11.魚の妖精?

「で、お前さんは何者なんだ?見たところ怪人じゃあ無さそうだが・・・」


「悪魔に名乗る名など無い・・・。私は妖精の中でもエリート中のエリートなの。魔族が作る悪魔なんてチンケな兵士ぐらい、一瞬で葬ってあげるわ。死になっさい!!!!!」


セリフの最後にそう叫び、突進してきた魚頭のマッチョ。


レドは念の為、手荷物をポイッと異次元へと放り投げた。


「【四天轟流】壱ノ手・玄凱衝破」


右手の第二関節までの指を、レドの腹部へと押し当て、素早く拳の構えに変えて、その衝撃を直接レドへと撃ち当てる。


ッパァン!とまるで銃声が鳴ったかのような凄まじい音の後、ビシィッとレドの後ろへと衝撃波が渡り、レドの後ろのコンクリートが数メートル範囲でひび割れた。


ここで普通の悪魔ならば爆裂四散するのだが、ここにいるのは生憎普通の悪魔ではなかった。


「・・・まぁまぁの威力だな」


微動だにしないレドはそう一言。


「なっ!?」


魚マッチョは驚愕した後、ジャンプして少し距離をとる。


「ならこれでどうかしら!【四天轟流】弐ノ手・登落青龍!!」


右手をバンッと地面に叩きつけた魚マッチョは、次の瞬間地面から湧き出た水に包まれ、その水ごと姿形を龍へと変えた。


水でできた青龍はそのままレドへと食らいつき、空高く飛んだ後に地面へと頭から落下して、レドを地面へと深くめり込ませた。


レドは陥没した地面に身体を横たわらせて倒れているが。


「まぁまぁだな」


無傷だった。


「くっ、これでもダメなのね・・・ 」


(この様子だと、朱転鳳凰も白虎百拳も通じそうに無いわね・・・。かくなる上は・・・)


魚マッチョは両腕を前に構え、上下に分けた掌に球体を掴むような広げ方をした後、それを右後方へ構える。


「【四天轟流】奥義【四天黄龍・・・」


掌の中で赤青緑紫の4色の輝くエネルギーが、球状へと収束していき、中央に金色の輝きが発生する。


周囲には金色のスパークが撒き散らされ、地面に当たったスパークは地面を穿った。


そして、レドが陥没した地面から地上に戻った瞬間、そのエネルギーを解き放つ。


「雷轟波】あああああああああああああぁぁぁ!!!!!」


質量を持ったエネルギーの光線が、魚マッチョの手から放たれる。


凄まじい破砕音と土煙が立ち込める。


周囲への被害は最小となるように、対象へ当たった後は斜め上へと軌道を変え、空へと登っていく。


立ち込める土煙。


煙が晴れた後、果たしてレドは・・・、もちろん普通に立っていた。


「そこそこだな」


レドはそう評価して、パンパンと身体についたホコリを払う。


一方エネルギー波を放った魚マッチョはと言うと、元の小さいおもちゃサイズへと戻っていた。


「くっ、魔力切れ・・・。エリート中のエリートであるこの私もここまでか・・・」


スタスタとゆっくり近づくレド。


「だけど、こんな化け物をあの子に近づけるのだけはさせない・・・!せめて道連れよぉぉおおおお!!!」


そう言って腹の辺りを押さえた魚は、突如として身体が発光しだす。


「お前・・・、明らかに自爆しようとしてるが、俺様は別に敵じゃねぇぞ」


「何を言ってる!そんななりで悪魔じゃない訳無いでしょ!!!」


「いやまぁ確かに外見は悪魔っちゃ悪魔だが、俺様は悪魔じゃねぇぞ」


「う〜ん原初の生き物って言えば通じるか・・・?いや通じてねぇ顔してるな。めんどくせぇ、お前に【宇宙】を見せてやるか」


レドは発光する魚の頭にポンと手を乗せる。


しばらくすると、だんだんと発光現象が収まり、魚は段々と痙攣しだして、ついには泡を吹いて倒れた。


「まぁ情報量が多すぎたか。9割なんぼかぐらいは消してやるとして、どうするか。ここに放置しておくのもアレだし、家に置いとくか・・・?でもこれ可愛くねぇな・・・。マスコットとしてもキモカワというか・・・、キモイの方が強い。無駄に腕とか魚部分がリアル寄りなのが終わってんだよな・・・」


しゃがみこみながら考えるレド。


まぁ一旦家に放置しとくか。


そう言って小さいゲートを作って、そこへ魚を放り投げた。


(この道も元に戻して・・・、ちらちらいる見学通行人の記憶も消しておくか)


パチンッと指を鳴らすと、次の瞬間には全てが元通りとなっていた。


足を止めていた通行人も、次の瞬間には何事も無かったかのように歩き去る。


(さて、さっさと弁当届けねぇとな)


何となくレドは、指パッチンでアロハシャツと半ズボンに着替えた。


あの魚俺様の認識阻害通じてなかったし、認識阻害が効かない手合いも多少は居ると判断。


ある程度は人間に友好的な格好でもしといた方が良いだろう。


帽子もした方が雰囲気出るかと思い、自然な動作で手から生み出したワラの帽子を頭にかぶった。


羽もしまおうか悩んでいると、ふと頭上から声が聞こえた。


「ねぇ、そこの悪魔さん。君、野良の悪魔なのかい?」


声が聞こえた方を向くと、そこには高速道路の柱のでっぱりに座っている1人の少年がいた。


ベレー帽のような帽子を被った黒髪ショートの美少年で、身長はリィラと同じくらいだろうか。


こちらが認識したのと同時に、少年は柱のでっぱりから飛び降りて、レドの前に着地する。


「野良の悪魔・・・みたいなもんではあるな。ていうかお前、俺様が悪魔に見えんのか?」


「その羽にその外見で悪魔じゃない方が有り得ないよね。認識阻害をかけてるみたいだけど、少なくとも僕は効かないよ」


「なるほどな。んでお前さんは何もんだ?」


「僕かい?僕はそうだな・・・、吸血鬼と言えば分かるかな?」


少年はそう言って、牙を見せながら微笑んだ。





ーーーーー





「うわっ!?なんかキモイ魚いる・・・」


冷蔵庫のジュースを飲みに来たリィラは、リビングのテーブルで気絶している、手足の生えた魚を見つけた。


「キモイなぁ・・・。どっから出てきたんだこれ・・・」


つんつんと触ってみるが、特に動く気配は無い。


まるで死んだ魚のようだ。


「レドが釣った魚か?美味しいのかな・・・。でもなんか腕も妙にリアルだし、キモイから食べたくないなこれ・・・」


よく分からなかったので魚はそのまま放置し、リィラはコップにりんごジュースを注いで、それを持ったまま自分の部屋に戻ろうと扉を開けて。


「いや待てよ?あれ妖精の類じゃないか?」


そう考えて一旦戻ってジュースを飲みながら、目に魔力を纏わせて再度眺める。


「うぅん、妖精っぽい。・・・でもやっぱキモイなぁ。これ飼うのかな・・・。飼うならもっと可愛い猫とか犬にして欲しいなぁ・・・」


リィラはそう愚痴り、そのままキモイ魚を放置して自分の部屋へと戻った。






【四天轟流】

壱ノ手「玄凱衝破」

手の指を拳にした瞬間の衝撃を相手の体内で爆発させる技。

相手は爆裂四散する。

弐ノ手「登落青龍」

地面や空気中の水分を使って青龍を纏い、相手を咥えて叩き落とす技。

相手は爆裂四散する。

参ノ手「朱転鳳凰」

炎を纏い天高く飛んだ後、燃え盛る鳥へと姿を変え、標的に向かい飛んでいく。(飛び蹴り技)

相手は爆裂四散する。

肆ノ手「白虎百拳」

100回強烈な殴打を連打する。。

当たった箇所から爆裂四散する。

奥義「四天黄龍雷轟波」

派手な見た目だが、実際はただのエネルギーの光線。

当たった箇所は塵も残さない。


普通の怪人であれば、実際に爆裂四散するほど強力なのだが、相手が強すぎた。

この技の全ての爆裂四散は、相手が岩石並の防御力の場合に発揮される。

鋼鉄並だとしても、その場合は体内に破壊のエネルギーが循環して、内臓が爆裂四散する。

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