第六章

第52話 その後

 一連の激動で、志喜は二日ほど寝込んでしまった。あおゆきのジュースや、茅野が改めて作った茅のミサンガやその他もろもろの施術をしてもやはり負担が大きかったのだ。

 茅野は羽多の心身の様子を見極めとケアをし、小清水は一人で島内を巡った。

 その後。

 カーフェリー乗り場の二階ロビー。間もなく本州へのお昼の便の改札が始まる。

 この日、茅野、小清水、羽多が戻るのだった。

「なあ、ほのか。今回の件て、お彼岸の期間だったってことも関係あるのか?」

「彼岸は別に幽霊が出やすいとかじゃないぞ。悟りの世界が彼岸で、私らが生きているのが此岸。春分、秋分の日を境に日本人の土着の思想と仏教が融合してできた先祖供養の一環だ。けどまあ、あながち違うとも言い切れんのか。とり憑こうとしたんじゃなくて、あの能面に宿っていた、例えば能面を作った人の、あるいは演者の誰かの未練がこの期に乗じて成仏したかった。優に忍び込んだ霊ももしかしたらな。まあこのメンツがいれば、必ず成仏させてくれると見込んだとも考えられるしな。思いは複雑ってとこだな」

 そう言って、あおゆきに視線を送ってみた。あおゆきは当たらずも遠からずといった、あいまいな感じで手を上げるだけだった。それをフウと息をついて納得したとばかりに茅野は納めることにした。志喜にもそう解釈するように促して、

「キセツは、いつまでいるんだ?」

 話題を変えた。

「後二、三日」

「じゃ入学式にな」

「うん」

 そう言った後、彼女から志喜へ茅のミサンガが渡された。用心のためのスペアとのことだった。

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