12.!?

「吸血鬼・・・、この世界にもやっぱ居るのか」


「ああそうとも。僕はこの国に残っている数少ない吸血鬼の1人。まぁこの世界にどれだけ残っているかは知らないけど、その生き残りが僕さ」


「ほうほう」


「それで君についても知りたいんだが、聞いてもいいかい?」


「俺様の名はレドだぜ」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


「え?それで終わり?その、悪魔なりの自己紹介みたいなのはないの?」


「俺様の名はレドだぜ」


「さっき聞いたよ!なに?ロボットなの?名前だけじゃん!もっとこう、悪魔の中でも選ばれた存在・・・、みたいなの無いの!?」


「人に名前を尋ねる時は、自分から話すもんだぜ」


「名前言ってなかったからなの!?いやごめんね!?そうだね名前言ってなかったね!僕の名前は山本翔太です!!」


「めっちゃ日本人みたいな名前だな」


「日本人だよ!!」


「そうなのか。アニメとか漫画だとだいたい外人キャラだったんだが・・・。日本にも居るのか」


「まぁたぶん外人の吸血鬼だった人に吸血鬼にされたから、日本にはあんまりいないんじゃない?ていうか僕以外見た事ないし」


「そうなのか・・・。あっ!俺様そろそろお弁当届けなきゃだからよ、話はまた今度にしてくれよ」


レドはそう言って右手を軽く上げて、「それじゃ」と少年に別れを告げて歩いていく。


「あ・・・うん・・・。ってちょいちょいちょい!!!どこ行くんだよ!まだ話は終わってないぞ!!!」


「だから俺様もあんまり時間ねぇんだよ・・・。しょうがねぇな、これ俺様のラウィンな。ほら、お前さんもラウィンぐらいは使ってるだろ」


レドは自身のスマホを操作し、ラウィンの友達追加QRコードを差し出す。


「は?え?ラウィン持ってんの?」


「ほら、早くしろって、俺様の時間も有限なんだ。いや無限に増やせるっちゃ増やせるが、できるだけ力は使わねぇタチなんだ」


無駄に駆け足するように足踏みしだして、少年を急かしていく。


「わ、分かったよ!ちょっと待ってくれ!今やるから!」


少年はスマホからラウィンを開いて、レドのQRコードを読み取り友達追加を押す。


「よし、これでオーケーだな。それじゃあまた今度な!」


そう言ってレドは立ち去ろうとするが・・・。


「・・・いやいやいや!ちょっと待て!そういう問題じゃない!僕は君を引き入れられないなら、殺す事も視野に入れているんだぞ!このまま逃がすわけが無いだろ!!」


少年はレドの前に立ふさがる。


「なんだよ面倒だな・・・。だからそういう話はラウィンでしてくれって言ってるだろ?」


「だ〜か〜ら〜!!!このまま言うこと聞かないって言うんなら・・・」


「言うんなら?」


「ちょっと痛い目見て貰おうかな・・・」


そう言ってゴゴゴ…と黒いオーラを全身から放つ少年。


「ほぉ〜、無駄に強そうな演出・・・」


「無駄とか言うなっ!!警告の意味も込めてるんだよ!!そこまで言うならもう知らないぞ!ちょっと本気でいたぶってやる・・・!」


そうして少年が動き出そうとした瞬間、ドシィィイイインッ!!!と大きめの振動が真横で起きた。


車が通る道を巨大な土煙が覆う。


何かが落ちてきた感じであり、その土煙の中で誰かが叫びあっていた。


「だぁから俺は悪魔じゃねぇっつってんだろ!!!これは特殊なスーツであって、俺は特殊捜査官!!!警察みたいなもんだ!!!」


「そう言って誤魔化そうとしても無駄です!!!貴方から発せられる淀んだ魔力!それが動かぬ証拠!!人間の目は騙せても、神の使徒たる天使の目は誤魔化せません!!!!!」


土煙の中のシルエットが段々と浮かび上がってくる。


1人は地面に押し込まれ、刀のような武器を持った恐らく男性。


1人は天使の羽のような物を生やし、天使には似つかわしくない、死神の持つ鎌のような武器で、男性の頭を正確に貫こうと地面に押し倒している恐らく女性。


男性は刀で鎌を押さえ、なんとか鎌の一撃を防いでいる状況。


だが男性は天使の腹部を蹴り上げ、天使から距離を離してからすぐさまジャンプして立ち上がる。


「魔力ってなんだよ!!もしかしてマナエネルギー・・・じゃ分かんねぇか?人体エネルギーの話か?」


そう言ってあくまで話し合いですまそうとする男性。


土煙が晴れてくる。


刀を持っていた男性の姿はまるで子供向け番組の、バイクに乗るヒーローのような赤いスーツを着た人間であった。


そしてそれに相対するのは天使の輪っかと美しい天使の羽を生やし、恐ろしい死神の鎌を構える、肩辺りまで伸びた金髪をハーフアップにした髪型のお姉さんだった。


服装は薄茶色のロングコートを着ており、天使らしい服装では無いが、天使の羽と死神の鎌さえ持っていなければ、雑誌の表紙でも飾れそうなほど整った顔をしている。


そして煙が晴れれば、自然と周りの景色も見え・・・。


近くにアロハシャツを着た筋肉隆々の悪魔らしい羽を生やした悪魔そのものと、それに相対している邪悪なオーラを纏った少年の姿が見える訳であり・・・。


「!?」


「!?」


「!?」


「!?」


((((なんだこいつら!?!?!?!?))))


という反応になる訳である。



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