第22話 臍をかむ
日本の中古護衛艦6隻が、フィリピンに引き渡されるそうだ。アブクマ型という退役艦である。日本の新聞やテレビ、フィリピンからのU-Tubeニュース番組でも報道されており、かつて「武器輸出禁止三原則」があったのだが、現在はかなり緩和されたらしい。
そんな報道の中で、フィンランドへ輸出された自走砲や軽戦闘機のU-Tube番組を観た。欧州では珍しい日本製の武器であり、フランスやドイツの兵器産業からは猛反発を受けたらしい。NATOとの技術的整合性などもクリアーせねばならなかったという。
ところがである、この番組の中で、フィンランドの日本からの輸入決定に際し、ポーランドやエストニア、はたまたインドにも納入実績があるとなったところから、私は気がついた。これはフェイク・ニュースなのだ。
私は臍をかむほど悔しかった。(これは重複表現?)本当に情けないと思った。あれほどフェイクには気をつけており、自分は欺されないと思っていたのに、なんたることか、バカヤロウである。
なぜ途中まで見破れなかったのか考えた。今後の教訓にしなければ、気分が収まらない。悔しい。思いつくままに、原因を列挙してみる。
1.時代の流れに疎くなっていること
何が駄目で、何が可能になったのか、まさかと思うモノが多すぎる。例えば、出産費用の補助が東京は50万円もらえるなどと聞くと、私の頃は全額自己負担だったので「まさか」となる。アブクマ型中古艦の輸出も、「武器輸出禁止三原則」が頭にある自分からすれば「まさか」の事実で、時代の流れに私は追いついていないのだ。
2.時代の流れに敏感になっていること
上記1.とはまさに逆であるが、台湾問題や中国の南シナ海領有宣言などから、東北大地震で多額の義援金を送ってくれた台湾への恩や我が愛するフィリピンへの応援感情があり、武器輸出もやむを得ないと思う心情がある。
3.威勢の良い話は信じたくなること
自分の国は自分で守るのが当然と信じているから、自前での勝てる武器の開発や製造は当然と考えている。となれば、いざとなったときに使えない武器では意味をなさず、税金の無駄遣いでもあるから実績が必要になるが、まさか実際に日本が戦争をするわけにもいかず、他国に買ってもらい、第三者の目で検証してもらう必要があるとなれば、「日本製の武器がインドやポーランドで評価された」話は心躍るモノがある。(そんなことは夢物語にもかかわらず)
4.己の過去へのノスタルジアがあること
これは私的な理由だが、商戦の話になると夢中になってしまう。ましてや、外国が舞台になると、ついつい興味が先行する。
5.番組制作者の話の進め方が上手いこと
娯楽作品のお手本である。詐欺師の手本かもしれない。ライバルとの戦いや苦難が話の中でドラマチックに織り込まれると感情が揺さぶられ、我を忘れて引っ張られてしまう。話の進め方ばかりでなく、
イ、普通の人が知らないことをネタにしており、自走砲や軽戦闘機の詳細、外国の政治家、武器商談の裏話など、真実かと思ってしまう。
ロ、日本の威信とか技術的優秀さとか、潜在的にある我々の愛国心を揺さぶっている。
ハ、実存している役職などを示し、その人物の実名や仮名を出して、ドキュメント=実話らしさを感じさせている。
6.75歳になって呆け始めていること
これは否定しようがなく、元も子もない話だが、言われる前に書いておかねばならない。ボケにも色々あり、私の場合、物忘れの他に、最初に考えていたことなのに終わりになると重要な点を見落としていたり、基本的に自己主張が弱くなっているのか、相手に同調してしまう傾向がある。これは、詐欺にかかる老人が多いことと関係があるのかもしれない。
さて、ここからが本旨になる。
私が気になるのは、このU-Tube番組に原型があることだ。つまり、他国の話を日本の話に移し替えているのであり、その他国とはどこかと言うと、韓国なのである。例えば、韓国の自走砲の輸出国はオーストラリア/ノルウェー/フィンランド、軽戦闘機は東南アジアの数カ国/イラク/ポーランド、戦車に至ってはポーランドに1千台(日本の陸上自衛隊の戦車保有は300台)で、その他にも自走砲や軽戦闘機をポーランドは購入している。(以上は『東洋経済』からの引用)
更に、フィリピン海軍が哨戒艦6隻(約6億ドル)、イージス型駆逐艦などを『現代重工業』から輸入しているのを知って驚いた。フィリピンの国家予算は日本の十分の一、まだ開発途上の国である。
私の疑問は、一体、誰がどんな意図を持って、今回のU-Tube番組のような「日本の武器輸出物語」を流しているのかということだ。日本も韓国を見習えと言いたいのだろうか。
いずれにせよ、大きな陰謀があるような気がする。戦争反対の我々が、日本の武器輸出にどう対処するか、長引く経済不況の中、今あらためて問われているのかもしれない。
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