第41話 朝の様子

 翌日。カーフェリー乗り場に全員が集合。いつも通りのおめかし、制服、私服姿が並んだ。

「どうしたんだよ?」

 志喜はしきりに欠伸をする茅野に訊いた。

「金縛りに久しぶりにあってさ。首を絞められた感じなんてそれこそ久しぶりだったな。少し動けた拍子に数珠握ったら平気になったんだけど、その後寝られなくてな」

「そう。ボクも旅館の部屋の外に気配を感じたけど、出てみると誰もいなかった。宿泊してて初めてだよ」

「大丈夫? 二人とも」

 茅野からは中学時代によく金縛りになったり、その際に奇妙な現象を体験したりしたこと聞いたことがあった。今日はその上に、あの小清水が体験している。それ故に志喜には気がかりになる。

「ま、キセツに心配されてもな、私は何とかなるし」

「ボクも心配に及ばないよ。分かるだろ? それにここ数日の過密スケジュールで疲れていたせいかもしれないんだから」

 そう言われてしまえば、確かにその専門筋の茅野と、妖怪と人間のクォーターの小清水である。任せておくしかない。

「それより、今日はどこ行くんだよ」

「そうそう、ボクの観光にもなるんだろ?」

 二人の明らかな気遣いを無下にしてはならないと感じた志喜は、昨日行きたい場所があると言った羽多に行く先を尋ねた。

「それで、優タン。どこに行くの?」

「ここです」

 パンフレットを指さす。そのパンフレットは観光協会が作成した、名所旧跡や、市や県や国に指定されている文化財の位置を示す島全体の地図だった。

「そして、ここと、ここと、ここ」

 続々とパンフレットのそこここを指さす。

「神社とか仏閣ばっかりだな」

「博物館もあります」

「いやそうだけど。えらい古風だね、優タンて」

「くれぐれも誤解してほしくないのですが、歴女ではありませんから。武将に萌えたりもしないので」

「そう。暁はいい?」

「ボクはどこでもOK」

「よし。じゃ、ルートは」

 志喜がバスの時刻表とバス停、そして羽多が行きたいと言った場所の位置確認をする。祖父から観光地を運行する、バスとかタクシーがあると教えてもらっていたので、カーフェリー乗り場の施設内にあるバス会社の受付へ。すると、二日前までの予約が必要だと言われた。が、そこに祖父の顔見知りの人が通りかかった。しかも、その事務所に知り合いがいたらしく、何とか融通をきかせてもらった。一同礼をして感謝を示した。

 五人プラス幼児に見える一人は、中型のタクシーで観光コースを巡ることになった。県内に現存する唯一の五重塔や咎によって流刑された上皇が安置されたと言われる墓とその近くのミュージアムや、鎌倉時代にやはり流刑となった僧侶が開いたとされる寺院やらを巡った。

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