第12話 3が爆ぜる

「うわーなんかそれ歌で聴いたことあるな」


「うん、本当にあるもん」


とおりゃんせ とおりゃんせ

ここはどこのほそ道じゃ

天神様のほそ道じゃ

ちと通してくだしゃんせ

ご用のないものとおしゃせぬ

この子の七つのお祝いに

お札を納めに参ります

行きはよいよい

帰りはこわい

こわいながらも

とおりゃんせ とおりゃんせ


「よく歌えたな」


「よく歌えますね」


「え?なんか深い意味でもあるの?」


「いえ、よくわかりませんが…

この状況でよくそういう歌を歌えるなぁと感心。」


そう思う。ましてや今は 状況が状況百物語中

〈お化けが出るー〉とか〈こわーい〉

みたいな感想は彼女にはなかったのか?


「ま、次は俺だ!どんどん行くぞ!」


「おー!まだまだこれからだよ!」

騒がしい奴らだな本当。




『3で爆ぜる』

 昔から日本は奇数が重宝されてきた。

【三色団子】【三権分立】【三点倒立】

【仏の顔も三度まで】


昔は3の倍数で笑いをとる芸人もいたし

3カウントで気合を入れるプロもいた。


“どうやら我が国には3の神がいるらしい”


5でもなく7でもなく“ 3 ”である理由は

心理学で言えば覚えやすい数字だから

古来より日本では割り切れる数字は争いの元だったから

どれも真意としてはうーむである。


…こう考えてはどうだろうか

3でひとカウント。

10でひと区切り ではなく

3 でひと区切り ということ


3の神は永久に名を残すべくある秘策を用意した

【仏の顔も三度まで】

どんなに怒らない人でも不当な扱いや理不尽によっては怒ってしまうという意味。


呪言じゅごんだった。

言葉にすれば消えない。形には残らないけど、言い伝えは古くからそうやって伝わってきた。

そう、今も。

仏…もとい、神は生きている。

3の神は長生きだ。呪言が死なない限りは神も死なない。

彼もまた八百万の一人。

だからこうして伝えていなねばならぬ。

2も4も皆死んだ。

生きることは彼にとっても呪いだった。

私たちにかけられた呪言のように。

3がいなくなれば皆んな死ぬ。



また蝋燭が一つ消えた。




「終わりだよ。」

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