44 反射無双(後半レナ視点)
さらに他の【サラマンドラ】も順番に氷の槍で撃破していく。
次に押し寄せてきたのは巨大な毒トカゲ――【バジリスク】だ。
個体数が少ない【サラマンドラ】と違い、こいつらは数十単位で一斉に押し寄せてくる。
「なら、かえって都合がいいな」
俺は自然体のまま。
先頭の【バジリスク】が毒の牙を俺に突き立てる――。
「【連鎖反射】発動」
こいつも新たに開発した【カウンタ―】のバリエーションだ。
一体目の【バジリスク】が繰り出した牙――そこに宿る毒を、まず一体目に反射し、さらに後方のバジリスクが繰り出そうとしていた毒牙に干渉し、そいつにも毒牙を反射攻撃。
さらに周辺にいる三体目、四体目――奴らが繰り出そうとしていた毒牙が次々に反射し、連鎖して周囲を巻き込み、あっという間に【バジリスク】は全滅した。
「あと二種類か」
俺は【ロードアンデッド】と【ギガントデーモン】を見据える。
すでに勝負あったも同然だった。
【ロードアンデッド】の腐食魔法を【属性変換反射】で聖なる魔法に変えて、奴らを滅ぼす。
アンデッドにとって聖魔法は容易に致命傷になるからな。
【ギガントデーモン】の巨大な拳や蹴りは【連鎖反射】によって、まとめて奴らに返っていき、そのまま全員を巻き込んで倒した。
――そして。
三十分にも満たない戦いが終わった後、すべての魔獣の躯が城門前の大地に横たわっていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
城の中から情勢を見守っていた兵士や貴族たちがいっせいに歓声を上げた。
「ジルダ様! ジルダ様!」
「【跳ね返しの勇者】ジルダ様!」
「【跳ね返し】! 【跳ね返し】!」
「【跳ね返し】! 【跳ね返し】!」
ちょっと待って!? 二つ名が若干ダサくない!?
「……って、ツッコミ入れてる場合じゃないな。次のルートに急ごう」
他のルートは全部で三つ。
広大な王国の東西南北から、それぞれ奴らは攻めてきている。
俺は飛行魔法が使える魔術師に頼み、可能な限り高速で次のルートに向かった。
「無事でいてくれよ、レナ、マルグリット、みんな――」
そう願いながら。
※
SIDE レナ
ジルダが魔獣の主力部隊と一人で戦っていた同時刻、レナは騎士団や魔法師団の精鋭とともに、南ルートの防衛に当たっていた。
ぐるるるるおおおおおおおおおおおっ!
前方から無数の咆哮が響き渡る。
黒紫色の影が数十単位でうごめいていた。
そのいずれもが体長10メートル程度のドラゴンだ。
竜種としては小さな体だが、虚無のブレスを操るその戦闘力は最上位といっていい。
『帝王竜』とも呼ばれる【インペリアルドラゴン】だ。
「まだ幼体みたいだが、これだけの数で攻めてくるとは――」
レナがうめいた。
「カミーラ、騎士団のみんな。気を引き締めろよ」
「私たちもいるわよ、レナ姫」
マルグリットが彼女の側に並ぶ。
まだ学生とはいえ、天才の名をほしいままにしている魔術師の少女は、既に歴戦の猛者の貫録を備えていた。
その他の魔法師団員たちも、いずれも手練れ中の手練れ。
頼もしい戦友たちだ。
「相手は手ごわい……だが、お前たちと一緒なら乗り切れそうだ」
レナはニヤリと笑った。
「騎士団、前へ! 魔法師団は牽制と先制攻撃の魔法を頼む! 奴らの陣形が崩れたら――」
剣を抜き、構える。
「私が突撃し、片っ端から斬り倒す!」
「勇ましいのは結構ですが、一人で先走らないでくださいね、団長」
副団長のカミーラが苦笑交じりに言った。
「分かっている。ちゃんとみんなと連携するさ」
うなずくレナ。
「待って。竜種以外にも敵の反応があるわ」
マルグリットが言った。
「魔力で迷彩をかけて姿をくらましている――今、私が」
と、杖を一振りする。
ごうっ!
同時に空間が揺らぎ、何もない場所にスケルトンの兵士たちが現れた。
「【ロードアンデッド】の操る【ジェネラルスケルトン】――最上位のアンデッドたちね」
「ふん、帝王竜に最上位アンデッドとは、なかなか豪華なメンバーではないか」
レナが不敵に笑う。
「なればこそ、我らの真価が問われる戦いとなる! 矜持を持って進め! 私に続け!」
と、全員を鼓舞しながら走り出す。
「だから、無茶をしないで、と――まあ、士気を高めるためなんでしょうけど」
カミーラが追ってきた。
「これは王女としての務めであり、騎士団長としての務めでもある――ここは私が先陣を切る!」
言って、さらに加速するレナ。
得意の【縮地】で、まさしく瞬間移動したように【インペリアルドラゴン】たちの群れに突っこんだ――。
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