37.レドとリィラの帰宅

※さくらのラウィンより少し前


山田家のリビングに白い扉が突然顕現する。


「ふぃ〜帰ってきた〜ってもう19時半か!でもまだハル帰ってないっぽいな」


リビングに着いたリィラは電気を付け時計を確認し、誰もいないリビングを眺めてそう呟く。


「家族ラウィンに今日は遅くなるって書いてあったろ。まぁ20時から21時くらいには帰ってくるんじゃねぇかな」


「随分と遅い帰りだったわね」


「………」


「………」


リビングには手足の生えた魚が1匹、テーブルの上に立っていた。


そういえばこんなのいたなと無言で見つめる。


「…なぁ、これって晩飯…?」


「んなわけねぇだろ」


「んじゃあペットか?」


「ペットにするにはちょっとキモくねぇか?」


「まぁ確かにキモイけど…」


「てめぇらさっきから失礼にも程があるでしょうが!!!!!それが客人に対する態度なの!?!?」


ぷりぷりと怒り出す魚にレドとリィラは微妙な顔をする。


「んで結局これなに…?」


「分かんね。なんか急に俺様に攻撃してきて、最終的に目の前で自爆しそうだったから、気絶させて家に放置しといたんだが…」


「そんな危険物家に持ち帰るなよ!!!」


ペシッと漫才のようにレドを叩くリィラ。


「まぁ悪い奴ではなさそうだったからよ。そのまま道端に放置して干物にするのも可哀想だと思ってな」


「はぁ…まぁいいわ!とりあえ自己紹介しておくわね。私は妖精界の拳聖…こぶしと書いて拳聖ね?そのエリート妖精【花道雅子はなみちみやびこ】よ!」


ババンッと胸?を張って自己紹介する魚…、もといミヤビコ。


「魚にしては随分と贅沢な名前だな」


「ハナっちでいいんじゃねぇか?」


「え〜、そんな可愛い雰囲気じゃないだろ。どっちかって言うとキモっち」


「おんどりゃいい加減にしろよオラァ!!!」


「どわぁぁああ!!!キモっちが襲ってきた!!!やめろー!髪をいじるなぁー!!」


ミヤビコもといキモっちはリィラの頭に飛びつき、髪の毛を弄り始める。


リィラは手で押さえつけようとするが、流石は拳聖なのか、全て叩き落としていた。


「喰らえ秘奥義!ボリュームたっぷりふんわりアラモードパフェヘアー!!!!!」


「うわぁあああ頭がなんか重い!!!」


リィラの頭はいつの間にかソフトクリームのような形に、キラキラした星や棒をカラフルに彩られた髪型に変えられていた。


「お、亜空間魔法使えんのか。結構やるなキモっち」


レドはそう言いながら、リィラの珍しい髪型をスマホでパシャパシャ撮っていた。


「だあれがキモっちじゃ!!」


レドには文句を言うものの、昼間に負けたせいか襲ってはいかなかった。


「…はぁ、まぁいいわ!それよりあんた達!…おほん!貴方たちは、アトラレギオとかいう奴らの仲間…なのかしら?」


「なんだそれ」


「ちょっと前にさくらちゃんが言ってたアレだろ。なんか輝石を奪おうとしてる悪者集団」


リィラは首を傾げたが、レドがすぐに教えてくれる。


「…!あんた達、さくらちゃんと面識があるの!?」


「そりゃあちょっと前に友達になったし。な!レド」


「まぁな」


「そ、そうなの…。なら問題は無いのかしら。と、貴方たち、私をそのさくらちゃんの所まで送ってくれないかしら。ちょっと道が分からなくて…。もちろんそれなりのお礼は…」


「えー、さくらちゃんが可哀想」


「こんなキモっちをさくらちゃんの近くに置くのはなぁ…」


「なにがこんなキモっちじゃ!!!!!」


「せめてもっと可愛い魚系の…、いやでも手足が生えてる時点でキモっちだなぁ…」


リィラが可愛い姿を想像しようとするが、やはり手足が生えるとちょっと微妙だった。


「だからキモっちってなんなのよ!!!」


「そりゃあキモかわ的な意味の…」


「あら、一応可愛い意味も込められてたのね」


「まぁ9割キモだけどな(笑)」


「……………」


「やへほぉお〜ほっへひっはうな〜」


ちょっと面白かったのでレドは無言でパシャパシャとスマホで写真を撮る。


「俺様はそろそろ料理でも作るか…。おいキモっち、お前さんはどれくらい食う?ていうか人間の飯食えるのか?」


「ん?まぁ普通の人間と同程度は食べるかしら…。ってなに?ご馳走してくれるの?」


「まぁ客人だからな。飯くらい食わしてやるぜ」


「あら、それじゃあお言葉に甘えて頂こうかしら。一応好き嫌いはないわ。魚の姿だけれど、魚も食べれるわよ一応」


「そうか。ならまぁ、魚は今日はねぇし、うーん、今日はビーフシチューでも作るか」


「おぉー!ビーフシチュー好きー!」


「おう!楽しみにしとけよ!」


そう言ってレドは台所へ向かい、準備を始める。


「仲良いのねあんた達」


「今はもう家族みたいなもんだからな!」


「ふぅん、それはまぁ、ふふ、いい事ね」


随分とご機嫌なリィラに、ミヤビコもつい微笑む。


「あっ、そういやアイツらとのラウィングループでも作っておいた方がいいんじゃねぇかな?なんかあった時グループあった方が色々把握できるし!」


思い出したかのようにレドに話しかけるリィラ。


「ん?ああ、いいんじゃねぇか?そうだな、ついでにそこでさくらちゃん用の魔法勉強資料作って見せてやるか」


いつの間にかピンクのエプロンに着替えたレドが、冷蔵庫を開けながら返事をする。


「ラウィングループに貼るのか?」


「まぁ他の奴も才能あるやついたし、ついでだついで」


「はぇ〜。まぁとりあえず作っとこ!名前はそうだな…。【地球を守ろうの会】にしとくか!」


「それってどういうグループなの…?」


「そりゃあそのままの意味だけど」


「随分と壮大な会なのね…」

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