Scene12:あいだ
──出席をとる担任の声が、やけに遠く響いた。
名前が呼ばれても、返事のない生徒がぽつぽつと混じっている。
最初は風邪でも流行っているのかと思った。でも違う。今朝の教室には、何かが“欠けている”。
それも、生徒たちの誰もが――いや、教師ですら――その“欠け”に気づこうとしない。
それが、異様だった。
窓際の席で、翠がぼんやりと外を見ている。
和真は所在なさげに鉛筆を弄びながら、何か言いたげに口を開きかけては、すぐに視線を落とした。
ふたりの間には、目に見えない隔たりがあった。
昨日までは、たしかに“寄り添って”いたはずなのに。
(……まったく、)
俺は小さくため息を吐く。
あれだけ一緒にいたふたりの距離が、目に見えて離れていっている。
まるで、静かに広がるガラスのヒビのように。
最初の頃、俺はあの和真ってやつが苦手だった。
敵意を隠さずに、露骨に俺を警戒してくるし、何より――翠の隣にいるのが、鬱陶しかった。
でも、今のふたりを見ると、別の意味で怖くなる。
このまま、バラバラになってしまいそうで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます