第28話 ハロウィーナ

 「んじゃ、次は俺だな。

めんどくさいからもうさっさと行こうぜ」

やっと、わかってくれたのか。君らのせいでだいぶ長引いたんだから。


「いこいこー!」




『ハロウィーナ』

「しゃて、今宵はハりょウィンら」


舌足らずな娘は夜に溶けた。


年に一度のお祭りだ。

お化けはおやつをもらうこと、名前を覚えてもらうこと、それに必死なんだ。

唯一の現世への抜け道は、地獄の釜の蓋が開く今日しかない…!


「みーんらに会いたいにゃ」

アイドルとやらがみんなに注目してもらえるらしい。

にこにこ笑ってキラキラ眩しくて……!


「…みてあの子!ちょーかわいい!」


フリフリのひざ上スカートにピンクのステッキ

“魔法少女”の装い。

よしよし…上手く生者に化けられた!あとは…


「わたひはハロウィンの妖精、ハロウィーナ!来年も化けて出てやるから名前を覚えらしゃい!」


「か、かわいい!」

「すげーバズってる!」

人がぎゅうぎゅうに押し寄せる…どうしよう、なんか変な光まで浴びせられてる……

祓い屋や陰陽師のコスプレとか趣味が悪い……

で、でも!必ず見つけてやるんだ!


「みんら〜!この人たち、知ってゆ人〜!

教えておしえて〜?」



私の舌を切って供物にした村人たちへ復讐するために。

もう、うんと前の話だけど、一人くらいは生きてるはず!




彼はまたひとつ蝋燭を吹いて消した。

「俺にしてはかわいすぎるかな」

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今昔笑覧百物語 柳 アキ @Aki_Yanagi

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