第8話 大移動

…んじゃ、次のお話行くよ…?




『大移動』

 とある村の言い伝え。

古くからあるその村は、特にこれと言って特徴があるわけではありません。

ここは山。登る人が目印にしたり山菜取りが休憩しに来るくらいの静かな村です。

 とある獣道にいつものようにお客が。

村人たちはいつものように土地を開けます。ときにはお茶を出したり、世間話をひとつ…なんてこともあったそう。

しかし、村人は一目見るや否や逃げ出しました。


「ば、バケモノだ!」


「命だけは…勘弁してくれ!」


みんなそう言って次々に山を降りていきました。

 ですが、残った村長は問います。


「ここへは何をしにいらっしゃいましたか?」

バケモノと呼ばれた男は答えます。


「この道を私“たち”にゆずってくれないか?悪いようにはせんし、夜の間だけだ。私たちはバケモノらしいからな。」


「私たちに危害が及ばぬならそれを許しましょう。しかし怖がらせたり悪い噂が立つようなら許しませぬ」


「言ったであろう。夜の間だけだ。たまたま通りかかったなら

「これは夢」とでも暗示をかけておけば良いからな。」

村長はこれを快諾。

夜の間はこの獣道を封鎖。村人の目に触れぬよう御触れ張を立て、誰も近寄らぬよう暗黙の了解を促した。


 それでもバカな村人はいるようで。

「へへっ!なにが暗黙の了解だよっ!なんかすげぇことやってるんじゃないか?」

外に出た少年。まず耳にするのは

祭囃子まつりばやし


「おっ、やっぱり!屋台でもあるんじゃねえか?俺射的得意なんだよ!」


「あ……」

その先で見たもの…

祭囃子に乗せられその眼に写ったものは…


「…ば、ば…バケモ……」


「はい、おやすみ〜」


「すぴ〜」


「だめでしょ?大人たちが言っていることはしっかり守らなきゃ。

“二度はないからな”

今回だけは記憶を消してやる。次は無いぞ」


「…!」


「おっと…もうひとり…こいつの親だな。早く持って帰ってくれ。このことは見なかったことにしてやる。

だから

俺らのこと、誰にも話すんじゃねえぞ」


「…ひっひぃぃ…申し訳ございませんでした…!」


子どもをつまみ尻尾を巻いて帰っていった親。


「…なんだい。見られたのかい。」


「ガキのほうは記憶を消した。」


「親は?」


「覚えておいた方が抑止力になるだろ」


「それもそうね。さ、見張りはもういいわ。あんたも最後尾に並びなさい。この

“妖怪大移動”

にね?」


「はいはい…面倒だな。妖怪も楽じゃあ無いね」


「いいじゃないか。

人間には覚えてもらってないと、

舐められても

困っちまうんだからね」


妖怪大移動…凱旋パレードのようなこの行動は見てしまうと最後記憶を消されてしまう。

妖怪そのものではなく

“自分が何者であったかの記憶も…だ”





彼女はふうーっと蝋燭に息を吹きかけた。

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