35.切り札

「アクセルモード、起動」


『了解。アクセルモード、起動します』


アイルちゃんが復唱し、起動の確認を行った後、視覚の中央で【Unrestricted Neo Drive Accel Mode】という文字表記が数秒記載され、その後文字がフェードアウトする。


体温が上昇するように感じるが、実際にゴーカイザーの内部温度も上昇しているので間違ってはいない。


グウィイイイイイイイイイインという駆動音がした後、身体中がガン!ガン!ガンガンガンガン!と連続で動いて変形する感覚がする。


シュウウウウウウウと、機体の節々から黄金の輝きと、発熱による蒸気が溢れる。


アクセルモードは、機体の加速装置の速度上限を無制限にし、機体の負荷を無視して素早く動きまくる切り札である。


想定ではもって3分が限界だ。


それ以上動けば機体が自壊するようにぶっ壊れてしまうだろう。


動き出したと同時にタイマーを起動してあるので、それを過ぎれば勝手にアクセルモードは解除されるようにはしてある。


敵の増援は今のところ来る気配は無いし、また呼ばれる前にこいつらを一瞬で葬りさればいい。


というかとりあえずサクッとレドを呼んで安心したい。


「ふぅ…。…それじゃあ行くぞ!!アクセル・ブーストッ!!!」


ガシャンッと両腕を振って、腕の装甲内部のブレードを出し突撃する。


ヴンッ


それは一瞬の出来事。


ゴーカイザーがブレたと同時に、黒い閃光が瞬く間に敵陣を駆け抜ける。


俺の加速した世界に追いつける者は誰もいなかった。


次の瞬間には、ゴーカイザーは戦艦達の後ろにおり、背を向けたゴーカイザーの背後で少しづつ切断面がずれていき、最後には全ての敵が爆裂四散していた。


「アクセルモード、解除」


『了解。アクセルモード解除します』


アイルちゃんの復唱後、ゴーカイザーの身体がまたガコガコ鳴り出し、変形した装甲は元に戻り、出ていた黄金の輝きと蒸気が収まった。


「…………ふむ、3秒か…。思ったより温存できそうだなこれ。敵の特殊個体を参考にして、オリジナルで更に加速できるよう耐久力やエンジン、重力装置を改造したけど正解だった…。シミュレーションした記憶道理だね…、こりゃ自信がつくわけだなぁ…」


とはいえあの惑星サイズは3分じゃ壊せないよなぁ…。


エネルギーが足りない。


物理的な大きさが地球の4分の1くらいだから、装甲を斬撃でなぞる程度じゃ意味ないし、ビームとかで破壊できるようなエネルギーもない。


地球に来た先行部隊全部奪って改造して、グレートゴーカイザー…。いや、ハイパーメガキャノンみたいなやつの方がワンチャンあるかなぁ…。


それにしたってビームを貫通力に特化させた上で、相手の惑星戦艦の核を撃ち抜けなければ破壊はできないだろう。


…うーん、よし!早く基地に戻って一旦元いた世界に戻ってから、レドに助けて貰おう!


そうと決まればさっそく…



『危険!危険!!遠方より超巨大エネルギーの収束を確認!!!位置は【惑星規模戦艦】からです!!!』



突如大きな警告音を発しながら、アイルちゃんが注意喚起する。


「えぇ!?うっそぉ!!!!?もしかしてもうこの惑星破壊する判断した!!!????!?」


やばいやばいやばいやばい!!!!!!!!!!


無理無理無理無理無理無理無理無理!!!!!!!!!


あぁ輝いてる!!!太陽とは別の位置から輝いてる光が見えちゃってる…!!!!!


あれに対抗出来る手段は………………ないッッ!!!!!


そもそも惑星サイズの戦艦から放たれるビームなんて、この星の小さい個人の力じゃどうしようもない!!!


まずいまずいまずい!助けてレド様仏様!!どうにかこの危機をお救い下さい〜ッ!!!


そうやって生きてきた中で最大の危機感を感じたハルは、ゆっくりと身体がなにかに吸われてるのに気付く。


「…なんか身体が傾いてるような…?」


そう思って後ろを振り向くと、そこには先程倒した戦艦達の爆発跡ではなく、謎の白い光がゴーカイザーを飲み込もうとしていた。


「なにこれ!?!?!?」


これレドが来てくれたって感じじゃないよね!?


あっ、待って、これ思ったより吸引力強い!!踏ん張りが効かない!どんどん吸い込まれていくッ!!


「アクセ……」


これはもうアクセルモードで何とか抜け出すしかないと、起動させようとした瞬間、少し離れた目の前の位置で、何も無い一部の空間が輝き出す。


その輝きは、まるで白いどこでもドアのような見た目で…。



あぁ…、よかった…。



どうやらこの星も安泰だ…。



久しぶりに見た見覚えのある白いドアを見て安心しきったハルは、そのまま白い輝きに、ゴーカイザーと共に飲まれて消えた。



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