第26話 あおゆき、行く
「そういうことを平気で言うんだよ、あいつは。キセツはさ。そんな奴だから。あいつはきっと責めない。だから私も責めない。きっとキセツは守りたいんだよ。きっとあいつならこう言うぜ。『あおゆきさんがオオカミの身体で野獣の力に完全に抑制されていたのなら、僕の声も撫でる手の温もりも感じられなかった、そしてまた戻ることはなかったはず。だとしたら、あおゆきさんはあおゆきさんだよ』ってな。たく、あいつは……」
「それでも」
重々しくあおゆきは口を開いた。がっちりと手を握りながら。手の平から血を流すくらいの力で。
「それでも私は……私を許せない」
「許せないって……」
「あの者を見つける」
あおゆきの目が鈍く光った。敵対心などという甘っちょろい眼光ではない。始末をつける、そういう決意だった。
「見つけるって」
さすがに茅野も背が冷える感覚だった。
「あの者の匂いはすでに覚えた。これから見つけに行く。そして謝罪させる。都筑君の前でな」
そう言って境内を飛び降り、夜に消えて行った。
「やっぱ、堅物だな」
肩から力が抜けて、茅野はもう一度拝殿の中に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます