガロに聞いたが、実は毎日見に来ていたらしい。

軍の中に入るのなら状況知っておかねばならないとガロが言っていた。


ちなみにこの一週間で私は正式に"希望の守り手"に加入することになった。

急な加入により、レアード達と森での連携の為に隊を入れ替えることはしなかったが、模擬戦では違和感無く動けたと思う。

やはり私から見れば、レアードとの連携が一番しっくりくる。


この一週間の模擬戦でBランクパーティの"深紅の刃"と"黒王戦艦"の強さを目の当たりにしたが、やはり"希望の守り手"が一番強かった。

人数が少なくてもレアード達はとても強かった。

私が加わってからは圧勝だった。

AランクパーティとBランクパーティの間には大きな壁があることを学んだ。


それと最後に私をアネさんと呼ぶ人が増えた事は想定外であった。

どうやら4つ子の子達を中心に布教活動をしていたようで別グループの人達にまでアネさん呼びされていたことを知った時は驚いた。

ただ、おかげで親しみを持てたと言う人も多く、キッカケとなった事は良かった点である。






⭐︎






そして、八日目。

今日がやってきた。

レアード達と共に東門へ向かう。


今日も午前中は森で連携訓練を行うことになっている。

現在グループは希望、深紅、黒王の三つに分かれている。

そして、一グループが森へ魔物狩りへ行っている間、残りの二グループがグループ間、または別グループと模擬戦を行う方式となっている。


そして、森での訓練を終えた私達はいつものように昼食を食べに天幕へ向かう。


そこでは多くの冒険者が笑い合いながら、または不機嫌そうにしながら昼食を食べていた。


そんな中、私はその天幕の一角にレアード達とギルドマスターが共に昼食を取っていることに気がついた。

この連携訓練を通してギルドマスター自身も冒険者とコミュニケーションを取るようになったのかここ最近は昼食をこの天幕で共にすることが増えていた。


しかし、今日はいつもと様子が違う。

カインとリリィはゆっくり食べていたが、レアードとギルドマスターは昼食を掻き込んでおり、すでに終わろうとしていた。


何か用事があると察した私は離れて食事を取ろうとするが、レアードに呼ばれ隣に座る。


「おいおい、パーティが別々とか冷てぇじゃねぇか」


頬張って喋っている為、聞き取りづらいが辛うじて理解は出来た。


「用事あるの?」


レアードはギルドマスターに目配せすると、ギルドマスターが口を開く。


「これからオークスから冒険者の援軍が来る」


あの日言っていた高ランク冒険者パーティのことだと言うことはすぐに分かった。


「連絡を受けていてな。おそらくそろそろ来るだろう。騎士団の兵の補充でかなりの数を連れてきているらしいから、これからジークとレアードを連れて出迎えるつもりだ」


ジークの名前を出した途端、レアードの表情が険しくなる。

遺恨が残りそうだなと思いつつも、話を続ける。


「そんな訳で今日は午後の模擬戦は遅れる」


「分かった」


こうして、食べ終えたレアードとギルドマスターは天幕を後にした。


「援軍なんて頼もしいわね」


レアード達を見届けた後、リリィが口を開く。

膝をテーブルにつけ、手で頬を支えている。

その顔は笑みを浮かべており、ワクワクした様子が窺える。


「会ったことはある?」


「数年前に一度だけね」


間違えてなければね、と一言加えるリリィ。


私達はのんびりと昼食を楽しんでいた。






⭐︎






ギルドマスターガロはその後、ジークと合流し、南門で待機していた。

この場にいるのは、ガロ、ジーク、レアードの三人だけであった。

何故レアードもいるのかと言うと、軍を率いてくるのが冒険者だからである。


オークス領。

それはトレストを含むいくつかの城と都市で構成された領土であり、その中心都市がオークスである。

位置としてはオークス領自体はオルグランの隣。

すぐ西に位置する領土である。

そして、オークス領土主要都市オークスはトレストを南に二日ほど行った先にある。


その為、彼らが到着することになるであろう南門で到着を待っているのであった。


正直居心地が悪い。

それがガロの率直な意見であった。


始めこそ、連携はどうなっただの、警戒体制はこうなっているなど事務的な会話があったのだが、徐々に無くなり、今は黙って待っている状態である。

そして、レアードはずっと不機嫌を隠そうともせず時よりジークを睨みつけている始末。

ジークも分かった上で眼中に無いような態度をしている為、火に油を注いでいるようなものである。


そして、しばらくしているとようやく街道の奥からこちらに向かってくる人影が見え始めた。


近づいてくるほどに後列の長さに大変驚いた様子を見せるレアードに新鮮味を感じていた。


先頭にいるのは馬に乗った一人の男性。

金髪で立派な鎧を身に付けている。

その背後には十人ほどが馬に乗ってこちらに目を向けている。

そして、さらに後ろには隊列を組んで果てしなく続いていく軍の姿。


ガロは頼もしささえ感じていた。






⭐︎






「初めまして、になりますかね?Sランクパーティ"勇敢なる者"のリーダー、トライセン・ディクテイトと申します。そちらはトレスト騎士団団長ジーク・パトライア様。冒険者ギルドギルドマスター、ガロ・ブライトマン様。そして、トレスト冒険者ギルド筆頭Aランクパーティ"希望の守り手"リーダー、レアード様で違いありませんか?」


南門に到着し、馬から降りた先頭にいた男性はガロ達の目の前までやってきて、確認を始める。


トライセン・ディクテイト。

冒険者でありながら苗字があることからこの人物が貴族であることが読み取れる。

彼は貴族でありながら、冒険者として生きることを選び、結果Sランクまで上り詰めた経歴を持つ。

その為、冒険者にあるまじき礼儀正しさと言葉遣いを用いることが出来る。


トライセンが言い終わると、ジークが前に出て口を開く。


「よくぞ参られた。援軍に駆けつけてくれたこと誠に感謝する」


そして、丁寧なお辞儀を見せる。


レアードはこの光景を見て目を丸くしていた。

彼からしたらジークが冒険者に頭を下げると言うこと自体、あり得ないことだと認識しているのだろう。


「こちらはジーク様へオークス騎士団長様からの手紙になります」


トライセンはジークに認めた手紙を渡す。


ジークは丁寧な所作でそれを受け取るとその場で目を通し始める。


そんな姿を目にしたレアードはそっとガロに耳打ちする。


「おい、ギルマス!あいつってあんなやつだったのか?年下に頭を下げるやつじゃ無いだろ!?」


「あいつは人を見て露骨に態度を変えるやつだ。トライセンは貴族で振る舞いがいいときた。だからやつも礼儀を持って接してるんだろ


「なんかムカつく・・・・・・」


レアードは悪態を突いて、さらに不機嫌そうにする。


だが、そんな姿をジークが横目で見ていたことにガロは気づく。

レアードは凄まじい目力を受けると「地獄耳がっ!」と悪態を吐きそっぽを向く。


「何が書いてありましたか?」


状況に気づいているのかそうで無いのか、トライセンの発言に、ジークは視線を向ける。


「オークス兵五千をトレスト騎士団の兵として加えること。その上で指揮官を私に移すことが書かれています」


ジークは全てを読んだ上で簡潔にまとめる。


「畏まりました。アラン」


トライセンは男性の名を呼ぶ。

すると隊列を組んでいた兵の先頭に並ぶ内の一人が「はっ!」と大きな声を上げ、前に出てくる。

彼がアランと呼ばれる人のようだ。


「アラン。ただいまを持って指揮権がこちらのジーク様に変わりました。ここからはジーク様の指示に従ってください」


「はっ!トライセン殿もここまでの道中ご苦労様でした!」


アランはトライセンに感謝を伝えた後、ジークに敬礼をする。


ジークはアランについてくるよう伝えると、城壁を沿うように歩き始める。

おそらく騎士団が警戒している北門まで連れていくのだろう。


ガロとレアードはオークス騎士団に目を向けているといつの間にかトライセンが目の前まで来ていた。


「改めまして、お久しぶりです。ガロさん、レアード」


先ほどとは一転、親しみの感じる表情を浮かべて話しかけてくるトライセン。

どうやらトライセンはガロだけでなく、一度あっただけのレアードのことも覚えていたようだった。


「ああ、最後に会ったのは二年前だったな」


「覚えてもらえているとは光栄だな」


「何を言ってるんですか、レアード。たかが二年前・・・・・・・ですよ?」


トライセンはさっぱりとした笑顔を見せる。


「そ、そうか・・・・・・」


レアードは思わず引き攣った顔をしてしまった。






⭐︎






「そうだ。おそらく初対面だと思うので簡単に紹介させてください」


そう言うと後ろで馬に乗ったままの冒険者に声を掛ける。

冒険者は馬から降りると、疎にやってくる。


「とりあえず、パーティのリーダーだけこの場で紹介します。こちらは"神威一閃"のリーダー、レオーネ。そして、こちらが"楽園"のリーダー、エリザノーツです」


紹介された女性二人はそれぞれ一歩前に出る。


「初めまして、"神威一閃"がリーダー、レオーネと申します。よろしくお願いいたします」


「"楽園"のリーダー、エリザノーツだ。よろしくな」


それぞれが挨拶を始める。

レオーネは和風の着物を身に包んだ大和撫子といった雰囲気を感じさせる女性だ。

綺麗な長髪の黒髪で腰には二振りの刀を携えている。

エリザノーツは胸元の開いた過激的な服に短パンを履いており、長く美しくも筋肉質な脚を惜しげもなく晒している。

赤黒い髪をしており、褐色の肌が特徴である。

また背中に巨大でボロボロな大剣を背負っている。

それぞれの背後、レオーネの背後には二人の男性と一人の女性。

エリザノーツの背後には三人の女性がいる為、四人一組のパーティだと分かる。

また気づけばトライセンの隣にも男性二人、女性一人がいるので"勇敢なる者"も四人パーティなのだろう。


「彼女達は両パーティ共にAランクです。必ずお役に立てると思います」


「それは助かるな」


ガロとレアードはそれぞれ軽く挨拶を交わす。


「それより話は聞いています。連携訓練を行なっているとか?ご案内頂けますか?」


トライセンは切り替えが早いようで自己紹介が終わるとすぐさま話題を変える。


「ああ、こっちだ」


ガロに続く形でついて行くレアードとトライセン達。

トライセン達は乗ってきた馬を手で引いて歩くつもりのようだ。


「ところでお前ら、いつの間にか馬なんか買ったんだ?」


ガロは冒険者が馬に乗ってきたことに言及する。


「違いますよ。この馬はオークス騎士団長が譲ってくださったものです。数日とはいえ軍を率いる者が先頭で徒歩は頂けないという事で・・・・・・」


トライセンは恥ずかしそうに微笑んでいる。


「そうか」


「それより今回の一件、当事者から詳しい話を聞きたいのだが・・・・・・」


トライセンはレアードに目を向ける。

トライセンの目つきが変わる。

先ほどとは一転、のほほんとした雰囲気から真面目な雰囲気へと変わる。

レアードはその切り替わり様に目を見開く。


「あ、ああ、そうだな」


それからレアードの回想話が始まった。

ドラゴンワームとの戦闘から始まり、地下の空間に落ちたこと。

そして魔人によって一撃でドラゴンワームが仕留められたこと。

トライセンは始めこそ表情を変えなかったが、ドラゴンワームを仕留めた頃から、表情を歪ませていた。

他のパーティメンバーに目を向けても、同じ様に険しい表情をしていた。

やはり彼らからしても異常なのだと改めて認識する。


「そうか、そんなことが・・・・・・」


話を聞き終えたトライセンは開いた口が塞がらない様子で唖然としていた。


「トライセンも魔人の存在は知らないんだな?」


レアードは魔人の存在がどこまで知られているのか分からなかった。

その為、確認も兼ねて聞く事にした。


「全くの初耳だね。私のところは貴族の中でも位の低い一族だからね。私達のような低い身分の貴族には伝わっていないだろうね」


レアードはそういうものなのかと感じた。


「で、どう思う?」


ガロがトライセンに尋ねる。


「そうですね。実際に見合わせたわけではないので判断しずらいですが、聞いた範囲ではおそらくSランクでも上位。下手したらSSランクに匹敵すると思われます」


SSランク。

もはや次元の違うランク帯の魔物だと言う発言に目を見開くレアード。

しかし、それを見ていたトライセンに焦りの様子は無かった。


「とはいえSSランクと戦ったことがないわけではないよ。最上位騎士と私達が力を合わせれば討伐出来る強さではあると思う」


「そうか・・・・・・」


ホッとした様子を見せるレアード。

トレストの街は森に囲まれた場所故に他の街との交流が少なく城内の人間同士の結束が強い街であった。

レアードも例外ではない為、家族だけでなく仲間の皆も助かると言うのだから、その安堵感は計り知れなかった。






⭐︎






私はレアードとガロが数人の冒険者らしき人を引き連れてやってくるのに気が付いた。


城外を沿うように騎士団が進んで行くのを観察していた矢先のことであった。

皆兵がたくさん現れたことで何事かと目を向けていた。

私は話を聞いていたが、他の者はそうではないので当然の反応だろう。

かく言う、私も想像以上に多くて目を丸くしていた。


ガロが冒険者を連れて戻ってきた事により、私達は自然な流れでガロの元へ集まり、列を作る。

グループごとにまとまり5×8で三グループが横並びで並ぶ。


私は新たに来た冒険者に目を向けた。

男女のバランスが取れた構成。

四人一組で三パーティかなと推測する。


そして、その中でも人気は目立つ存在がいた。

その者は滑らかな金髪でキメの細かい肌をしており、高価そうな鎧をつけている。

腰には二振りの刀を差しており、その立ち姿は貴族そのものだった。

そして、特に驚いた点。

それは彼がとてつもなくイケメンだと言う事だった。

思わず息を呑むほどのイケメン。

女性冒険者は皆黄色い声をあげており、目を合わだだけで、もれなく顔を赤くしている始末。

別に興味はないけれど、その顔の造形の良さだけは私も認めるところであった。


その後、彼らの簡単な自己紹介が行われた。


まず"勇敢なる者"。

メンバーはトライセン、イーリア、ガイア、レイブンである。


トライセンは金髪、イケメン、そして貴族らしい。

確かに所作はしっかりしているような気がする?


イーリアはおっとりとした包容力のある女性で見た感じ尽くす系に見える。

そして、トライセンの妻だと言う。

笑みを浮かべて見つめ合う二人にとても強い絆を感じた。


ガイアは筋肉隆々の大男でゴリマッチョな見た目であることだ。

肌を褐色気味にまで焼いており、ハルバードを二振り背負っている。

戦い好きな雰囲気がある。


最後にレイブン。

寡黙であまり喋らないらしい。

口数自体少なく、コミュニケーションを取るのは大変そうだ。

目つきがキリッとしており、腰に剣を差している。


次に"神威一閃"。

メンバーはレオーネ、エイドス、ランザ、エスノト。


レオーネは綺麗な女性だ。

動きやすそうな着物に身を包んでいる。

ぶっちゃけいい匂いがしそう。


エイドス。

彼は寡黙な仕事人といった雰囲気を感じた。

目つきが鋭く、目で訴えてくるタイプかも?


ランザ。

小さくて可愛らしい。

治癒使いのようだ。


最後にエスノト。

彼はずっと眠っている。

レオーネが許可しているとのことだが何か理由があるのだろうか?


そして、"楽園"。

メンバーはエルザノーツ、アンネローゼ、セレスティア、ミニヴィア。


エルザノーツは赤黒い髪に露出の激しい服装。

そして褐色の肌が特徴的だ。

カッコいいタイプで女性信者が多そうなイメージだ。


アンネローゼは過激なお嬢様といった感じの女性だ。

茶髪を伸ばしており、なんか言葉の端々にエルザノーツへの執着を感じる。

ですわ口調のようだ。


セレスティアもアンネローゼ同様お嬢様といった感じの女性だ。

水色の髪を伸ばしており、エルザノーツを心の底から尊敬しているようだ。

過激な戦闘が好きとの事。


最後にミニヴィア。

小さくて気が弱そうなタイプの女性。

幻術使いのようでサポーターらしい。


簡単な自己紹介と共にその様な感想を抱いた。


自己紹介も終わったことで早速模擬戦に彼らも参加することとなった。






⭐︎






結果は"勇敢なる者"の圧勝劇であった。

彼らはSランク冒険者パーティだという。

その実力はSランクに違わぬもので、私を含めた"希望の守り手"との模擬戦でもその実力を如何なく発揮していた。

結果はもちろん惨敗。

トライセンだけは別格であった。


一方、"神威一閃"、"楽園"のAランクパーティとの模擬戦では五分の結果に終わった。


今回学んだのは、BランクとAランクに大きな壁があるように、AランクとSランクにも大きな壁があること。

そして、AランクとSランクの壁はBランクとAランクの差よりも遥かに大きいものであるようだ。


模擬戦後は皆で夕食を共にした。

幸い高ランクパーティではあるが、下の者を見下す様な人達ではなかった事に安堵した。

貴族であるトライセンやお嬢様っぽいアンネローゼ、セレスティア、そしてお淑やかタイプのレオーネも既に馴染んでおり、トレストの冒険者とバカやっていた。

トライセンとイーリアは囲っていた人に馴れ初めを話していた二人のウブな感じが堪らなかった。

ガイアとエリザノーツは豪酒の様で早くも子分を作っていた。

レオーネ、ランザ、ミニヴィアは楽しそうに周りのバカ騒ぎに目を向けており、アンネローゼとセレスティアはエリザノーツ、ガイアと共に楽しそうにしていた。

レイブン、エイドスは黙って夕食を頬張っており、エスノトは変わらず寝ていた。

やはり冒険者はどこまで行っても冒険者なのだと感じた瞬間であった。






⭐︎






この時既に良からぬことが起きようとしていることを冒険者はおろか、騎士団兵でも気付いていなかった。









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