×16のマジックチューブ!:異世界モンスター攻略配信

🕰️イニシ原

1話目

第1話×16流ゴブリン攻略!石鹸でスッキリ~ゴブリン編~

×16流ゴブリン攻略!石鹸でスッキリ~ゴブリン編~


はいどーも皆さん!×16(バツイチロク)マジックチューブ、

いよいよ開演です!あー、あー。ちゃんと聞こえてるといいな。


始めまして、僕はロクです。保証人借金地獄にハマって、

初めての泥酔でフラフラしていたところを、

まさか飛び込んじゃうとはね。


結果、転生者(バツイチ)になっちゃったわけなんですけど。

そう、僕こそが、バツイチ転生者のロク、

略して『×16』です!よろしくお願いしますね!


『バツイチ』ってのは、この人生、まだ一度しか死んでないって意味。

いや、死んではいるんですけどね!

前世の知識だけが頼りだし、

スキルなんてモンは一切持っていないんですけど、

そこは経験と知恵でなんとかカバーしてるんで、心配ご無用です!


ちなみに、この配信は、”あの”可愛い女神様が教えてくれたんですよ。


「どこの異世界にも配信機器はあるのよ。

あなたなら使いこなせるでしょ?」だってさ。


……まさか僕が、こんな形で異世界と繋がることになるとは、

思いませんでしたけどね!


見る方法はやっぱり世界によって違うらしいですけど、

無機物でも生き物でも、映像を映し出せるものがそこら中にあるんです。

たぶん、皆さんの世界にも水晶玉とか、似たようなモノがあるはずなので、

ぜひ探してみて欲しいです。


どこでも簡単に僕の配信が見れるって言ってたんで、

試しにアクセスしてみてくださいね!


それじゃあ、僕の異世界初配信、記念すべき第一回、いくよ!


そう最近思ったのは、

汚くて臭いあの”ゴブリン”は意外と面倒なんですよね。


……いや、

正確には、この世界の皆さんがちょっと不器用すぎるだけなんですけど。

だから、皆さんも意外と苦労してるでしょう?

今日からそんな苦労とはおさらばです!

僕が超簡単、かつ誰でも真似できる、

目からウロコのゴブリン倒し方を教えましょう!


まぁ、汚くて臭いと言えば、誰でも思いつくものがあるでしょう?

……そう、『石鹸』ですね。


「え、何言ってんだコイツ?」って思ったそこの皆さん。

その反応、正解!でもね、これマジで革命ですから。

異世界の常識、ぶっ壊していきますんで、

最後まで見てってくださいね!


この世界じゃ石鹸を作るのは簡単なんです。

現世の僕の知識があればですけどね!


油は村の肉屋のおっちゃんにタダでもらいましたし、

灰はそこで焚火してたから十分。

「フン、異邦人め。どうせ碌なことはせんのだろうが、好きにしろ」

……ってな感じで、あの頑固者のおやじも意外と気前がいいでしょう?


あと、この世界には『高速発酵石』ってのがあってですね。

普通は数週間かかる石鹸作りが、

この石のおかげでたった五分でできちゃうんです。


文明の利器、すごいでしょう?まあ、詳細はカットしますけどね。


それと、なるだけ多くの石鹸水を持って行きたいので、

漏れないちゃんとしたタルが欲しかったんですけど……

これも貸してくれましたね。


「おい、異邦人!貴様がそんな物騒なもんを持っていくというなら、

せいぜい村のために働いてみろ!」

……って、さっきとは別のおやじに言われましたけど。

どうやらゴブリンが村に結構迷惑かけてるらしくて。

洞窟に住み着いてて、退治してもキリがない、

いわゆる『いたちごっこ』ってやつらしいですね。


だから、「お前ひとりでやるなら、そこら辺の物なら貸してやる」って、

馬車ごと貸してくれたんです。

良い方もたくさんいますね。


今回は六タルも持って行きますよ。

通常のパーティーだったら一人一タルを背負って、

持っていくのが普通らしいですけど、

この世界の人間は見かけによらず力が強いですからね。


華奢な人でも軽々と背負っちゃうんです。

持てないなんて言ってるのは口だけですよ……まあ、それはいいとして。


じゃあ、水を川から汲んでくるのと石鹸水を作るのはカットしますね。

意外と時間かかりますから。


***


さあ、準備はいいですか?僕の異世界初配信、記念すべき第一回、

ぶちかましていきますよ!


はい、もうゴブリンが住む洞窟に着きましたよ。


あ、そうそう。たまに僕以外の声がするかもしれませんけど、

気にしないでくださいね。スス村から、

僕の配信が見たいらしくて、ついて来た人がいるんですよ。


一応言っておきますけど、

通常のゴブリン退治ができることを前提にした上で、

今回の「裏技」を披露しますからね。


それじゃ、見張りが洞窟の前にいますけど、

このまま馬車で乗り付けますよ!


「ガラガラ、ゴトゴトゴト」


「ぎゃあぎゃあ、ぎゃうぎゃう!」

うわ、うるさいし臭いですねぇ!


まず馬車には上がってこれないので、

安心して。とりあえず一タル、流しちゃいますよ!


「ダンッ」


「どしゃー!」


(勢いよく石鹸水が地面に広がる音)


返す物なので、なるべく大切に扱ってますよ。


あ!「どんっ」


(僕の体が盛大に転倒する音)


「くすくす」


「あはは!」


うわ、大丈夫、大丈夫!やっちゃったな、僕!

これ、滑り止めベルトを付けないといけなかったんだ。

完全に初配信で舞い上がってましたね!

僕のは靴を履いたまま付けられるスパイク付きベルトにしましたけど、

慣れてる人は靴に直スパイクでも滑り止めは効くので、

お好きな方でどうぞ!


「ねぇねぇ、このゴブリンたちは、私たちでやっつけてもいいの?」


「あ、ナナ。

今、みんなが見ているから勝手にやっていいよ……静かにね」


(僕がスパイク付きベルトを装着している間にも、

石鹸水でツルツルになった地面でゴブリンたちが次々と転倒していく。

彼らは混乱し、滑りながらも立ち上がろうと必死にもがいている)


「きゃはは!見て見て、あっちでも滑ってる!」


「こっちもだ!よし、網を投げるぞ!」


(ナナと、彼女と一緒に来たもう一人、たぶん妹さんかな? 

その二人が、手際よく大きな網を投げつけ、

転びまくっているゴブリンたちを絡めとっていく。

まるで漁でもするかのように、次々とゴブリンを捕獲し、

縄で縛っていく姿は、僕の予想以上に手際がいい)


おっと、ノイズキャンセリング、オン!

どうですか?ゴブリンたちのぎゃあぎゃあという騒ぎ声が、

すっと遠のいていくでしょう? これで少しは聞きやすくなったはずです。

僕の配信、こういう機能も付いてるんですよ。

うるさい声はカットできるんで、ご安心を。


「よし、これで第一陣は制圧完了ですね!

どうです?僕の石鹸水攻略法、なかなかでしょう?」


さ~て、次は洞窟の中ですね。


入口付近の見張りのゴブリンたちは、石鹸水で転びまくって、

ナナと妹さんかな? の二人が網で簡単に捕まえちゃいましたけど、

洞窟の中にもまだたくさんいるはずです。


はぁ、はぁ……意外とタルって重いな。

これを全部持って中に入るのは大変なので、

もう一つ、洞窟の奥に流し込んじゃいますね!


これ、ただの石鹸水じゃないんですよ。

この世界の高速発酵石の力が溶け込んでて、

少量でも驚くほど広範囲に薄く拡散するんです。


もし皆さんの世界にこの石がなくても、大丈夫。

追々、この石がない場合の石鹸水作りも配信で教えますからね!だから、

奥にいるゴブリンたちも、僕らの到着前に足元がツルツルになってるはず!


……そういえば、この辺りの洞窟って、

たまにゴブリンがトロールを連れて現れることがあるらしいんですよ。

しかも、そのトロールを操ってるのが、

闇にまぎれるエルフだったりするって話も聞きますね。


いやー、異世界って怖いですよね、本当に。

それにしても、結構息が上がりますね……

まあ、今回はゴブリンだけのはずですけどね!


ダンッ


どしゃー!


(再び、石鹸水が洞窟の奥へと流れ込んでいく音が響く)


よし、これで三つ目! 残りはまだたっぷりありますけど、

ここからはもう背負って進むしかありません。


この洞窟は真っ暗なので、松明も必要なんですよ。

タルを背負って松明持って……

いや、異世界転生者って、意外と力仕事が多いな。


はぁ、はぁ……ちょっと息が上がっちゃいましたね。

普段から運動してないのがバレるね、これ。


はぁー。

さあ、じゃあ洞窟の中に入っていきましょうか。


ズン、ズン……って足音、聞こえてますか?

松明の明かりを頼りに、洞窟の奥へ進んでますよ。


……あれ?もう広間ですね。思ったよりすぐ着いちゃいました。


うわぁ……凄い数のゴブリンが、盛大に転がってるじゃないですか!

「ぎゃうぎゃう!」とか「キュウ!」とか、

石鹸水に滑って立ち上がれないゴブリンたちが、

あっちでドタバタ、こっちでズルズル。

まるで初めてのスケートリンクではしゃぎすぎた子どもたちみたいですね。


僕の予想通り、かなりのゴブリンが石鹸水の効果で無力化されてます。

数匹は、あまりに滑りすぎて、

洞窟の入り口の方までズルズルと流れていっちゃいました。

あれなら、ナナたちが簡単に回収できるでしょうね。


さて、ここからどう処理していくか……って、ん?


今、広間の奥から、異様な気配がしましたね。


「グガガガガアアアァァ!」


今の、ゴブリンたちの騒ぎ声とは明らかに違う、禍々しい唸り声……

洞窟中に響き渡りましたね?


あ、なんだか洞窟の奥に、明かりが灯りました。


(その光が瞬く間に膨れ上がり、

真っ赤な火球となってボッボッボッとロクめがけて飛んでくる)


「うわぁぁっ!」


(ドテンッ!と盛大に転んで、

背負っていたタルもガシャンッ!と音を立てる)


――「あいたた……」


咄嗟に避けたんですけど、急に動いたせいで、

足元の石鹸水でツルツルになってた地面に、

あっさり足を滑らせちゃいました。

いやー、まさかこんなところで滑るとは思ってなかったなぁ。


「グガガガガアアアァァ!」


ん?まるで嘲笑うような唸り声が、聞こえました。

こいつ、僕が転んだのを見て喜んでるな!


あ、次の火球が……!!

――やばい!!


「ロク平気なの?」


(その時ナナが洞窟の入口から僕の方へ歩いて来た)


「え?ナナあぶない!!」


(ボッボッボッとまた近くを飛んで行く火球の音がした)


(どしゃ!とナナを庇いながら二人で倒れ込んだ)


「ナナ!大丈夫!?」


「いた~い。助かったけど、ロク!早く立ち上がって!」


(僕たちは、なんとか立ち上がろうと足を踏ん張るけど、

やっぱり地面がツルツルで、なかなかうまく立てない)


「もう!ちょっとこれ、ヌルヌルで立ち上がりにくいんだけど……!」


(そう言いながらナナは無理に立とうとしてバランスを崩して

僕におぶさって来た)


あ~、もうどろっどろのヌルッヌルだ!

手にもスパイクを付ければよかった……


あ!おーっと、火球を放った主かな?広間のさらに奥の闇の中から、

ぬっと影となって姿を現しました。


な!何でしょう。足元には、三匹のゴブリンがうずくまって、

その背中に担がれるようにして、一際大きなゴブリンが!


……もしかして知らない人もいるかもしれませんが、

あれはM・I・K・O・S・H・Iですねー! 

なんだか運動会を思い出します!

普通のゴブリンとは明らかに違う、禍々しいオーラを纏ってます。


「グガガガガアアアァァ!」


どうやらゴブリンメイジだと思います。

三発目の火球が飛んでくると思いましたが、

なんだか息が上がってるみたいですね……

肩で息をしてるのが、僕の視界からもはっきりと見えますね。


そうだ、いい事思いつきました!


「ナナ、ちょっとごめんね。君のスパイク借りるよ」


(ナナから取り外したスパイクベルトを両手に付けた)


「ついでに松明もお願い」


(ナナに松明を渡すと、立ち上がってそばにあるタルを持ち上げた)


では皆さん、見ててくださいね。このまま体当たりします!いきますよ。


(そこはもうハチャメチャだ、ガチャーンとタルが壊れ。

ぎゃあぎゃ、ぴぎゃぴぎゃ……

ゴブリンたちの鳴き声だらけだ……(NC中))


「ナナ大丈夫かな?借りたスパイクが壊れたから、

予備を持ってくるよ。ちょっと待っててね」


はい!皆さんいかがでしたか?

ちょっとしたハプニングもありましたけど、

初めてにしては良かったと思います。

このあと雑談もしようかと思っていますが、

ちょっと着替えてからですかね。


「ねぇロクあれって……」


(ナナのその声で僕はバランスを取りながらゆっくり振り向いた)


みなさん、これは僕のミスです。……もう一匹いるだなんて……


(突然明かりが消えた)


「風の精霊さんナナに応えてください。

こんなところに呼んで怒るだろうけど力を貸して!」


(火球が飛んでいる少しの間だけ見えた。

洞窟の入口から吹いて来た風で大量の泡が出来上がっていた)


(そのお陰で火球も消えたし、

もう一匹のゴブリンメイジも転びまくっている音でわかった)


「ねぇナナ。松明は僕に渡してくれれば良かったんじゃない?」


「そんな恰好でいう?どうせまた転んだんでしょ」


(ロクは大量の泡とあおられた風で転んでいた)


あ!すいませんみなさん。音声だけになっちゃいました。

そうのうち暗視装置も付けたいですね。

今回はこれで終わりに……


(ガシャガシャガシャと何人もの足音が聞こえた)


(明かりが辺りを灯した)


「わぁあ。熊男!」


「何が熊男だね。配信とか言うの見てただて、助けにきたでよ」


(顔中髭だらけの男がロクを覗き込んでいた)


「おとうさんありがとう」


「おう、おう」


(手、肩を貸してナナは立ち上がって歩いて行った)


「あのぅ僕は……」


あ!

今度こそこれで終わりにします。見てくださった方ありがとうございます。

次も早く配信したいと思います。ではさようなら。


***


はい皆さん×16です。着替えてから食事もしました――

村の方が全部用意してくれたんですよ。


……こんな世界もあるんですよね。元の世界にもあったはずなのに……


前世で貯め込み過ぎた孤独を少しでもいいから、

考えないでいいなんて、いい場所ですよね。

まぁ、たまたま転生できた僕ですがこの世界で頑張ります。

他にも転生者がいたら、嬉しいな。


何か討伐リクエストなどくださると嬉しいです。

細かい事は別配信しますね。


ではではまたねー。

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