第14話 絶頂の反復と深まる絆

聖夜の暗闇に包まれた悠人(ゆうと)の部屋で、二人の身体は、快感の波に揺さぶられ続けていた。肌と肌が触れ合う音、熱い吐息、そして喘ぎにも似た声が、静かな部屋に響く。悠人は、もう自分の存在が葵(あおい)と一つになったかのような感覚に囚われていた。


快感は、嵐のように押し寄せた。葵の身体が、小刻みに震え始める。彼女の呼吸は浅く速くなり、熱い吐息が悠人の頬にかかる。全身の筋肉が締め付けられ、微かな痙攣が走る。葵の顔は苦痛と快感に歪み、瞳はうっすらと涙に濡れていた。悠人は、彼女の腰の動きが激しくなるのを感じる。それは、純粋な快感に溺れる、理性を奪う陶酔の瞬間だった。


「ぁ……悠、人…っ!」


葵の甘い呻き声が、悠人の耳朶をく打つ。その声に誘われるように、悠人の身体もまた、極限まで高められていく。脈打つような鼓動が下半身に集中し、全身に痺れが広がる。彼の目の前には、白く、強烈な光が弾けた。


そして、激しい律動の後、温かく粘り気のある液体が、葵の身体の奥深くへと放出される感触があった。熱い解放の波が、悠人の全身を駆け巡る。小刻みな痙攣と共に、彼の身体から力が抜けていく。深い唸り声が漏れ、快感に歪む悠人の瞳は、虚空を見つめるように潤んでいた。それは、生命の息吹を感じさせる、深い充足感に満ちた瞬間だった。


しかし、絶頂の後の高揚感が収束すると、悠人の心に、漠然とした「寂しさ」が忍び寄ってきた。それは、葵との肉体的な一体感が最高潮に達した後に訪れる、得体の知れない空虚感だった。悠人は、この寂しさを打ち消すように、葵の身体をさらに強く抱きしめた。


「葵……」


彼は、彼女の柔らかな髪を撫で、背中に唇を押し当てた。葵もまた、悠人の腕の中で身をよじり、彼に顔を埋める。彼女の呼吸はまだ少し乱れているが、その表情は深い満足感に満たされていた。


しかし、その葵の瞳にも、悠人と同じような、満たされた後の微かな寂しさが宿っているのが見えた。葵は、その寂しさを埋めるかのように、再び悠人の身体を求めてきた。彼女の指が、悠人の肌をなぞり、甘く挑発する。悠人もまた、彼女の誘いに抗うことなく、再びその身体に応じた。


この夜、二人は何度も一体となることを繰り返した。愛撫やキスのバリエーションを組み合わせ、回数を重ねるごとに、肉体的・精神的な結びつきはより深く、密接になっていった。柔らかな乳房の感触、滑らかな太ももの肌触り、そして肌と肌が擦れ合う微かな音。互いの身体の隅々まで知り尽くしていくような感覚が、悠人の五感を満たした。


夜が明ける頃、クリスマスの朝の光が薄く差し込む中、悠人は葵を腕の中にしっかりと抱きしめていた。深い充足感と、同時に、彼女を完全に自分のものにしたという強い独占欲が、彼の心を満たしている。葵もまた、悠人の腕の中で安堵しきった表情で眠っていた。


二人の間には、これまで以上に深く、強固な絆が生まれた。そして、その絆は、共有された秘密と、これから訪れるかもしれない「責任」によって、さらに複雑に絡み合っていくことを、悠人は漠然と感じていた。

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