それは、『異界』への片道切符? もしも入ったら生きて戻れるか……

 謎の「黒い扉」というモチーフが、やはり不気味さを醸し出してくれます。

 時折それが出現し、「中はどうなっているのか」はわからない。でも、自分にだけ見えるその扉がどんどん姿を現すようになる。

 これはまるで、「さっさと中に入れ」と見えない何かにせっつかれているような感じがする。
 扉の先はどうなっているのか。入ったら帰ってこられるのか。

 この何とも言えない「片道切符」な不条理さが、とにかく怖い作品でした。

 終盤で登場する「ある人物」の話。普通の人間が目にしたなら、「たまに見かけるような人」で終わるかもしれない。でも事情を知っていると、「何があったのか」を想像させられる。

 一般人のあずかり知らないところで「不穏な何か」が日常を侵食しているかもしれない。そんな底の知れなさが描き出された一作でした。

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