第13話 音楽教師

「あんまし怪談っぽく出来なかったな」


「え?そんなことないよ!」


「そう。ここで話したことは全て怪談だ。」

連携すごいなこいつら。


「あの、次行きますよ…?」

そんなのはいい。なんてったって百物語なんだからさ。


「おう!頼んだぜ」

なんだ?やけに気合い入ってるな。




『音楽教師』

 学校といえば怪談話がつきもの。

とある小学校でほんとにあった物語。



 私には歳の離れた兄がいる。それも、同じ場所に。


「では今日は教科書58ページ……」


また今日も嫌な算数から始まった。

嫌なクラスの人と話して

嫌な授業を受けて

嫌な給食を食べて

それから……

「みき!」


「わっ!」


「みきさん、しっかり教科書を開いてください。ページ数はわかりますか?」


「わわ、ごめんなさい…58ページですね!」


「みきさん…それは音楽の教科書です…」


クラスメイトに笑われる私。

またやってしまった。


___というのを家族に話した。


「もう少ししっかりしなさい」

お母さんは言った。


「いいじゃんみきらしいよ」

最愛の人は言った。


明日はの授業がある…!

その日は早々に準備をして寝た。




“続いてのニュースです。〇〇地方で不審者情報が多発しております。住民の方は……”


朝のニュースでそんなことをやっていたっけ




「お兄ちゃん…

嘘だって言って!ねえ!」


私のお兄ちゃんは


“人殺し”だった


「なあ、みき。」

最愛の人が…


「お兄ちゃん、もう死んでるんだよ」

私のお兄ちゃんが…


「どうしたらいいかな?」

ゆるせない


「俺を殺した奴らを」

ゆるさない。地の底まで突き落としてやる。



復讐…か。私まだ小学生だよ?

いいや?だからか。怪しまれないもんね。

私のものを壊した奴らを絶対に許さない。


音楽教師のお兄ちゃん。昔からピアノを弾くのが何よりの楽しみで、よく私にも教えてくれてた。

歳が離れているからお兄ちゃんよりもお父さんみたいな感じ!

でもでも、お友だちみたいな感覚なんだ!

そんな大好きなお兄ちゃん。

今は……



「アッ……ミ」


「なあに?お兄ちゃん」


「ア…」

指さす方には私のクラスメイト。

あの二人組はいつも仲良くしていてクラスでも騒がしい部類の人類だ。


「あれのお父さんの方?」


「ア…」


「あれ確かPTA…なんとかなるね」


すでに精神崩壊しているお兄ちゃんは

“連続神隠し事件”の最初の被害者ということにしている。


“不審者”出没のニュースと同時に…


“速報です。〇〇小学校の生徒数名の行方がわからなくなっているという通報を受け、警察が捜索を続けています……”



 さて。役者は揃っている。

目隠しに手足を縛られ口に布を噛ませている。

この犯罪者どもを痛ぶる方法を夢の中でも考えてた。


「お兄ちゃん、まずは全員の耳栓外して?

よーく聞こえるようにね。」

お兄ちゃんは慣れた手つきで耳栓を外していく。


「じゃあ、一番最後のそいつ

このお立ち台に寝かせて」

お兄ちゃんは同じくらいの年齢の男性の胸ぐらを掴むと、ひょいと持ち上げここまで放り投げた。


「ん゛っ…」

口に布をしているのでしゃべることはできないがハミングくらいはできるようだ。


 じゃあ…まず初めに。大きなハサミを取り出します!(なんか理科室にあった)


「お前は一番罪が重いから、一番軽いところからやる」

声を聞くなりモゴモゴ喚き出すそれに最初の施し。

シャキシャキとハサミの音を耳元で聴かせていく。もちろん何も切ってない。

それを全員同じようにやった。

注射前にチューブで縛られるあの気持ちみたいね!


「お兄ちゃん、次は指よね?」


「アッ……」

ある日お兄ちゃんは指にボールペンを突き立てられて帰ってきた。ならば同じようにしなければ。


「お兄ちゃん、この口の布取って?」

シュルルと取れた。


「おい、てめぇら俺を閉じ込めてどうする気だよ?今まで復讐か?ただで済むと思うなよ!俺はな!この近辺を統治する町長の息子なんだよ!お前みたいな一般人が触れていい存在じゃないんだよ!」


「…。」

お兄ちゃんはすでに精神がいかれてしまっている。もうなにを言ってもお兄ちゃんの心にはなにも届かない。そうしたのは全部お前たちなのに…。許せない


「お兄ちゃん、コイツ抑えてて。

ねえ?声のおっきい人?

今からいっぱい痛いことしてあげるね?

これは私がお兄ちゃんにしてあげられる唯一のことだから…」


「ああ!?ふざけんじゃねえよ!おい、触んなよクソが。こんなところに監禁して、一体なにがしたいってんだよ?しかもテメェガキじゃねえか!子どもはおとなしく家に帰る時間じゃねえのかな?」


「ふふ…そうやってお兄ちゃんに散々嫌がらせしたのね。じゃあ…ね?遠慮なく!」

まずは小指…と思ったけど、もっと痛くして泣いて欲しいから耳からいこーっと。


「やめろ…来るんじゃねえ…!クソ、動けねェ!やめろ!やめてくれ!…んがァ…!」

うるさい男の悲鳴と

ジャキンッ という耳を切り落とすハサミの音が混ざる。


「お兄ちゃん、もういいよ。ありがとう」


「アッ……」

たのしんでいるようだ。


次は…おまえ。

私だけだと思っていたけど、まさかお兄ちゃんはもっと酷いことをされていたなんて。


「お兄ちゃん、あいつもういい。蹴飛ばして次こいつお願い。」

ちゃんと元いた方向に蹴飛ばすんだよな…

さすがA型。

向きまで揃えちゃうんだよね…


「アウ…」

そうだね、こいつには色々やられたね。

おこづかいは盗られなかったけど

いきなりズボンを脱がされ乗られて…

あと、髪の毛切られたり

あー!だめだめ!今日はお兄ちゃんが主役なの!

でも、お兄ちゃんも上に乗られてズボン脱がされたり

体中にあざが出来てたり

骨にヒビが入っていたり…

お兄ちゃんは何も言わずにずっと耐えてきたんだよね…

そんなやつは…


「えいっ!」


「ん゛ふっ…ん゛ん!ンンンンン゛!」

薬指と悪いことをしたところを切った。


「ア…?」


「うん。お兄ちゃんもだよね?コイツに殴られて上に乗られてズボン脱がされて…だよね」


他の人に聞こえるように大きな声でコイツの悲鳴と共に。

大丈夫、ちゃんと聞こえてるよ。

だって目隠しされてるんだから耳を澄ませて音を聞くのは当然なんだよね。

お兄ちゃんが教えてくれたんだ。


この調子で一人ひとり悪いところを

大きなハサミで切っていった。

生かさぬように

殺さぬように


「お兄ちゃん、他にやりたいことある?」


「ン…」


「ないんだね?じゃあまた明日!ばいばい!」

もはや叫ぶ元気もないそれにあいさつ。

と言っても、死んでいるわけではない。

保健の教科書に書いてあった脈の測り方でそれとなく鼓動を感じるから大丈夫!

さ、これくらいで死んでしまっては困る。

水くらいはそっと側に置いてきた。


さて、明日はどこを切ろうか!

手足の指や耳は切りやすくて命にも関わらないからいい

後はニュースのことをみんなが早く忘れてくれることを祈るだけ。

あのニュースは山にアレを捨てにくくなるからなぁ。

しっかり最期を確認してからバラバラにして埋めなきゃいけない。

悪いことをした人はちゃんとごめんなさいしなきゃだもんね!

できないなら大人はしっかり償わなきゃいけないんだよね!

私ちゃんと勉強したもん!


あ!宿題忘れてた!

お着替えして宿題しにかーえろ!


「お兄ちゃん!明日お兄ちゃんの授業だね……」


「そうだね?」

人目につくところになると普通にしゃべるんだよなー。お兄ちゃんは。




僕は一本蝋燭を吹き消した


「「「いやいやいや!」」」


「へ?」

なんだそのギャグ漫画みたいなツッコミ方は。


「あの…終わり?」


「その後も知りたい…と?」


「そうだよー!なにその終わり方!次回も続くやつじゃん!」


「いや…だってこのあとは」


「このあとは…?」


「終わった後にでも調べてください。最初に言いましたよ?“ほんとにあった物語”だって?」

話してもいいんだけど…このあとは……


「ま、終わってからでもいいね!」

そうそう。そうやって百物語をやり切ってくれればいい。


「ところで君は…」

どうした寺の子。


「君はお化けや妖怪を信じているかい?」

君が言うんだねそれ。


「まあね、百物語をやるくらいには信じているよ。」


「じゃあ聞き方を変えよう

君は妖怪であるとわかっているのかい?」

おー気づかれていたか。

まあどうと言うこともないしな。


「まあね。別に隠しているつもりもないけどどうかした?」


「いや、君には私たちの活動に協力して欲しくてね。」

え、なんかきもっ。

僕、そこまで有名じゃないんだけどな。

でもなー百物語はやり遂げたいからなー。


「条件がある。百物語を最後までやり遂げろ。」


「え!ちょうど私たちが言おうとしてたこと言ってくれたよ!」


「え、いいのかお前はそれで?」


「うーむ。無事にやり遂げた後の保証は出来ないが、それまでのサポートってことなら協力してやる。」


「確信無しに言ってみるもんだな。」


「そうですねえ〜」

いやなかったんかい。


「んじゃ!次行きますか!

その後のことはそんとき考えればいいんだから!」


「ま、まあ…じゃあ次は私ですね」

そう言うと崩していた足を正座に直す。


「さあ、13話目いくよ。」



こいつら、僕の正体わかってたからやたらと動物の名前がつく題名付けてたのか。

亀の甲よりなんとやら…だね。

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