43 魔王軍の侵攻、ついに始まる
るおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
地平線の向こうから咆哮が響く。
すさまじいスピードで空中をまるで地面のように踏みしめながら、一直線に王都までやって来たそれらは――無数の魔獣の軍勢だった。
全部で百体は下らないだろうか。
「――来たか」
俺は城門の前に立ち、向かって来る魔獣たちを見据えていた。
王立魔法師団による【探知】で、魔獣軍団が王国に向かってくることは分かっていた。
俺はすぐに勇者としての出動を要請され、ここ――王国の東部辺境地帯にやって来たわけだ。
予言通り、この日に魔族は現れ、まっすぐ王国に向かっている。
対する俺たちはレナやマルグリット、ルシア、そして世界中から集まった英雄たちとともに、対魔王軍・超ドリームチームを結成し、こうして待ち構えている。
「さあ、いつでもこい――」
俺は闘志を高めていた。
もちろん、不安だってある。
これだけのメンバーが集まって魔王軍の尖兵に歯が立たなかったら……その後、世界は一方的に制圧されるだけだろう。
俺たちは、最初の防衛線であると同時に、実質的には最終防衛線に近いのだ。
「責任重大だな……」
俺はゴクリと息を呑んだ。
魔獣たちはここだけじゃなく、東西南北四方向から王国に向かってきている。
どうやら奴らの目的の一つが王都にあるらしいが――。
俺の体は一つしかないから、当然他の三カ所には手が回らない。
そこは王国から選りすぐりの精鋭部隊がそれぞれ防衛している。
レナやマルグリット、ルシアもそこに加わっており、他にもボルガ王やルヴィノたち各英雄がそれぞれの部隊に均等に入っている。
どのチームも複数の英雄が参加した最強レベルの部隊だ。
だから、他の三カ所は彼女たちに任せよう。
「俺は俺で、やれることをやらないと――な」
勇者としての初仕事が、いよいよ始まる。
「どいつもこいつもゲームの終盤で出てきた高レベルモンスターだな」
俺は目を凝らして敵の姿を確認する。
強力な炎のブレスを武器とする【サラマンドラ】。
即死級の毒を放つ【バジリスク】。
不死に近い回復力を備えた【ロードアンデッド】。
山のように巨大な魔兵士【ギガントデーモン】。
いずれも勇者やSSRクラスの強キャラをそろえないと、とても対抗できない面子である。
しかも、おそらくこいつらは本隊じゃないという話だった。
単なる斥候であり、今回の攻撃はいわゆる威力偵察。
やがて、さらに強大な本隊がやってくる――。
「なら、なおのこと、こいつら程度は一蹴しないとな」
俺は剣をだらりと下げ、いつも通りの自然体になる。
相手が誰でも、やることは同じだ。
俺は俺の最強の戦い方をするのみ――。
「さあ、攻めてこい」
俺は手招きして奴らを挑発する。
ぐおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
その挑発が通じたのか、怒りの雄たけびを上げて魔獣たちが加速する。
そうだ、それでいい。
もっとも厄介なのは、攻撃の標的が分散することだった。
そう成ると、俺一人では防ぎきれず、被害が増えてしまう。
だから、『まず勇者を倒す』と奴らに目標を明確化させた。
あとは――俺の【カウンタ―】が勝つか、やつらの攻撃圧が勝つか、シンプルな勝負だ。
ごおおおっ!
まず【サラマンドラ】が炎のブレスを吐き出した。
「火で来るなら――」
俺は迫りくる火炎を見つめ、言った。
「氷で返す。有利属性で対処するのはゲームの基本だからな」
この一か月間、俺は何もしていなかったわけじゃない。
いつもの模擬戦に加え、【カウンタ―】のさらなる進化を目指して試行錯誤していた。
訓練の中でスキルポイントが溜まっていった結果、スキルの新たなバリエーションとして身に付けた技がいくつもある。
これはそのうちの一つ――、
「【属性変換反射】発動」
かききききききんっ!
俺の前方で炎はあっという間に凍り付き、さらに無数の氷の槍と化して【サラマンドラ】に向かっていく。
炎の竜は、氷に弱い。
【サラマンドラ】はなすすべなく串刺しになり、その巨体が倒れ伏した。
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