§1. ダークファンタジーは唐突に

1. 異世界女神と転移少年達

 山田はクラスメイトを全員殺した。


 級友は友ではなかった——或いは、なくなった。


 もっとも、全ての手に掛けたと云う訳ではなく、むしほとんど自滅やつぶし合いだったが——死ぬように仕向けたのは確かだ。


 かく、山田は学級クラスゆいいつの生き残りにった。


 してった?


 誰も止める者はなかったのか?


 教師は? 他の教室の生徒は?


 ない——には。


 いわゆる、『異世界』。


 かれは、召喚された。


 う、小説とか漫画などでは、ごくれた話——語られくされてる、出来事イベントだ。


 山田の場合、教室にた全員がまるごと転移した。


 異世界モノの小説では、特にめずらしい事ではない——むしろ良く有る展開パターンだ。


 転移したの場所は、宮殿の広間、のようだった。


 ほのかなあかりに照らされた、やや薄暗い空間——壁や天井には、きらびやかな装飾がほどこされてる。


 かみおぼしき場所に、女がひと


 さんぜんと輝く白き衣をまとい、まばゆい宝具で身を飾り、そうごんしゃくじょうたずさえてる。


「我が名はレガリア。の世界の女神です。世界を救う為に、貴方達に助力を求める者です」


 ——う、召喚主は、女神。


 異世界召喚では、良く有る展開パターンだ。


 ……


 みずから神と名乗って、普通は誰も信じない。


 だがの場では誰も、を問おうとしない——状況から見て無理も無いが。


 まあ、異世界召喚では、う有る方が多い——良く有る展開パターンだ。


 女神は皆に伝えた。


「勇者よ、勇者達よ、勇ましき者達よ。私は貴方あなたたちを、別の世界から招き入れました」


 召喚、と言うからには、続く話は決まってる。


れより貴方あなたたちは、世界を救うために戦うのです」


 ……異世界で戦う、と来れば、


貴方あなた来訪者まろうどには、力が有ります。ひとひとつずつ、固有の能力スキルが与えられてます」


 御約束のあつらえだ。


 良く有るどころか、はずせない必須の展開パターンだ。


 もっとも、能力がひとひとつとは、少々臭い気もするが。


の力をもって、世界を救うのです。力無くして、悪は倒せません」


 歓喜に沸くもろども——良く有る展開パターンだ。


「悪を倒せないと言う事は、悪のにんと同義。まり、弱さも、悪」


 浮かれる者達へのいましめ、には良く有る展開パターンだ。


「勇者とは強き者。なんじらの勇ましさを示しなさい。なんじらの中の弱きを滅ぼすのです」


 𠮟しっげきれいたぐい、には良く有る展開パターンだ。


「弱い者の寄せ集めでは、の世界を救う事は出来ません。優れた力を持つ勇者が導いてこそ、真の勝利を得る事が出来るのです……」


 ……なにやら話のおもむきが、妙な方向にって来た。


 主旨に関しては、かで聞いたような、良く有る言い回しパターンだが。


ゆえに、貴方あなたたちに求めるのは、。と云う事で——」


 で女神は、満面の笑みを浮かべる。


 して放った言葉が——


の中でもっとも弱い者を殺しなさい」


 ……


 みなは耳を疑った。


 女神と云うものの口から語られる言葉とは、到底思えない——一般的な心象イメージに、およ沿ぐわない。


 れでも、し——『友を殺す』とか、『弱者を切る』とか、う来る場合は——


 『くらいの覚悟が無ければ、正義は果たせません。世界を救う以前に、おのが身も守れません』


 ——などと続く展開パターンも有るのだが、


「弱者などりませんからね。力の無い『不適格者』など、存在自体が『異端』です。の世界から早々に退場願いましょう」


 弱い人間は必要無い——らば、めて、『生き残りたれば強くれ』、とでも言うならわからぬではない。


 だがよう意図いとは、の言い草からはうかがえない。


「……嫌だわ皆さん、乗りが悪いじゃないですか」


 に至って、流石さすがはや、少年少女どもは、戸惑わずにられない。


 今、かれの目の前にる、『神』と称するモノは、皆が知る——或いは、求める、神仏にあたいするたぐいではない。


「……れでは、でしょう。果たした者には、ほうとして、特別な賜物ギフト、でも与える、とか……う、れが良いですわね。うふふ……面白そうではないですか」


 我々の知る神は、仁慈をもって普遍的な救済に導く者でる。


 弱者は救い、隣人は愛せ、と説く。


 行き倒れのらば、見ず知らずともたすく、Good隣人Samaritanたれ、と語る。


 が、れは、ガン無視で全力放置、どころか、とどめを刺す事をすすめるもの、だ。


 ——いや、は驚くところではない。そもそも、展開の前提から見れば。


 かれの置かれた状況は、一般市民(しかも未成年)の身柄を断りも無く遠方に連れ出したと云う、明らかな『拉致abduction事例case』だ。


 から考えて、から始まるのが『愛と正義の異世界heroic冒険fantasy』、などと云う認識は、あまりにあまぎる。


 加えて、創作の中でさえ、安易な『ファンタジー』に飽きた者達が、リアリティ追及などと称して、り過激な筋に傾倒した——ようなものも多く見られるではないか。


 では、までの展開を、今一度振り返って見よう。


 『異世界』、『召喚』、又、『女神』、と来て、して——


 に更なるサブジャンル。


 『悪道い女神にもてあそばれる展開』


 れも、割と良く見る類型パターンだ。


 いわゆる『ダークファンタジー』嗜好と言う奴だ。


 だがれは、当事者にはもっとも有って欲しくない、悪夢の有る有る展開パターンだ。


 山田に、引きり込まれてった。


 して、の『悪夢』のぶたが切られた。


 突然、ひとが、血飛沫しぶきを吹き上げて倒れる。


 隣の奴が、『斬殺』したのだ。



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