第14話 化狐のお話
膝の先を整えた寺の子は袈裟(?)をしゃっきりと直し、“怖い話の顔”で話し始める。
『化狐のお話』
都会で野生動物を見なくなった。
ゼロではないはず。
だって、本当は人間界に紛れ込んで
人間と同じ食べ物を食べて
人間の同僚と飲みに行って
賢い動物たちはみんなそうしてる。
人間の姿になれたなら
山に家も買える。
海に泳ぎに行ける。
…山そのものを買うこともできる。
じゃあ、その他は?
人の姿になれない動物たちはどうするのか。
そんなお話。
ある山に棲む狐は言った。
「協力してこの山を守ろう。」
友だちは皆人間の姿になって人間の話を聞いてくる。
一方狐はならなかった。この山が更地になることを知って、この山から人を追い出そうとしているんだ。
やり方は簡単
「怖がらせれば良いんだ」
力の強い狐だ。頭も切れるようで
夏になると人間が肝試しに徘徊することを知って
“この山が人にとって怖い存在になれば”
人が寄りつかない方法も知っている。
山に棲む動物は様々。
ウサギやネズミ、色々な虫なんかがいる。
早速狐は友だちに
「山は怖いから近づかないほうがいい」
という噂を流してもらった。
するとどうだろう。
若い人間たちは必ず二人組でやってくる。
それを“おもてなし”するんだ。
虫は目の前を通り過ぎるだけ
ウサギは草むらでガサガサするだけ
ネズミは木の上で一声鳴くだけ
そして狐は…山の頂上、岩の上
一番月光が届く場所で精一杯姿勢良く座る
目を光らせ爪を見せつけ尻尾を膨らませ
本当にそれだけ。
面白かっていた人間も
最後には尻尾を巻いて逃げていく。
そうして人を追っ払ううちに
「夜は怖い山」として名前がつくようになった。
名前がつくと
本当に怖くなるのはここから
“
未だにその区域だけ山が残ってるんだってさ。
寺の子は蝋燭を仰いだ。
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