38 賑やかな宴

「俺に攻撃したら――負けるぞ」


 俺は淡々と告げる。


「おお、あのボルガ王が……」

「あれが噂の【カウンター】か……」

「す、すごい――」


 周囲からざわめきが起こる。

 と、


「……面白いですわ」


 エルフの賢者ルヴィノが俺に近づいてきた。


「物理法則を完全に無視した超絶の反射スキル――魔力の発動は感じませんでしたが、もしかしたら私が感知できないだけで、未知の術式でもつかってらっしゃのでしょうか? 実に……実に興味深いですわ……!」


 なんかマルグリットみたいな反応だ。


 魔術師あるあるなんだろうか?


「ふふ、少し調べさせてくださいませ」


 言いながら、ルヴィノが俺にすり寄った。


 二の腕辺りを触り、さらに胸を押し付けてくる。


「特段、腕力に優れているわけでもなさそうですし……うーん……」

「あ、あの、当たってるんですが……」

「今、研究中です。というか、当ててます」

「当ててるのかよ!?」

「ま、待て待て待て! いきなり馴れ馴れしくしすぎだろう! ジルダから離れろ!」


 慌てたように走り寄ってくるレナ。


「あら? 何を焦っているのです、殿下?」


 ルヴィノが微笑んだ。


「もしかして――ヤキモチ?」

「ち、ちちちちちちちがーーーーうっ!」


 レナの顔は真っ赤だった。


 いや、そこまで思いっきり否定されると、実は図星? なんて疑ってしまうが。


 ……いや、そんなわけないか。


「ジルダの【カウンター】を解析するなら、私も混ぜてください、ルヴィノ様。前にも解析を試みたけど、エルフの超魔力や魔法知識を加えての解析は面白そうです」


 と、マルグリットがやって来た。


「では一緒にしてしまいますか、解析?」

「いいですね」


 二人は意気投合しているようだ。

 と、


「先ほどの構え……敵意も気負いも無く、ただすべてを受け流し、その流れのまま跳ね返す――流水であり激流でもあるかのような動き。振るわずして勝つ剣。実に面白いでござるな」


 と、腕組みをして壁際にもたれ、俺を見ていた剣聖の三日月がニヤリと笑った。


 今度はこいつから挑まれるんじゃないだろうな……?


 思わず身構えたそのとき、


「勇者様、ご無事でしたかっ?」


 入口から一人の少女が走ってきた。


 先日知り合った海洋連合国家のベロニカだ。

 さらに、


「ふふ、やはり宴の中心は勇者様。ならばこのあたしがジルダ様を称える歌を披露いたしましょう――題して『GO! GO! レッツ勇者賛歌!』です!」


 と、こちらも先日知り合った歌姫ローレライだ。


 どんどん賑やかになっていくなぁ……。





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