まだ名前も知らない金髪小悪魔系美少女は、初めてデレたらしい。 前編

 ここは日本の中でも有数の名門校、なんてことはなく、家から近いただの高校である。俺は通学路を歩いていた。


 少々頭のおかしい奴と共に。


「なんでわかんないかなぁ〜? ツンデレって言うのはツン8割、デレ1割が絶妙なバランスなのになぁ…」


 こいつと合流した時からこの話が続いている。うわぁ…と言う周囲の視線が痛い。てか残りの1割はどこ消えたんだよ。

 

 いっそ殺してくれ…と願いながら学校の校門を通り過ぎた。


 その時だった。

 どん、と誰かがぶつかってきたのだ。

「あ、ごめんなさいっ!」

「あ、ああ」

 

 金髪が似合う女の子が、謝罪して逃げるように去って行った。

 

 どこかで見たことがあるような……と記憶を漁っていると、


「うへへへぇ、今日も有栖川ちゃん可愛いなぁ…」


 うわぁキッショ……と本気で言葉にしかけたのだが、それよりも気になることがあったので先に聞いておく。


「今の女の子、有栖川って言うのか?」


「え、お前知らないの? 有栖川たんと言えば__」


 どんっ‼︎と男の大群が俺にぶつかってきた。俺だけに。

 しかしそいつらは、ぶつかったことなどまるで興味がないように、


「おい! どこ行った! 探せ!」だの、


「俺の有栖川たん…待っててねぇ……」などとほざいている。


「なぁ、これ割とヤバい奴じゃない?」

 と隣の奴に聞いてみると、


「とりあえず有栖川たん保護した方がいいんじゃない? 拝みたいし。」


 最後の言葉が余計だと思ったが、そんなこと突っ込んでいたら話が始まらないので、俺達はその有栖川たんとやらを保護しに行くことにした。


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